リッツふたたび

 1990年代初めのこと。地下鉄末広町近所であったから、JR秋葉原からはちょっと遠い、今でいえばカクタソフマップのあたりか、エレベータもないビルのたしか3階にそのショップはあった。
 古びたビルで、壁が汚かったし、階段は急だった(それは今ある店でも変わらないかな)。しかし、客が大勢いて店内には不思議と熱気があった。
 日本でマッキントッシュ人気が鰻登り、シェアも上昇するはとアップルにとっては黄金時代であったか。パソコンの需要も急成長していたし。
 で、その古びたビルにあったショップなんであるが、マックをメインに販売しており、値段がずいぶん安かった。当時はインターネットは普及していなかったから、値段で勝負というと今は亡きステップなど雑誌を主体にした通販ショップだったかな。
 そのショップはどんどん大きくなって、Aquazoneという一風変わったソフトを世に送り出し、隆盛を誇ったが、1997年になくなった。もっとも今でも、看板が一枚、秋葉原に残っている。
 リッツコンピュートという名前のショップであった。
 杳として行方のしれなかったリッツ関係者に偶然出くわしたのが、当店の手代である。店主がマック専門ネットショップの計画を練っていると話したことがきっかけで、紹介された人が香取さんである。いわずとも推測できるだろう、リッツコンピュートの社長だった人である。手代と一緒に、香取さんを訪ねた。香取さんは再起しアイビーネットという会社を興して社長になっていた。
 DeepMacのeコマース、データベースシステムはアイビーネットさんのシステムを借りている。仕入の方もお世話になっている。事務所も貸してもらった。おかげでずいぶん助かった。
 リッツにいた人たちが再び香取さんのもとに集まっている。これは今どき珍しいことだろう。店主のようなひねくれた人間が見ても、香取さんは豪儀で出来た人である。
 アイビーネットがどういう会社かは、ネットで検索してみてもらうとして(意地悪かな)、店主としては香取さんたちの、次に訪れるであろう黄金時代を願ってやまない。
 

(2003/4/11)

つづく

仮開店の弁

店主のプロフィール