[2000年2月]


2月1日〜2日
 さすがに旅行疲れと風邪のダメージで、ほぼ終日フトンの中で「かごめかごめ」の
取材資料を検討したりしてタラタラ過ごす。すると「ムー」OK谷くんから待ちかま
えたように原稿の催促。だが、まだまだ書ける態勢にない、どころか構想も立ってな
い(笑)。早稲田の先輩−後輩のよしみで(!?)、一方的に数日の猶予を強要する。
 2日の夜、新宿歌舞伎町のロフトプラスワンへ。新耳コンビの片割れ・中山市朗氏
による衝撃の古代秘史ライブ
。木原氏の突っ込みも眼中に、いや、耳に入らぬかの勢
いで(!)ひたすら熱弁をふるう中山氏。「くだん」ハンター的にも興味深いネタ満
載でした。
 ただし小生は体調不良と疲労のため別室で、同じく編集作業で疲労困憊中らしい
ンビ
氏と二人並んで終始ぐった〜〜〜り状態(笑)。休憩時間にクラニーたちの指定
席へ顔を出したら、Mたける氏@ムー編集部が志水一夫さん同伴で来場しているのと
バッタリ。相変わらず仕事熱心であるのぉ。終了後、挨拶もそこそこに帰宅。


2月3日〜4日
「かごめかごめ」の構想、ほぼ固まる。しかし、近世寺社建築やら鶏の図像学やら中
国の民間伝承やら……とんでもないリサーチが必要な大ネタであることを実感、しば
し呆然となる。が、こうしてはいられないと気を取り直して、図書館やら古書店やら
八重洲BCやらを駆けずり回って瞬く間に2日間が経過。
 その間、神保町で管理人様と遭遇、お茶(酒か!?)に誘われるも、資料漁り&打ち
合わせの途上にて平に御容赦いただく。打ち合わせの内容は、ひ、み、つ(え〜ちな
みにここに記しているのはあくまで「トピックス」であって、小生の仕事のすべてで
はありません。レギュラーの仕事や日常の業務、継続進行中の企画の一部、未だ公表
を憚る企画などについてはコメントを控えておりますので、どうかあしからず)。


2月5日
 池袋西武のホラー講座の日。今回は泰西伝奇ホラーの一典型として、F・ポール・
ウィルスン『ザ・キープ』をとりあげ、ユニークな分析をおこなう予定だったのだ
が、アタマの中は「かぁ〜ごめ、かごめ」のメロディが鳴り響くばかりで、とてもそ
れどころに非ず、やむなく「かごめ唄」と伝奇作家・宗谷真爾の奇縁、というテーマ
に急遽変更(笑)。笑って許してくださる、どころか「面白かったです!」と励まし
てくださる生徒さんたちに感謝。二次会もパスして早々に帰宅する。


2月6日
 さぁ、「ムー」の原稿を一気に書き上げるぞぉ〜と意気込むも、本日は午後イチ
で、ひみつの座談会企画を中目黒で収録するのであった。この忙しいのに、どこの仕
事だ! 「ムー」だ!!(爆笑)
 獅子堂および学研写真部のニューフェイス(なんと、うら若い乙女ではないか! 
写真部って、おっさんばかりかと思ってたよ……)と中目黒駅から徒歩5分ほど、某
公共施設の一室(美術室だった)にお邪魔すると、そこには……劇団「天」の女優さ
んたちが艶やかに勢揃い! ナニを収録したのかは、うふふ、ヒミツだよーん(美術
室だからといって額縁ショーとかに非ず)。
 戻って一気に「かごめ唄」原稿を書き上げる。とてもじゃないが6ページ程度に収
まるネタではないので、今回はとりあえず野田取材の経緯に即した内容にとどめる。
小生なりに提起した「新説」には、ちょいと自信あり。籠の中の鳥の正体は、ぬわん
とウ……うううッ、突然背後に現れて首を絞めるんじゃない、OK谷ぃ! ぜいぜい
ぜい、詳しくは「ムー」4月号を待て!


2月7日
 ホッとしたのも束の間、石堂藍@アトリエOCTAから殺気立った声で、「幻想文
学」の校了その他の督促が。電話の向こうで怒気がうるうる渦巻いているのが手にと
るように分かる。ホラーだ、あああホラーだ、マジでやばいよこりゃ……。


2月8日
 必死で「幻想文学」の校了その他を終える。毎季のことながら、まったくもって命
がけである。
 ここで『幻想文学』第57号〈特集=伝綺燦爛――赤江瀑の世界〉の御案内を。
【巻頭ロング・インタビュー】赤江瀑「われは海の子、虚空の子」
【座談会】皆川博子・森真沙子・篠田節子「赤江瀑の呪縛」
【エッセイ】森真沙子/山尾悠子/篠田真由美/岩井志麻子/高原英理
【評論】千街晶之/小梛治宣/香沢真矢/戸隠珠子
【ガイド&リスト】小林孝夫「赤江八街」
【新・一書一会】中井拓志『quarter m@on クォータームーン』

 ほか、連載企画など満載。新デザインの表紙は、建石修志氏の立体コラージュ!
 とにかく今回の特集、座談会をはじめとして全体に異様なハイテンションで、赤江
瀑ファンもそうでない方も、面白くお読みいただけるものと秘かに自負しておりま
す。
 特に、正調幻想文学の創作に志される方は必読!
 本体価格1500円にて、2月29日発売予定(地域により数日遅れる場合があり
ます)。

 さて、午後から船橋駅前の喫茶店で、『陰陽寮』連作でブレイク中の富樫倫太郎
んに「伝奇を語る」インタビュー。
 富樫さんは学研の歴史群像新人賞出身で、いわば生え抜き。受賞作『修羅の跫音』
は、構成にやや問題はあるものの、本格王朝伝奇創造への気概あふれる力作だった。
各種文学賞に応募しまくり落選しまくった苦節時代の話など。なんと角川ホラー大賞
にも応募されていたそうな。
 徳間の著者近影が怪しくもコワモテなので、いきなり蠱術でも仕掛けられるので
は……と、ビクビクものでうかがったのだが、サングラスをとると至って温厚で知的
な、作家業のかたわら学習塾で教鞭をとっているのも不思議ではない雰囲気に。堂々
の役者っぷりと見た(!?)。


2月9日
「ユリイカ」3月号のボリス・ヴィアン論に着手。今月に入ってから、寸暇をみつけ
てはアンナ・カヴァンとかカフカとか安部公房とか、久しぶりに気合いを入れて読み
直していたのだが、そろそろ赤信号が点滅中……。


2月10日
「ムー」3月号が到着。2色刷16頁にわたる怒濤の「くだん」大特集である! 前
半はウンチク編、後半が紀行編(岡山〜神戸〜丹後久美浜)、『幻想文学』56号の
特集以降に判明した新ネタ満載である。しかしなぁ、まさか「くだん」とこんなに深
く関わることになろうとは……って、実はまだまだ「くだん」狩りは続くのであった
(詳細は追ってまた)。この際だから名刺に「くだんハンター」ってな肩書きを追加
しようかしらん(笑)。目指せ、「月刊くだん」創刊!(嘘)


2月11日
「ユリイカ」原稿が予想外の展開に! ネット系ファンタジストの星・寮美千子さん
Cafe Lunatique(http://www65.tcup.com/6509/chico.html)に緊急連絡をとり、
いろいろ御教示いただく。昨年の夏、ダサコン2で対談させていただいた程度の御縁
にもかかわらず、小生の藪から棒な協力要請に即応してくださった寮さんに、ただた
だ感謝!
 別の時、別の場所(アナザータイム、アナザープレイス)で様々に育まれ消えて
いった幻視者たちの「夢」が、インターネットを介して蘇り交錯し新たなうねりを生
み出そうとする……その現場に、書斎やカフェの片隅に居ながらにして立ち会うこと
の驚きと喜び。その一端を誌面にドラッグ&ドロップする、これは小生なりのトライ
アルのつもりである。うまくいったか否かは……おなぐさみ!?


2月12日
 夕刻、「ユリイカ」3月号の原稿「泡沫の美を見し人は」を書き上げて送信。当初
の構想とは似ても似つかぬものになったが、結果オーライと思いたい。ただ土壇場で
の内容変更ゆえ、S川編集長には事後承諾となってしまい、申し訳ない限り。ボツに
されても文句は言えないな、こりゃ……。
 おお、今夜は扶桑社T田氏&早川書房K上さんの結婚祝賀パーティだったよと、慌
てて銀座へ急ぐ。定刻をかなり遅れて到着すると……なんと新郎新婦入場にどんぴ
しゃのタイミング(交通事情その他で御両人の到着が大幅に遅れたのだとか)。T田
氏は、かの『ノストラダムス秘録』の掟破り解説を大笑いして許してくれた度量のひ
ろーいお方。新婦のK上さんも早川書房で主に翻訳ミステリを担当されている辣腕編
集者、今日も会場で某宮脇孝雄氏と原稿受け渡しの約束をしていたという仕事一徹ぶ
りである。
 風間賢二さんとエニックスホラー大賞の話、大森わるものぞみ氏とクラニーVS橋
詰バトルの話、東京創元社のK浜氏と「ホラー界に大激震」パート2(3かな!?)の
噂話、扶桑社K氏と某大瀧せんせー話、病み上がりの小谷真理さんと人狼話など。
 ちなみに小生がいただいたビンゴの景品は、イタリア製デビルの栓抜きでした
が。>わるものぞみ様


2月13日
『ワールド・ミステリー・ツアー13』(同朋舎)最終巻の「盆景逍遙――ミニア
チュール幻想を旅する」
原稿執筆のため、急遽思い立って、埼玉県大宮市の盆栽村に
出かける(こういうのを泥縄と呼ぶ)。東武野田線大宮公園駅から数分、商店街を抜
けるとそこには……緑濃い閑静な住宅街のそこここに、盆栽業者の庭園が門戸を開い
ていた。
 大正末に東京の盆栽業者が理想の新天地を求めて移住したことに始まるというこの
地は、ある意味で佐藤春夫「美しい町」のささやかなリアル・バージョンといえるの
かもしれない。遊歩道のような街角は、オフ・シーズンなのか人影もまばら。あちこ
ちに松や梅や欅や柳の高木・灌木が点在する様は、まるで町全体が巨大な盆栽である
かのような錯覚を覚えしめる。ゆっくり鑑賞した後、ついでに隣の土呂町まで足を伸
ばして、いかにも旧街道沿いらしい武蔵野の残映を満喫、夕闇のなか帰途についた。
 いろいろ収穫はあったのだが……歩き疲れて筆が進まぬうちに寝てしまう。


2月14日
 ハッと目覚めて、ムー「かごめかごめ」原稿のゲラ直し締切だったことを思い出
し、そそくさと手を入れ始める。それでもなんだかんだで午前中いっぱいかかってし
まう。編集モードのときは、ゲラ戻しぐらいさっさとやれ……じゃなかった、お目通
しいただけないものかと思ったものだが、逆の立場になると妙に納得(笑)。追って
OK谷くん@ムーより電話。今後予定される群馬取材ほか、編集部のMたける先輩の
指導のもと精力的に事前リサーチを進めているらしい。やるじゃん、OK谷!
 かと思えば、今度は深夜に獅子堂@ムーより電話。別に張り合っているわけではな
くてぇ(笑)、発売まもない「くだん」特集に、読者から濃いぃ(しかしかなりヤバ
ネタな)情報が寄せられた由。イイ感触である。
 それにしても朝から深夜まで、「ムー民」たちは実に仕事熱心であることよ。20
周年を迎え、新たな意気込みで誌面改革に取り組んでいこうとする気概をひしひしと
感じる。これからが愉しみである。すりすり。(←ナニをすってるんだよ、おい!?)
 今日はバレンタイン、じゃなかった連休明けということもあって、他にも各社か
ら、様子伺いやら催促やら脅迫やら(嘘)の電話が相次ぎ、かなり危機感を深める。


2月15日
 新宿マイシティ上「プチモンド」の個室で、小沢章友さんに「伝奇を語る」インタ
ビュー。陰陽師ブームに先駆けた(ちょっと早すぎた!?)『夢魔の森』に始まる〈土
御門クロニクル〉連作や、マニアライクな怪奇ロマン連作集『不死』などで知られる
実力派の小沢氏だが、実は小生、今を去ること10数年前、氏が「双蛇宮」という別
名義で国書刊行会から『玻璃物語』を出版されたときに一度、お目にかかっているの
だ。まだ、西早稲田・大日坂の駄菓子屋さん二階の三畳間に事務所を構えていたとき
のことで、隣の喫茶店「大日坂茶房」で歓談したことを懐かしく思い出す。ちなみに
戦前の面影をわずかにとどめていた大日坂界隈も、もちろん駄菓子屋も茶房も、再開
発事業のため今は跡形もない。
 インタビュー終了後、小沢さんから「日本怪奇幻想作家協会」旗揚げをうながす提
言が!!!(笑)この分野の作家さんたちのよるべなき身の嘆きはよく分かるし、
『幻想文学』的にも協力はやぶさかでないのだが……たとえば――引き合いに出して
恐縮だが――「SF作家クラブ」的な組織になるのなら(ただしあくまでこれは機構
面の話。SF新人賞創設をはじめ最近の積極的活動は大いに歓迎し敬服しておりま
す)、小生はパスだな、たぶん。業界関係者が誰でも自由に、同じ資格で参加できる
ような、風通しの良い組織になるのなら、面白いかも!?
2月16日
『ワールド・ミステリー・ツアー13』の「盆景逍遙」をようやく書き上げ、送信。
思い入れ度の高い、しかも今まで手をつけたことのないテーマゆえ、M津田氏を拝み
倒して、猶予期間を延ばしてもらえてラッキーだった(御高配に深謝)。書いてる時
間がとても愉しい原稿でしたね。
 その合間を縫って「ユリイカ」のゲラを戻したり「ダ・ヴィンチ」怪談之怪読者投
稿の選評を書いて送ったり「SFマガジン」ホラー時評に着手したり。
「MW(メンズウォーカー)」の特集「このホラーが怖い!」が到着。ぶんか社版
『このホラーが怖い!』をまんまパクったタイトルに、しばし我が目を疑う。もしも
知らないでやってるとしたら、凄いシンクロニシティだけどね〜。
 登場作家陣は角川ホラーのオールスター勢揃いだが、特に正調怪奇マニア度が無茶
苦茶高い若竹七海インタビューに大いに共感する。あとは大森わるもの氏による内外
ホラー総括をはじめ、ネットでおなじみの顔ぶれがゾロゾロ。小生は「各界著名人の
ベスト3」に登場しておりますが、斜め上に妙なポーズのクラニーが、向かいのペー
ジにはクールに決めた「SFマガジン」塩澤編集長の御尊顔が!


2月17日
 明け方からジョナサンに陣取って、SFMの時評を書き上げる。今回のメニューは
岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』、加門七海『死弦琴妖變』、津原泰水監修『十
二宮12幻想』と『エロティシズム12幻想』。
 ちょっと眠ってから『日本の幽霊名画集』のゲラに目を通して送信。結局タイトル
は「そして、サダコが来た!?」のまま、「江戸と平成の新旧幽霊スターをめぐって」
と副題を付けることで、手を打つ。……うーん貞子って、アカデミズム方面ではそん
なにネームバリューないんか!? しかし豪華特製本画集だけあって、版面がやたらで
かいぞ(笑)。


2月18日
 ゲラ戻しの続き。今度は「鳩よ!」の岡本綺堂対談(VS加門七海)である。とて
も要領よく、こまめに話題を拾ってまとめていただいているため、直しも楽ちん。
 引き続き、岡本経一@青蛙房インタビューのまとめに着手。個人的には、戦前戦後
の大衆文藝出版史についていろいろうかがったあたり、大いに執着があるのだけれ
ど、今回は特集が「江戸っ子ホラー作家・岡本綺堂」ということなので、涙をのんで
バッサリ割愛。ホラー系のお話に膨らみをもたせるため、御本人から頂戴した『岡本
綺堂年代記』を徹底活用させていただく。ちなみに同書は隠れた名著。行間から「敗
残の江戸人」綺堂と明治大正期の東京の面影が鮮明に浮かび上がってくる。それこそ
岩波文庫あたりに収録されてもおかしくないぞ! いかが?>岩波の方々(面識ない
けど)
 今月はじめから秘かに囁かれていた小生のファンクラブ(!)が本格始動したため
(ニム様&有里様、ありがとうございまーす!)、幻想的掲示板に告知させていただ
く。御関心のある向きは 
http://www2r.biglobe.ne.jp/~alisato/book/gen_bun/higasifc.htm を御参照くだ
さい。入会はともかく、有里さん製作のゴジラ・バナーは必見!(笑)

(管理人注 見本で小さいバナーを入れてみました。必見ものはリンクからみてね)


2月19日
 岡本経一さんのインタビュー、結局『半七捕物帳』や『三浦老人昔話』ゆかりの
「独り語り」形式でまとめあげて送信。
 夕刻より池袋西武のホラー講座。今回は一回お待たせしてしまったF・ポール・
ウィルスン『ザ・キープ』について。二次会の話題は、もっぱら「東雅夫ふあんくら
ぶ」(笑)。講師の権限をカサにきて入会を強要し、嫌がられていた模様。


2月20日
 怒濤のごとき一週間の反動で、さすがにカラダが重い、キレがない。よって、日曜
なのをいいことに、溜まっている本をマクラにゴロ寝を決めこむ。
 いいかげんに「SFマガジン」の1999総括原稿を書かねばいかんのだが……。


2月21日
 SFMの原稿を書こうとしていたら、学研のK池さん(いつも出てくるレギュラー
陣よりずっと年長でエラい方なのである)から電話。「伝奇を語る、まだです
かぁぁぁ〜?」
 おっととと、そうだ、忘れてた(ナイショである)。「あ、もう少しなんですけ
ど……」と答えて、おもむろにテープ起こしにとりかかる(笑)。
 夜、寮美千子さんに御案内いただいた、銀座ギャラリー・グラフィカの「勝本みつ
る展 旅行術」のオープニングへ。ロココの余香漂う良い意味での少女趣味を感じさ
せる箱入りオブジェとコラージュが並ぶ。ジョゼフ・コーネルとか野中ユリさんとか
エルンストとか好きな人にはオススメかも。
 画家の東逸子さんと実に7、8年ぶりくらい(なんたって『アンドロギュヌス!』
と『人形綺譚』以来である)にお目にかかり、いろいろ雑談。かなりネット・サー
フィンにハマっている模様(笑)。会場には作家・仏文学者の出口裕弘さん御夫妻の
お姿も。
 晩飯がわりに二次会につきあった後、両国のデニーズで、朝まで仕事。


2月22日
 新橋の徳間ホールで試写を観る。神無月マキナ編集長@SCAREDに御案内いた
だいた「ツイン・フォールズ・アイダホ」――シャム双生児兄弟と美貌の娼婦の感動
的なラヴロマンスである。双生児役のポーリッシュ兄弟(本当の双生児だが体躯の合
成はもちろんSFX……って、そうでなきゃ「怪物団」だよな)が、若い頃のラヴク
ラフトにくりそつで驚愕! 公開は春らしいが、ソレ者の方はお見逃しなきよう。
 心を洗われるような映画を観たあと、近くの喫茶店でマキナ編集長と打ち合わせ。
開口一番「次号はフリークス大特集、いきまーす! ぐふぐふぐふ」はいはい、さよ
うですか。
 意外に素早く出た(見習いたいものである)「SCARED」第2号を頂戴する。
特集は「ジャパニーズ・ホラー2000」に「黙示録映画」に「人体パーツ・ホ
ラー」。
 小生は今号から「銀幕の幻(まぼろし)紙面の妖(あやかし)」という新連載を始
めました。ホラー映画とホラー小説の妖しい関係に迫る予定。第1回のタイトルは
「『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』VS『新耳袋』」だ!
 戻ってSFM総括原稿の残りを猛然と書き進める。とほほ、ま〜たなんか物議をか
もしそうなコト書いてるよ。もはや毎年恒例か!? >自分
2月23日
 朝まで両国のジョナサンに居座り、SFM増刊『SFが読みたい』の国内・海外ホ
ラー総括原稿をアップ。別冊化にともない、総括でもベストテンを掲げることにな
り、とっくの昔に送ってある「私のベスト5」との整合に苦慮する。ま、いいか。
 週刊百科「世界の文学」担当のIさんから色校ゲラ戻しの催促。慌てて目を通して
返送する。刊行はかなり先だが、原稿料は先に支払ってくれるらしいよ、と某風間セ
ンセーから耳打ちされていたので愉しみである(笑)。
 夕方、打ち合わせに向かう途中、「SFマガジン」のS澤編集長と都営新宿線の小
川町駅ホームで待ち合わせ、ブツの受け渡し。いや別にヤバいものではなくて、書影
用のカバーを数点貸したのだった。


2月24日
 外出先で携帯が鳴った。同朋舎のM津田氏だ。「すいません、ちょっとだけ遅れそ
うなんですが……」へっ? 図版の打ち合わせは確か……「木曜、って言ってなかっ
た?」「ですから、今日は木曜ですが(笑)」
 はうううッ! 平謝りして1時間遅らしていただき、用事を済ませて事務所へ駈け
戻る。ずっと物書きモードが続くと、曜日の感覚をついつい忘れてしまうんだよ
なー、気をつけねば。
 ここで編集方面の皆様へ。いつもお世話をかけております。ヒガシと待ち合わせて
いて時間どおりに現れないとき、事務所を訪ねて不在のときは、速攻で携帯にお問い
合わせください。駆けつけられる距離の場所にいて、身柄を拘束されていないときは
(笑)即応いたします。なお時間待機には、菊川駅前のドトールか珈琲館の御利用を
オススメします。
 M津田氏に平身低頭しつつ「ミニアチュール幻想を旅する」の図版を相談。冒頭で
ふれている水木しげる翁の絵、御本人はもとより(!)「関東水木会」の方にも確か
めていただいたのだが、やはり所在・出典ともに不明とのこと。うーむ、小生の記憶
違いか、はたまた幼年期の幻覚だったのかしらん!?
 ついでに『ワールド・ミステリー・ツアー13』に続いてM津田氏が放つ注目の大
型企画『日本怪奇幻想紀行 ホラー・ジャパネスク9』の話など。夏に2巻同時配本
で華々しくスタートするらしいが……よく見たら、両巻ともに小生の名前が目次にあ
るではないか。目次に載るのは光栄なれど、載るためには原稿を書かなくてはいけな
いし、これは「紀行」なので取材もしなければならないことにハタと気づく。
「問題ないでしょう、加門(七海)さんも多田(克巳)さんもそうですから」ああい
う旅行マニア、妖怪探訪の鬼と一緒にするんじゃなーい!(笑)……と言いつつ、い
そいそ取材プランを練り始める自分が哀しい。
 ここでひとつ「お願い」を! 木とか石にまつわる妖怪・怪異伝説で、珍しそうな
ヤツをご存じの方、よかったら御教示ください。場合によっては取材に参上いたしま
す。


2月25日
 深夜、新宿歌舞伎町ロフト・プラスワンの「菊地秀行プレゼンツ ホラー映画史」
第1回へ。新耳系のイベント等で最近、足を運ぶことの多いロフトだが、菊地さんの
会にお邪魔するのは実に久々。30分ほど遅れて別室のほうに腰を据えるも、早々に
S藤さん@ロフト・スタッフに見つかってしまい、壇上の菊地&飯野文彦両氏にチク
られる(笑)。すでにメートルの上がっているらしいイーノ氏、桟敷席に陣取ったク
ラニーやタカセ嬢、角銅さんらに「ヒガシが来たってよおぉぉぉ〜」とワケの分から
ない挑発を繰り返す(しかし後で聞いたら、誰も本当とは思っていなかったらしいが
/笑)。
 一方の菊地さんは「なにぃ、ヒガシが来たぁ!? あの野郎、ぶん殴ってやる」(←
一部誇張された表現を含みます)と不穏なことをブツブツ。な、なにかセンセーの逆
鱗にふれるようなことを、しでかしたのか!?>俺(いろいろしてるよーな気もしない
ではないがたぶん錯覚だろう、そーだ錯覚に違いない)
 今回は第1回ということで、サイレントからトーキー移行期の珍しい作品を拝見す
ることができて感激。特に「妖術全史」(クリステンセン監督)のチープスリルな斬
新さ、「アッシャー家の末裔」(エプスタン監督)のいかにもフランス的な光と影、
大気の揺らぎの繊細な表現に感銘をうける。ドビュッシーやフォーレの室内楽曲を
「視覚」だけで表現したらかくもあらん、という感じか。いや〜眼福眼福。キチク&
イーノの名調子は相変わらず好調のようだが、今夜のセンセー、某作家氏関連の話題
で、ときどきドキリとするような踏み込んだ発言をしていて、ちょっと意外の観あ
り。うふふふふ。
 終了後、クラニー&ドルバッキー姉妹や角銅さん、イダさん御夫妻、ワセミス一味
など毎度おなじみのメンツと「新穂高」でお茶して、始発で帰宅。


2月26日
 年明けに途中まで書いて中断しっぱなしだった(Tさん、ごめんよお〜)「ゾンビ
文学誌」に再度着手。
「ユリイカ」3月号の〈ボリス・ヴィアン特集〉が到着。小生は長めのエッセイ「泡
沫の美を見し人は」を寄稿しています。ヴィアンについて、というよりも、『泡沫の
日々』と衛星放送ラジオ局セント・ギガのドリーマーたちと寮美千子さん@HARM
ONIAをめぐる奇縁のリポートみたいなものになった。「ホラー評論家」とも「く
だんハンター」とも全く別路線ですが、こういうのも実は嫌いじゃないのだっ
た……って、曲がりなりにも「幻想文学編集長」なんだから当然ですか(笑)。


2月27日
 朝っぱらからクロネコヤマトに叩き起こされる。せっかく起きたのだからと、月島
で開かれるダンス・グループ「プシュケ」の発表会へ行ってみる気になる。地下鉄乗
り換えとか面倒くさいので、家の前からタクシー拾ってほんの10数分、直線距離に
すると意外に至近距離なのであった。
 思ったよりだいぶ早く着いたので、月島の裏通りをぶらぶら。なにやらん隠れ里め
いた雰囲気に浸る。商店街の感じは、両国界隈とそんなに違わない、いかにも下町だ
が、もんじゃの店だけは新装しているところが目立つ。
 時間になったので区民センターの4階ホールへ。まだ前のグループの新舞踊をやっ
ている。派手な揃いの和服に身を包んだバアさ、おっととと、年輩の御婦人方が懸命
のアテ振り中。ううーむ、「七里の渡し」はしんみりした良い曲だ、カラオケのレ
パートリーにしようか……などと思っているうち、いよいよ「プシュケ」の出番。幻
想文学編集長がわざわざ見に来るくらいだから、当然その内容は、一糸まとわぬ踊り
娘たちが、妖しくものたうつ前衛暗黒舞踏かと思いきや……いたって健全なジャズ・
ダンスなのであった(笑)。
 せっかくなので、相生橋を渡って、ぷらぷら門前仲町まで歩く。天気快晴のもと、
水の都市・東京を満喫。考えてみると月島は、東京湾に浮かぶ人工の島なのだった。
隠れ里めいた雰囲気があるのも当然か。
 そのあと有楽町へ出て、まだ観ていなかった(試写状とか来たためしがないもん
な〜カドカワさんとこは……)「リング0/ISOLA」へ。「ISOLA」はイマ
イチ……こういう話にしちゃっていいのか、オイ、という感じ。「リング0」はそれ
なりに納得のゆく出来だが、終盤の展開には唖然ボー然。田中好子がこんな悪党ヅラ
だったとわわわ(笑)。しかしまあ写真集までうかうか購入してしまうくらい仲間由
紀恵びいきの小生としては、その健闘を讃えたい映画ではあった。
 帰ったらムーOK谷くんから、次号の巻頭総力特集「安倍晴明五つの謎」の正式寄
稿依頼メールが。日曜だというのに熱心よのぉ〜。


2月28日
 ……で。ふと気づいてみると、「ムー」来月号には、全く別々の企画で4本の原稿
を書かなくてはいけないことが判明し愕然。え〜らいこっちゃ、えらいこっちゃ! 
ここで動揺してはいけないと、ネットの更新に専念(笑)。さらに、こーしてはいら
れないと、ゾンビ文学誌にスパートをかける。


2月29日
 朝方、ゾンビ文学誌を書き上げて送信。古今のゾンビ映画&小説を集大成する弩マ
ニア本らしいのだが、プライベート・プレスに近い形で出版されるため、まだ完成ま
でしばらくかかる模様(詳細が分かったら追って告知します)。
 打ち合わせのあと、久しぶりに早稲田古本街へ。店構えは変わっても、並んでる本
は相変わらず。なかには小生の学生時代から定位置に鎮座ましましているとおぼしき
本も(笑)。気の長い商売である。しかし最近、店閉まいの時間が早くないかしらん