HORROR*WEB
天網恢々疎にして漏らさず!
6月1日
 天から降ったか地から湧いたか、唐突に持ち上がった『別冊文藝』ホラー特集(J
ホラーはタイトルに使用せず、との事である。ここに銘記しておく)の「90年代ホ
ラー・ベスト100」(仮題)@締切はなぜか一週間後(笑)のセレクションを、え
いやッとばかりやっていたら夜が明けていた。ハッと部屋を見まわせばホラー本(し
かもほとんどハードカバーじゃん)の山山山……さすがにウンザリして一時中断、
ジョナサンへ避難して、遠い昔に読んで(といっても10年前だけどさ)中身を忘れ
かけていた某書や某書を読み直し感銘を新たにする。
 なんとか全100編を20項目に分類整理して、仲介役(御苦労かけます)の編集
ユニットPLUGHEADSにメール送信したのも束の間、五反田の学研へ駆けつけ
る。
『ムー』次号の2色刷り特集「怪異ナメラスジ〜魔の通る道を追え!」(仮題)の写
真セレクトを兼ねた打ち合わせである。岡山と徳島を股にかけたロードムービー風大
型取材の成果やいかに!? 乞う御期待なのだ。
 打ち合わせ終了直後、PLUGHEADSの片割れ・神無月マキナ@SCARED
編集長からリストの件で電話が。おおよそ状況は呑み込めたので、直接河出の担当編
集氏と面談の約束を取りつける。うふふふふ。(←不穏な笑み)
 時計を気にしながら、渋谷の美蕾樹で開催中の「亡月王」こと西村有望画伯の個展
会場に駆けつける。今回は従来にもまして妖艶過激な女体&女陰幻想のオンパレード
である。いや〜眼福眼福(笑)。亡月王氏およびユニークな古書店マルドロールの女
主人Kさん、四谷シモンのマネージメント役をつとめるSさん(お噂は須永朝彦邸で
常々耳にしていたのだがお目にかかるのは初めて)としばし歓談。マルドロールの目
録中、杉村顕道の『怪談十五夜』がクラニーの手に落ちたと知り切歯扼腕。くっ
そ〜、く、くらにぃめ〜、今度コピー取らせてねん(笑)。
 席を温める間もなく失礼して新宿へ。今夜は「エニックス・エンターテインメント
ホラー大賞」選考委員の初顔合わせなのである。長編小説部門担当の風間賢二氏&渡
辺浩弐氏、短編小説部門担当の竹河聖さんと小生、コミック部門担当の藤原カムイ
氏、キャラクター&イラスト部門担当の韮沢靖氏という(小生を除いては)錚々たる
メンツが揃った。なんつーか、こう、キッチリ選びます! って感じでしょ(笑)。
 応募締切は2000年10月31日だ。第2、第3のイワイシマコ(!?)を目指す
向きは、ぜひっ!


6月2日
 寝ぼけまなこでメール・チェックをしていたら、山尾悠子さんから『幻想文学』5
8号「ファンタジスト2000」特集でお願いした書面インタビューの回答が到着し
ていたので、思わず飛び起きる(笑)。
 なんたって「77の山尾悠子」というくらいで、全77問、あれやこれや随分無礼
な質問も繰り出したのに、ひとつひとつ真摯な応えを返していただき大いに恐縮す
る。その完成度――インタビューに「完成度」というのも妙だが、そうとしか呼びよ
うがないのだよこれが! 乞う御期待――は、もはや一個の作品の域。こ、これは原
稿料をお支払いしなけりゃね、と発行人と話し合う。
 と、思っていたら、高原英理氏からも評論原稿が到着。こちらも30枚を越える力
作である。タイトルも秀逸、題して「形而上憧憬症候群」……そうそう、言い得て妙
だよなぁ、と早速、影響を受ける(単純なヤツである)。
 夕刻、神保町でPLUGHEADSの矢吹武氏、『別冊文藝』のM氏とベスト10
0リストの件で打ち合わせ。小生のいささか強引な提案を御快諾いただく。感謝感
謝。
 そうと決まれば話は早い。帰宅後、リスト再吟味のうえ、心あたりの方々に問答無
用でリストと寄稿嘆願メールを送りつけるヤツ(笑)。やっぱりこういうものは、心
からホラーを愛するスペシャリストな面々に書いてほしいじゃないの。すると数時間
後、次々に快諾の返信メールが!(メンバーは最終確定後におしらせします)皆さん
それぞれ多忙な方ばかりなのにねぇ……本当にありがたいことである。望みうる最強
のメンツが組めたと秘かに自負しとりまする。
 それはそうと……締切間に合うのか!?>自分(笑)


6月3日
 実は今度、日本初の本格的オンライン書店として今秋オープンするbk1(ブック
ワン)のホラー棚を任されることになった。といってもネット上の話ゆえ、小生が書
店員になって「いらっしゃいませ、どのような恐怖をお探しですか?」と微笑むわけ
では……たぶん、ない(笑)。
 要するに新刊の書評やコラム、インタビュー等のコンテンツを読者に提供するwe
bマガジンみたいな形になるのだろう……などとまた適当なことを書くと、SF棚担
当の森山和道氏@独断と偏見のSF&科学書評
(http://www.moriyama.com/index.htm)の教育的指導を受けかねないので(いや、
ホント、お世話かけてます)、詳しくは後日、「学習」してから、ちゃんと御紹介す
ることにします。
 いずれにせよ、今のホラー・シーンに即応できるホラー情報誌みたいなものの必要
を痛感することしきり、だったので、このオファーは受けてみようと腹を括った次
第。個人的には「HORRORWAVE+BGM」のノリでいけたらなぁ、と思って
ますが、サテどうなりますやら。
 んでもって、来週から本格的に、主要なホラー系出版社の担当の方と、挨拶&取材
のために会いまくろうと思っているのだが、名刺が底をついていたことにハッと気が
ついた。こいつはマズい。いつもは銀座の伊東屋で頼んでいるのだが、あそこはそれ
なりに時間がかかるよなぁ、そういえば近所にプリントショップがオープンしたっ
け……と覗きに行く。数日で出来るというので、通常の名刺とは別バージョンを作成
することに。いやナンパ用とかではなくてぇ(笑)、地方取材用なのである。「幻想
文学企画室」云々とか書いてあると、奇異な目で見られることも間々あるのだった。
 それはそうと、こちらをご覧の各社編集者の皆様にお願い!
 bk1では新刊の先行予約に力を入れてゆく方針だそうです。当然、書評や著者イ
ンタビューなども発売日に即応してUPする予定。ついてはホラー関連書の近刊情報
やゲラ配布など御協力を賜れましたらとても助かります。何卒よろしくお願いいたし
ます。
 さて、夕刻より池袋西武のホラー講座へ。今夜は英米における幽霊表現の今昔につ
いて。喋りながら新ネタを発見して、秘かにほくそ笑む。
 帰宅してみると、学研『5年の学習』編集部(笑)から、夏の怪奇特集のラフが2
週間遅れで到着していた(大笑)。送信ミスに双方気づかぬまま、担当氏が海外取材
に出てしまったのである。こちらは「あ〜なんかあの企画、ボツったのかいな」と
思ったものの、忙しいので放っておいたのだが。
 どうも速攻で対応しないとヤバそう……かくして今夜も眠れぬ夜は更けてゆく
(俺、不眠症とは無縁な体質なのにさ)。

6月4日
 携帯の呼出音に飛び起きて(寝起きはやたらと良いのである)出てみると――
「谷中の全生庵のものですが……」
 と、いきなり切り出され、一瞬アタマの中が空白になるも、そうだった全生庵の御
住職から取材の件で連絡を頂戴することになっていたのだった、と思い出す。
 同朋舎の新シリーズ〈日本怪奇幻想紀行〉三之巻『幽霊怨霊怪譚』で、三遊亭円朝
ゆかりの地を探訪するのである。……いや「のである」って、ホントはとっくに探訪
してなきゃいけないんだけどさ(笑)。明日の午後、取材にうかがわせていただくこ
とで話がまとまる。
 というわけで朝メシがてら(もう昼過ぎだけど)近所の緑図書館へ円朝関係の資料
を仕入れに行く。墨田区には図書館がいくつもあるのはいいが、所蔵本が分散してい
るのは困りもの。角川版『三遊亭円朝全集』も緑には置いてない。いや、取り寄せて
もらえばいいのだが、気が短いのに加えて、それじゃ間に合わないケースがほとんど
ときたもんだ。だいたい角川も、どこでも読める乱歩なんかホラー文庫に入れとらん
で(セレクションは良いんだけどさ)、これからはホラー文庫版円朝全集とかで他社
との差別化を図るべきではなかろうか!
 そのあとジョナサンで『幻想文学』次号のインタビュー原稿チェックやらなんや
ら。久々の編集者インタビューは、当の〈日本怪奇幻想紀行〉や〈ワールド・ミステ
リー・ツアー13〉で勇名を馳せた同朋舎のM津田氏なのだ。怪談実話蒐集がこよな
き趣味という、ウチの掲示板に来たらさぞかし話が弾みそうな好青年(!?)なのだ
が、残念、ネットはやってないそうな。
 神保町の三省堂へ寄って円朝関連書を購入後、自由が丘へ。文生堂のマニア棚を眺
めていたら携帯が鳴った。学研「5年の学習」編集部のY氏である。日曜日なのに御
苦労さまである。昨日のFAXの件について相談。学年誌の場合、実際の執筆は専属
のライターさんがするんだそうで、小生は要するにネタ提供役でんな。


6月5日
 ほとんど寝る間のないまま、早朝から日比谷オフィス街で秘密工作(!?)に勤しん
だ後、タクシーで両国の事務所へ戻る。仮眠をとろうと思ったら……10時前から電
話が鳴りっぱなし(しくしく)。月曜日だから仕方ないか。
 白泉社のMさんからFAX。先日打診した某企画の件、会議でゴーサインが出たの
で社内の担当者が決まったという連絡。なんと担当の方も「東」さんだとか。しかも
! なんとなんと、作家の東理夫さん(いつも紛らわしくて御迷惑かけてま〜す)の
弟さんなのだとか! いやはや世の中、なにがあるか分からないものである(笑)。
 ブックス・エソテリカ『幽霊の本』などでお世話になった編集プロダクション少年
社のH社長から久しぶりに電話。何かと思ったら『5年の学習』のライター仕事は、
少年社が請け負ったんだそうな。いやはや世の中、なにが……(以下略)。やはり相
当に切迫してるらしい。結局、末端にシワヨセがいくからなー、極力急ぐから、と答
えて電話を切る。
 午後1時から、晴天下の谷中・全生庵へ「円朝と幽霊画」の取材におもむく。事務
所近くの和菓子屋で、地元名物・元徳餅を調達。手土産は、円滑取材の第一歩!?
(笑)
 全生庵では毎年8月に三遊亭円朝の幽霊画コレクション40数点を一般公開してい
る。小生も学生時代から何度も足を運んでいるのだが、直接、寺の方にお話をうかが
うのは初めて。とっておきの隠し玉を「発掘」したのをはじめとして、いろいろと有
意義な取材だった。早速、同朋舎のM津田氏に電話を入れ、追加取材の打ち合わせ
を。
 全生庵を辞して後、谷中界隈を探訪していたら、さすがに徹夜の疲れが出てカラダ
が異様に重い(別に何かに取り憑かれたわけじゃないのよ……たぶんね)。帰宅後、
とにかくひと眠りしようと風呂に飛び込んで、電話類すべてオフにして爆睡。目が覚
めてから怪談実話本のネタ・セレクションその他。
 今週同時進行のもの――同朋舎、別冊文藝、ムー、5年の学習、某文庫解題、幻想
文学、bk1関連……ううーむ。これは画期的に厳しいなりな(笑)。いや笑ってる
場合じゃないっす。


6月6日
 朝イチで「5年の学習」にFAX送信して仮眠をとったあと、以前つくった某アン
ソロジーの「文庫版あとがき」を速攻で書き上げる。午後いっぱい、まだ公表不可の
打ち合わせやらなにやらでバタバタ。
 その間隙を突いて、横浜の某古書店へ。落語関係の本がどっさり入荷していたのを
思い出したのである。探していた青蛙房版『三遊亭円朝』初版本を入手して、束の間
の安らぎに浸る。他にも、たぶんここにはあるんじゃないかと思っていたあの本やら
この本やらを予想どおりゲットできて満足満足。忙しいなか足を伸ばした甲斐があっ
た。
 某社の某仕事をアシストしてもらっているK山から、アッと驚く情報が。最近まで
某シリーズの仕事をしていた某嬢が、なんとまあ某社で某仕事を担当することになっ
たそうな!(ボーボーうるさいですね、すいません、まだちょっと情報解禁にならな
いもので)……いやはや出版業界、一寸先は分からないものである。


6月7日
 宅配便に叩き起こされ、何かと思えばbk1様より小生の名刺が到着(御高配感謝
です、T島さん)。版面を一瞥するなり、爆笑。アイボもどきのマスコット・マーク
(ブックワン=わんわんの駄洒落っすね)が、妙に稚拙だが、かわゆいのであった。
 そういえば自前の名刺も出来たと連絡あったよなあ、と朝メシ購入がてら、近くの
プリント・ショップへ。こちらはいたってシンプルなデザイン。やはり「蛇おじさ
ん」(幻想文学会のシンボルマーク)がついてるのとそうでないのとでは、印象が全
然違うよ(今ごろ気づくなよ)。
 ところで森山さーん、bk1の名刺には小生の事務所のアドレスとか記載されてな
いからさ〜、これだけ渡しても仕事にならんのよ。以上、私信でした(気になる人は
「独断と偏見のSF&科学書評」の日記参照)。
 午後、淡路町の白泉社で某企画の打ち合わせ。噂のヒガシ氏と初対面する。なんで
も同家では代々、名前の最後が「〜夫」なのだとか! 実は本名は「政男」である小
生としては、肩身の狭いこと限りなし(笑)。
 し、しかし、御本人が「英夫」で、御尊父が「信夫」とは……一瞬、中井英夫と折
口信夫に両脇をガッチリ固められた幻影が脳裡に去来し、慄然たる思いを禁じ得な
かった(嘘)。冗談はさておき、幻想文学会OBで白泉社勤務のOくんとも親しい間
柄で、おまけに小生同様、パナソニックのレッツ・ノート愛用者と判明し、一気に親
近感が増す。
 小学生向け推奨ホラー図書のリサーチに、神保町へ寄ったところ……一誠堂の店頭
に東洋文庫版『甲子夜話』全二十巻揃いが格安で出ているではないの。随筆大成版を
バラで所持している関係で、ついつい手を出しかねていたのだが、これならいいか〜
とばかり購入。
 途中、石堂藍から恒例の「いいかげんに『幻想文学』の原稿よこさんかーい!
(怒)」電話が。わかっちゃいるけど……(泣)。

6月8日
 わかっちゃいるけど……うっかり昼近くまで寝てしまう(笑)。
 オンライン書店「bk1」のプレサイト・オープンの日だったことを思い出し、正
午を待ちかねてアクセスしてみる。な、なるほど、こういうものなのね……(汗)。
マスコット・マークのビリケン(と勝手に命名しておく)は、正面向いたりもするこ
とが判明。こっちのアングルのほうが秀逸かな。
 昼飯に外出し、菊川のケーキ屋兼喫茶店シュベーネ(人の出入りが少なく穴場なの
である。ケーキやプリンも非常に美味、って前にも書いたか!?)で、たらたら仕事す
る。
 bk1の仕事で、角川春樹事務所の営業部と連絡をとる。8月に発刊される噂の文
庫版ホラー・シリーズ、正式名称は「ハルキ・ホラー文庫」になる模様(笑)。とて
も積極的な対応ぶりに好感を抱く。


6月9日
 ハッと気がつけばもう朝だ。思ったよりもまとめに手こずった『幻想文学』次号の
水原紫苑インタビューそのほかをまとめて、石堂あてに送信。ついでに撮影用の本と
かも宅配で。
 大瀧啓裕さんからエヴァの原稿がひっさびさに到着(ホントは数日前に届いていた
のだが、不在で郵便局が持ち帰ってしまったのだ。宅配便のように即応してくれない
のは困りもの、速達の意味がまったくないぞ〜)。今度こそ本当にラストスパートな
るか!?
 自由が丘のアンナミラーズ(そ、総統ぉ〜)で心頭滅却悟りの境地で仕事したあ
と、午後7時に茗荷谷のブックワン本社へ。初のエディター会議である。ちなみに駅
から本社へ向かう界隈は、かれこれ20年近く前、小生が小日向台の風呂なしアパー
トから銭湯へ通った道なのだった。懐かしいのぉ。
 さて、7時を過ぎても誰も現れないので(苦笑)、ひとりで会議机にナメラスジの
資料広げて、レッツノートに携帯差してネット参照しながら仕事していると、安原顕
氏が登場。
「なんだなんだ移動書斎じゃねーかよ、おい」と感心&関心の御様子。いや別にこん
なの今じゃ珍しくないと思うんですが……というのはネット系限定の常識か!?
 一緒に仕事するのは、ヤスケン氏が「硬派の文芸書」を、小生が「ホラーノベル
ズ」を担当していた学研以来……って、なんだ今度も似たようなものかと一瞬、昔日
の悪夢が脳裡をかすめ去った(笑)。しかしとうとうヤスケン氏もネットを始めたの
かと思ったら、パソコンは「受信専用、発信不可」で(笑)、執筆はワープロだそう
な。やっぱりな〜。
 小生をヘッドハンティング(!?)してくれた森山和道氏とも、マトモに仕事の話を
するのは久方ぶり、というかNHK時代以来だろう。会議終了後、タカザワ、森山、
福井の各氏と近くのデニーズで食事しながら深夜のミーティング。さらに帰りの地下
鉄車内で福井くんとしばし不穏な(笑)密談。


6月10日
『幻想文学』ほかの仕事をひとまず中断して『ムー』のナメラスジ特集執筆に専念。
今回は2色刷り特集ページなので、いっぱいいっぱい書かねばならないのであった
(いつもの伝説紀行5本分くらいか!?)。
 どかどかと新刊見本やら掲載誌やらが到着。『ムー』7月号には「かごめ探偵団」
第2弾の群馬取材編を掲載。『週刊朝日百科 世界の文学』第49巻「ホラー傑作
選」(確か元のタイトルは「存在の大いなる不安」とかだったハズなのだが……)で
は「文学小事典」のページをさりげな〜く担当(笑)。「ダーク・ファンタジー」を
定義するなんぞという難しいテーマに挑んでおります。
 同朋舎から2冊同時発売される新シリーズ〈日本怪奇幻想紀行〉の『一之巻 妖怪
/百鬼巡り』には「くだん」をめぐる論考を、『二之巻 祟り・呪い道中』には熊野
木石紀行を、それぞれ寄稿しております。特に後者は、ちょっと自信作なのだ。ぜひ
御一見を!


6月11日
『ムー』『幻想文学』と並行して『別冊文藝』が追い込み態勢。かなりヤバいぞこれ
は。


6月12日
 朝、石堂から脅迫電話。「はやくせーーーーいい」「へーーーーいい」
 ……と色よい返事を返しつつ、各氏からメール送信されてきた90年代ホラー・ベ
スト100原稿を整理して、河出の担当氏に送るワタシ。
 この忙しいのに、新宿プチモンドの個室で昼飯食いながら篠田真由美さんにインタ
ビュー。「伝奇を語る」@ムーの仕事である。いきなり昨今の新作ミステリ模様をめ
ぐり、痛快なる所感の数々が炸裂!(笑)さすがは石堂藍のマブダチと感心する。詳
しくは「ムー」次号で、って書けるわけないっすね。
 この忙しいのに、某社の仕事の件で、わけのわからない文句をつけてくる困った
ちゃんな某作家氏(男性)が。私ゃ、直接の担当でも何でもないっちゅーのに
(笑)。私怨と仕事を理不尽に混同して、結局一方的に損をするのは自分のほうだっ
てことに、まだお気づきではないのだろうな。やれやれである。こちらは常に是々
非々の姿勢で、前向きに対応してきたのにねぇ……お望みどおり未来永劫、仕事は御
遠慮させていただくことにする。
『ムー』の原稿、中断して他の原稿にかかろうかと思ったが、興が乗ったので一気呵
成に終章まで仕上げてしまう。送信しようと思って、念のため編集部に電話したら、
眠たそうな声の獅子堂が! ときに午前3時30分(笑)。いや、御苦労なことで
す。


(この間の約一週間は、超絶修羅場につき記録&記憶喪失)


6月20日
 ハッと正気に戻ってみれば、『別冊文藝』のために書いた細切れ原稿、総計70枚
近くに達していたことが判明。数日間で一気呵成に書いた枚数としては、おそらく自
己新記録であろう。
 ナメラスジ特集のゲラが出たというので、学研へ。K池さんから、小生もちょい関
わっている某新企画の助っ人として雇われたフリー編集者のF西さん@元異形コレク
ション担当(笑)を紹介される。お互い「お噂はかねがね……」(どーせ俺に関して
はロクな噂が伝わってないんだろうがな〜)なれど、面と向かって挨拶するのはこれ
が初めて。モー娘やめた市井似の美女って噂は本当であった(笑)。
 ムーのゲラをチェックした後、K池氏&M氏と、五反田駅近くの異様にコジャレた
イタリアン・レストランへ。階段上がった突き当たりに巨大な木馬のオブジェが屹立
する、中年男3人組で行くには勿体ない店だ(笑)。どうせならこういう店には……
以下自粛。コース料理をいただきながら、ムー伝奇ノベル大賞(選考委員は菊地秀
行、皆川博子、夢枕獏のビッグ3だ!)関連の相談をする。
6月21日
 朝から溜まりまくった雑用や連絡事項の処理にバタバタ。合間を縫って「怪談之
怪」の選評送ったり、bk1方面の依頼とか在庫本選定とか。
 深夜、『文藝別冊』の校正ゲラがどーんと出る。えんえんとFAXがジーコジーコ
いって出る出る出る〜。


6月22日
 bk1の取材でK山と角川春樹事務所へ。8月19日に「ハルキ・ホラー文庫」の
創刊(なんと全21点、オール書き下ろしだとか!)をひかえているだけあって、社
内はすでに臨戦態勢ムード。直接のホラー担当氏のみならず、編集局長のN本氏
(「海燕」等で名を馳せた名編集者である)や営業の方まで出席しての物々しい
(!?)打ち合わせとなった。その詳細ならびにHホラー文庫のラインナップ等に関し
ては、bk1のホラー・サイトに順次アップしていきますので要注目だ。
 そのあと一人で東京創元社に向かう。平井呈一『真夜中の檻』文庫化を成し遂げた
熱血ホラー編集者M原氏に、同じくbk1の取材……だけなら楽勝なのだが、にわか
に異次元より到来したヨグソトホトならぬ『エヴァンゲリオンの夢』のゲラ戻しと打
ち合わせもやることに。とはいえ小生の最終チェックがまだ半分も終わっていない!
(泣)結局、担当のK浜氏を拝み倒して、一日延ばしにしてもらう。や〜れやれ。
 それはさておき、創元推理文庫の夏から年末にかけてのラインナップはラヴクラフ
ティアンの期待大ですな。詳しくはbk1ホラー・サイトにて(しつこいって!?)。


6月23日
 もうすでに事実上、情報解禁になってるようなので固有名詞を出してしまうが、9
月にスタートする「学研M文庫」創刊ラインナップの一冊『少女怪談』の表紙カバー
の件で、デザイン事務所での確認&打ち合わせに同席。デザイナーの中谷氏は、あの
『ムー』のタイトルロゴを手がけたというベテランである。
 同書はホラーノベルズ版では石原慎太郎、大槻ケンヂ、大原まり子ほかの全7作品
収録だったが、今回は新たに山尾悠子「通夜の客」(国書版『作品集成』未収録の幻
の名作「初夏ものがたり」の一編だ!)や小池真理子「ミミ」ほかの4作品を加え
て、全11編へと大幅増補。編者的にも、かなり納得のゆく仕上がりとなった。あと
がきにも書いたけど、今まで小生が編んだ中で最恐のアンソロジーかも!?
 ちなみに、創刊ラインナップには他に『魔道書ネクロノミコン』と『クトゥルー怪
異録』も含まれているのだ。うっふっふ、ホラーノベルズの逆襲なのだ!(ただし今
回は小生、制作には原則としてタッチしておりません)
 夕刻よりホテル・オークラ別館で山本周五郎賞の贈呈式&パーティ。岩井志麻子さ
んの挨拶に何とか間に合う時間に到着。相変わらずハジケとりましたー(笑)。愉快
痛快奇々怪々でしたー(大笑)。しかしながら、いろいろと切迫しているため、二次
会終盤にてお先に失礼する。


6月24日
 夕刻、池袋駅構内の喫茶店で、東京創元社のK浜様と待ち合わせ、昨日の戻しに間
に合わなかった『エヴァンゲリオンの夢』のゲラその他を恐懼しつつ差し出す。K浜
様は、休日にもかかわらず、わざわざ川越から出てきてくださったのである。熱心な
編集者とはありがたいものである。


6月25日
 今日こそは、同朋舎の三遊亭円朝論取材で板橋区赤塚方面に出撃しようと思ってい
たのに、朝からなんだかんだと片づけねばならない用件だの電話だのに拘束されて、
ハッと気がつけば午後2時を回っているではないの……これではちょい出遅れであ
る。休日の取材は早め早め、が鉄則なんだが。
 とにかく大慌てで取材の七つ道具(ん、七つもないかな? デジカメだろ、コンパ
クトカメラだろ、MDデッキだろ、道路地図だろ、コンパスだろ……おお、これに
ノートパソコンとケータイで、いちおう七点か!)をカバンに詰め込み飛び出す(こ
の日のことは「幻想的掲示板」当日の書き込みを参照されたし)。


6月26日
 午後イチで、「ダ・ヴィンチ」夏の怪談大特集のインタビュー取材を受ける。編集
部のK本とライターの藤井康宏氏、それにカメラマン氏が事務所にお越しいただくこ
とになっていたのだが……前日の取材疲れで昼近くまで寝ていて、部屋を片づけるヒ
マと気力がない! どう考えても人が3人も(!)入れるスペースをつくるには小一
時間はかかりそうなので、あきらめて行きつけのケーキ屋シュベーネの喫茶室を使わ
せてもらうことに。「怪談ニッポンの過去と現在、特にその怪異表現技法をめぐっ
て」みたいなけっこう硬派のテーマだったのだが、藤井氏は宗教・民俗学関係にも関
心をお持ちだそうで、スムーズに話が進む。
 カメラマン氏曰く「鏡像みたいに、ヒガシさんがダブルで椅子に座ってる感じで撮
ります」(笑)とのことで、隣合った椅子を何度も移動して同じポーズの写真を撮ら
れる。どんな写真になっているのか愉しみである。
 ダ・ヴィンチ御一行様と別れて、そそくさと浅草橋へ。円朝関連の取材だ。柳橋界
隈を徘徊して、写真を撮りまくる。今も神田川沿いに船宿が点在する江戸情緒の余香
漂う一帯。かつては新橋と並ぶ花柳街で、特に江戸根生いの旦那衆に愛されたという
のも納得である。
 お江戸気分が盛り上がったところで、タクシーで錦糸町の東武ホテル・ロビーへ乗
りつけ、江戸の化石、じゃなかった権化のごとき作家を直撃! そう、bk1の新刊
インタビュー第1弾、加門七海『やおいの血脈』……おおっと失礼、またも変換ミス
だ、正しくは『呪の血脈』の取材である。
 bk1の名刺を渡すと、予想どおりマスコットのワンちゃんに反応する動物大好き
作家。
「そのマスコット、横向きより正面のアングルのほうが可愛いんですよ」
 す、すると、やおら名刺を横から眺めようとするアナログなオカルト作家(大
笑)。そりゃ、いくらなんでも無理でしょー、オンラインでの話だってばさ。
 インタビューの後で、先日のナメラスジ&熊野取材の写真をお目にかけつつ抹香臭
い雑談に花を咲かせていたら、いきなり「ちょ、ちょっと待って! 今の写真、もう
一度出してっ」と緊迫した声でストップがかかった。おいおいおい〜、このパターン
はもしや毎度おなじみの(恐)……思ったとおり、ノートパソコンの液晶画面を指さ
しつつ「あははは、写ってるじゃーん」
 センセイ、嬉しそうである。熊野の元本宮で撮った一枚に、二人の男性とおぼしき
上半身(みたいなもの)が写っていたのであった……。おっかしいなー、あそこは清
浄の気漂う土地のはずなのにぃ、とぶつぶつ。しかしデジカメでも心霊写真って、写
るのねえ、とほほ。

 ここでちょっと、業界のごく一部の方々にひと言。上の記述をご覧になって「あれ
れ、噂と違うのでは?」と不審に感じてる、ホレそこの信じ込みやすいアナタ! こ
れが「噂の真相」でありまする(笑)。