11月1日
 14時から小学館で「新・くだん狩り」の第2回打ち合わせ。といっても今回は小
生あくまでもオブザーバーで、『南国少年パプアくん』や『TKマン』でおなじみの
漫画家・柴田亜美さんが、年明けからビッグコミック・スピリッツ増刊で連載を始め
る「妖怪紀行漫画」の第1回として、なんと「くだん」に白羽の矢が立ったのである
!(すでに御本人がスピリッツのサイトで告知しているので情報解禁します)
 編集担当のH野青年は早大OBで、な、なんと元「ムー」のOK谷くんの先輩にあ
たるという妙な因縁つき(笑)。どーせなら今まで探訪してないところに行こう! 
ということで話がまとまり、かつて水木しげる翁が「くだん」の剥製を目撃したとい
う九州は別府の地をターゲットとすることに。
 そちら方面に明るい方、なにかお心当たりの情報(特に「剥製」「見世物」「から
くり」「巡回興行」など)をお持ちの方は、是非是非よろしく!
 ちなみに鳥取では、牛女が出没して先頃の地震を予言したという風説が流れている
由。やっぱりね〜。
 帰りがけに神保町の古書まつりをちょこっと覗く。あいにくの雨で屋外売場は中
止、三省堂の一階フロアのみささっと流して『高島野十郎展』カタログとか『花と木
の文化 椿』とか『ふくしまの幽霊』改訂版とか……ちょっとだけね、のつもりが気
がつけば両手が紙袋でふさがってるのは何故!? 雨なのによ〜(莫迦)。


11月2日
 いろいろ相談やら照会やらがあって、国書刊行会のイソ裂編集長に電話。
 13:00から宇田川町の渋谷第一スタジオで「たけしの万物創世記」の収録立ち
会い。
 スタジオに向かう途中、朝飯を食おうと思ったら、財布を持って出なかったことに
気づく(地下鉄にはTカードで入れるのだ……)。出がけに急遽いつもと違うカバン
に替えたためのミス。空き腹を抱えてスタジオに向かったら、実にタイミングよく
「お弁当」を支給されたので猛然とむしゃぶりつく。
 源内先生役のそのまんま東さんに(これじゃWヒガシだよ)、魔女&イングラム事
件のレクチャー。VTRのビデオを見せてもらったが、予想どおりというべきか、小
生のコメントは魔女狩り概説の部分のみ使用されていて、イングラム絡みの話はすべ
て省略されていた。まあ、事件に直接関わった心理学者オフシー博士のインタビュー
が流れるのでいいんだけどさ(獄中のイングラム本人への取材は、結局時間切れで間
に合わなかった由、残念)。……というわけで、全国放送でお茶の間に、ラヴクラフ
トの名前をアピールする野望はあえなく潰え去ったのであった(笑)。
 そのまんま東さんは噂に聞いていた以上に知的な方だった。「ファンダメンタリズ
ムって……『根本的な』ということですか?」「それってつまりエレクトラ・コンプ
レックスのこと?」などと的確なリアクションが素早く返ってきて、話の速いこと。
 収録は2週分をまとめて1日で撮るため、1本目の「橋」の話にも同席したが、圧
巻だったのが、その回のゲストである山口「なんでも欲しがる〜」もえちゃんの超マ
イペースな飛ばしっぷり。本番前からエンジン全開で、たけしや所ジョージを煙にま
く独自の世界を堂々構築していたのはアッパレ。スタッフにもウケまくりだった。
 肝心の「魔女」の収録では、アドリブの質問が飛ぶこともなく、サポート役の小生
はお役ご免。いや、ホッとしました。放映はたぶん11月14日のはず。


11月3日
 『新訂 クトゥルー神話事典』の作業を続ける。


11月4日
 池袋西武コミュニティカレッジのホラー講座の日。今期の講座は自発的に「東西ホ
ラー通史」みたいなカリキュラムを想定していて、前回は『源氏物語・夕顔の巻』と
「ヴィール夫人の亡霊」について、今回は柳田國男と泉鏡花とヘンリー・ジェイムズ
の「回転」をめぐる三題話である。
 このところ、新しい受講者がなぜか女性ばかりで、目下、教室はまことに華やいだ
雰囲気に包まれている……ということにしておこう(笑)。
11月5日
 久々に昼過ぎまで熟睡。ジョナサンで仕事して錦糸町のヨドバシカメラに寄ってパ
ソコン売場で富士通の新製品LOOX(DVD内蔵タイプ)を触ってから(う〜むイ
マイチ……やはり来週発売の超軽量タイプを待とう)中野の小劇場ウェストエンド・
シアターへ。うちのK山こと迫水由季が出演する「劇団てぃんか〜べる」公演『十二
国記―東の海神 西の愴海―』を観る。
 再演ということだが、ナマで観るのは初めて。あの気宇壮大なオリエンタル・ファ
ンタジーを、なかなかうまくダイジェストしているなぁという印象。サコミズはじめ
皆さん熱演でした。
 しかし狭い劇場内の熱気に較べて外気の冷たいこと! 汗ばんだ肌が一気に冷え
て、風邪をひきそう……ということで、行きがけにチェックしておいた新井薬師商店
街の古本屋に一時避難。わりと充実していた歴史や古典芸能関係の本をピックアップ
して、早々に帰宅。『隅田川の今昔』とか『舞踊名作事典』とか。粛々と仕事を続け
る。


11月6日
 明け方まで『新訂 クトゥルー神話事典』の作業を続けて、午前中就寝。午後は
シュベーネに腰を落ち着けて、細かい原稿そのほか雑務処理に精励。週明けというこ
ともあって、各社から原稿の催促、確認、念押し、恫喝等々が相次ぐ(笑)。
 須永朝彦さんからbk1でお願いしていた書評原稿を書き上げたので送る旨の連絡
あり。催促もまだだったのに!(感謝)え? 人のフリみて我が身を……あああ、耳
が、耳がッ!
 しばらく雑談。蔵書の一部を処分したいのだが、インターネットで競売の告知をで
きないだろうか、とのことだったので、ネットのシステムを御説明して、書目一覧を
送っていただくことにする。
 すでにこの日記をアップする頃には「アトリエOCTA」のホームページに特設
コーナーが設けられているはずなので、須永さんのお仕事に関心をお持ちの方は(買
う買わないはさておき)、ぜひチェックしていただきたい。特に吸血鬼ファンは(た
ぶん)必見の模様。


11月7日
 夜、bk1の『ザ・スタンド』発売記念特集の件で捕まえそこねていた風間賢二さ
んと、ようやく連絡がとれる。「ダ・ヴィンチ」の仕事(藤田新策画伯とのキング対
談の由、愉しみ〜)ほかで、東京に行っていたんだとか。あっちゃ〜、その間に「ダ
・ヴィンチ」のあの人やこの人とは、電話で何度も話していたのにぃ(笑)。
 対談相手を誰にするか、あれこれ相談。いろいろと超大物(!?)の名前が飛び交
う。続報を待て!


11月8日
 地元郵便局に注文しておいた石見神楽のビデオ(川北神楽団&横田神楽団の「神楽
ドーム特別公演」――例の「塵輪」も入っているのよん)が速攻で届く。う〜ん、便
利じゃ。
 獅子堂@ムーから電話。
「2月号の数方庭リポートなんですが〜そろそろ打ち合わせを〜」
「……へ!?。それって、3月号じゃなかったの!?」
「違います」
「ってことはぁ、カゴメ探偵団と同じ号?」
「あ、そうなりますね〜ははははは〜」
「伝奇入門の連載もあるんだけど……」
「はははーそうなんですかー大変ですねー」
「…………」
 むむむむ、こ、これはちょっとシャレにならん事態に(恐)。


11月9日
 夕刻、ムー編集部で「カゴメ探偵団」第3回の打ち合わせ、あ〜んど、獅子堂と
「数方庭」リポートの件で軽〜く打ち合わせ。
 帰りがけに9階に寄って、K池さん@ムー伝奇ノベル第2回募集開始! に「2月
号は3本掛け持ちなんですよ〜」と泣きを入れたら、しばしの沈黙の後、「2月号よ
りもヒガシさん、そろそろ伝奇入門の1月号の分、入れてくださいよ」
 へ!? すっかり勘違いしていたのだが「伝奇入門」第1回は新年号じゃなくて12
月号始まりだったのである。
 と、いふことは……今月中に私ゃ、「ムー」に4本書かなきゃいけないのかよ、お
い!(笑)


11月10日
 ようやく『新訂 クトゥルー神話事典』を脱稿。だああああ疲れたよ。
 試みに400字詰め原稿用紙に換算してみると、700枚近い分量にまで増加して
おるではないか! これはレファレンスよりも、あくまで通読を前提にした「読む事
典」なので、あまり分厚い事典じてん(!?)した本にはしたくないのだが……果たし
て、どんな文庫になることやら。
 しかし過去5年間のクトゥルー神話小説を総ざらいしてみて改めて実感したのだ
が、国内作品の急激な増加は喜ばしいかぎり。もちろんそれにともなって、いろいろ
問題も出てきているし、そのへんはこういう入門的書物の著者として責任を感ずる点
も多い……というようなことを勘案しつつ序章に加筆していたら、また分量が増え
ちゃったよ(笑)。
 お待たせしていた同朋舎『日本怪奇幻想紀行 妖怪/夜行巡り』の「怪猫紀行」ゲ
ラを大車輪でチェックし、注釈をしたためてFAXで戻す。
 夜、最近は幻想文学な方々や古書マニアな方々の社交場と化している(!?)赤坂の
シングルモルト専門店「ですぺら」で、仏文学者の高遠弘美さん、国書刊行会のイソ
裂編集長と歓談。
 高遠さんには『幻想文学』59号にボルヘスをめぐる素敵なエッセイを御寄稿いた
だいているのだが、なぜかこのところ物書きモードの小生と他誌で御一緒することが
多いのである。『京極夏彦の世界』しかり『ユリイカ』の鏡花特集しかり国書の『ボ
ルヘスの世界』またしかり。
 以前パーティ会場で御挨拶したことはあるが、ゆっくりお話しするのは初めて。御
著書『乳いろの花の庭から』ほかを頂戴する。感謝。御専門のフランス文学畑だけで
なく、古今の日本文学にも造詣が深い博識の士、とは先刻承知していたが、じかにお
会いしてますますその感を深くする。


11月11日
 錦糸町のヨドバシカメラで富士通LOOXを購入。もちろん遂に重さ1キロを切っ
てバッテリ駆動4時間(公称)、エッジ内蔵と話題のSタイプである。朝から飛ぶよ
うに売れているらしく、レジで店員たちが騒いでいた。
 早速、目玉のPHS通信機能を試してみることに。さすがに早い! サイト表示も
快適である(た〜だ〜し〜唯一の例外は……bk1! あああああ〜)。液晶ウラの
エッジ用スイッチが青く輝く様は、なんだかウルトラマンティガみたいで格好良いぞ
!?
 あとはバッテリが実際にどの程度保つか、なのだが、サテどうなりますやら。
 夕刻、水道橋の喫茶店「しろとくろと」で声優の栗田ひづるさんの朗読を聞く。作
品は乃南アサの「薬缶」と皆川博子の掌篇「夜のリフレーン」というサイコホラーな
セレクション。語りのプロらしい、表情豊かで凄みのあるステージでした。
 戻って新マシンのセットアップを続けようと思ったが、手持ちのCD−ROMドラ
イヴを認識してくれないことが判明。とほほほほ。
11月12日
 錦糸町のヨドバシカメラでCD−ROMドライヴを物色。どーせならCD−RやD
VD兼用タイプにしようかと迷うも、待て待て、結局は帯に短し……に終わることが
多いからなぁ、と思い直して、超シンプルなTDKのPCD600Uをチョイス。軽
量薄型でUSB接続で電源はパソコン本体から供給でしかも安価なのがなにより……
しかし、い、いつのまにFDドライヴも顔負けの、お手軽な器械に進化していたのだ
シーディーロムドライヴ!(笑)使い勝手はほぼ快調。さくさくとLOOXの環境整
備を進める。
 ちなみにLOOXには、広辞苑+漢字源の最強コンビほかを収める「スーパー統合
辞書」や「プロアトラス」や「乗換案内」など、使い勝手のよい実戦向けアプリが標
準貼付されていてポイント高し。これに前から愛用している平凡社『世界大百科事
典』と『ブリタニカ』小項目版とブックシェルフの『日本国語大辞典』と岩波『日本
総合年表』と『新潮文学倶楽部』なんぞをドカドカ詰め込んで、出先でのレファレン
スにはさほど不自由しない陣容が整った。
 OSがMeに変わったのを機に、しばらくぶりに一太郎&ATOKをバージョン
アップ。ワープロ自体はめったに使わないのでどうでもいいようなものだが、たまに
企画書なんかを作成する必要があるので入れとかないわけにもいかんのだった。AT
OK13の新機能はなかなか便利である。なんだか昔懐かしき「書院」を思わせる使
用感。
 早速、外に持ち出して使ってみるが、バッテリは普通に使っても3時間近くは保つ
みたい。これなら通常の外出には、さほど不便を感じない実用レベル。もう一本、ス
ペア用バッテリを携帯すれば充分でしょう。
 他に気のついたのは、ハードディスクが回っているとは信じられないくらい駆動音
が静かなこと。原稿執筆がメインの人間にとっては、これは非常にありがたいことで
す。
 ……というわけで、チャッチャと常用マシンの交替作業を完了。しかしなんだね、
ひと昔前のように、アプリやデータの移行にえらく手間がかかって、そのうえ安定操
業までに必ず何かしらトラブル発生していた頃に較べると、パソコンも確実に「家電
化」しつつありますなぁ。


11月13日
 15:00くらいから本日最初の食事を兼ねて外出、そのままJR両国駅から東京
駅へ出て八重洲ブックセンターへ。ノリがいまいちな原稿執筆のカンフル剤に……
と、恐竜&ファッション関連書を漁りに来たのである。
 嶽本野ばら『それいぬ』を実家に取りに戻るヒマがないので、ついでに買っちゃお
うかと思ったのだが、こういうときにはないもんだ。あきらめて地下街の八重洲古書
館に入ったとたん、入り口のワゴンに『それいぬ』が1冊300円で平積みされてい
るのを発見(笑)。あ〜ららららら。いずれにせよラッキーである。そのほか細かい
収穫多し。中村直勝『日本芸能小史』に「中国の件」云々のくだりを見つけて瞠目、
とか。
 八重洲BC中二階の喫茶店で仕事して帰宅。


11月14日
 朝からbk1リニューアル更新のための原稿書きに追われる。最後に残っていた国
書刊行会の古典文学関連書ガイドを書き終えると、もう夕方。
 おっととと、17:00にダ・ヴィンチのK本&ホラー大好き青年S口くんと、
「恋愛ホラー」特集の打ち合わせがあるのだ。しかし事務所は資料散乱のぐじゃぐ
じゃ状態。とうてい人間が複数名入れる状態ではないので、菊川駅近くの珈琲館で面
談。
 とはいうものの直前まで、bk1スペシャルと恐竜文学史と嶽本野ばらと伝奇入門
が脳内で渦巻いていたため、なかなか一読感涙の恋愛ホラーへと思考のスイッチを切
り替えられず困惑する。風邪で寒気がするというK本にまで「ヒガシさん……つかれ
てますねー」と同情される始末。
 それでも次第に思考のピントが合ってきた感じで、あーだこーだと質問に応えるう
ち……日本人の心性と怪談と、みたいなテーマでエッセイを寄稿することに。また
ひ〜とつ締切が増えた〜よ〜(笑)。
 20:00からテレビ朝日で「たけしの万物創世記」オンエア。「魔女狩り」につ
いて、特にありきたりな説明をしている箇所をピックアップされており赤面する。ラ
イトの具合でやたらと怪しげに映ってるし(笑)。しかしスタジオ立ち会いで見せて
もらったときより、イングラム関連の映像が倍増しており感心する。これが見られた
だけでもよしとせねば、うんうん。
 ……などと自分を慰めていたら、先日お会いした高遠弘美さんから「偶然、テレビ
でお姿拝見しました」というメールが届き、大いに冷や汗をかく。いやーこれだから
テレビは怖いよ、誰が観てるか分からないもんなー。とほほほほ。
 深夜にbk1サイトを見たら、すでにリニューアルされていた、のはいいが、更新
途中の時点の画面が反映されたためにチグハグなことに。あーみっともねー。相変わ
らず富士通のやることは〜(LOOXは良い出来なのに/笑)。お客さまには、でき
れば明日の午後から閲覧してほしいなり。
 なんだかみっともないこと続きの一日であったと反省する。


11月15日
 bk1で予定しているスプラッタパンク&鬼畜ホラー・スペシャルの件で、取材&
執筆をお願いする神無月マキナ@SCARED編集長と電話で打ち合わせ。
 そのあと速攻で文春文庫編集部のN島氏に電話、アポをとる。N島氏とは以前パー
ティで挨拶を交わしたことがあるそうだが、うっかり失念していて恐縮する。


11月16日
 SFマガジンのホラー時評のために、まだ手をつけていなかった新刊ホラーの山
を、だだだーっと一気に読みまくる。実に心和む、至福のひとときである(笑)。
 しかし今年の新刊は大半が長編というより中編程度の分量なので、さっさか読める
ぞ。内容にきっちり見合った枚数の場合は良いけれど、「水増しした短編」や「書き
込み不足の長編」――要するに欠陥商品を「中編」でござい、とばかり安直に本にす
るのだけはカンベンしてほしいものである。中編という形態は、実は本格ホラーに最
もフィットするスタイルなのではないか……と、海外の素晴らしい作例を鑑みるに思
わないでもないので、なおさら、である。せっかくホラーにより幅広い層の関心が向
いてきたところなだけに、大事にいってほしいものなのだが。いつまでも、続くと思
うな、ブームとオファー!
 こ〜の〜切羽詰まったときに(笑)学研雑誌七部の首脳陣――O田さん&K池さん
に呼び出されて、五反田の秋田料理屋で晩飯食いながら、打ち合わせ。秋田名物ハタ
ハタやキリタンポ鍋が美味でした。
 来年スタートする「伝奇」を謳う新シリーズの相談その他あれやこれや。席上、き
わめて重大な決定がなされてしまい、こっちがオタオタする(笑)。しかし……これ
はまた凄いことになりそうな……学研さん、やる気です。本題とは別に、クトゥルー
関連のムックを新たに刊行する話も唐突に浮上したので、そっち方面のファンの方は
お楽しみに!


11月17日
 朝まで、と言われていたSFマガジンのレビューを、なんとか昼前に送信。やれや
れ。


11月18日
 昨日来思わしくなかった体調がさらに下降気味で熱が出てきたため、大事をとって
池袋西武のホラー講座を休講にしてもらう。受講生の皆さん、急な予定変更ごめんな
さい。


11月19日
 朝日新聞社アエラムック『恐竜学がわかる。』のための恐竜文学史原稿を書き上げ
て送信。近代における「モンスター」の誕生(とりわけフランケンシュタインの怪物
!)と「恐竜」の誕生(発掘発見)が、実はパラレルであった! という、たぶん誰
もまだ言及したことのない大ネタを含んでおります。ホラー・ファンにもお愉しみい
ただけるものになっているのではないか、と思うので御注目あれ。
 担当のS木さんはひとりで40人(!)の寄稿者を相手にしているそうで同情す
る。プロフィールに載せる小生の顔写真とか、本文用の書影、参考図版とかが必要と
のことなので、スキャニングしてメールで送ってみる。
 ……たまには風邪で寝込むのも原稿がはかどってよいものである(複雑)。


11月20日
 2日ほど寝ていたらケロリンと復調してしまった。嗚呼なんてタフな私(笑)。
 手をつけて中断していた嶽本野ばら『ミシン』書評を書き上げて送信。おかげで、
久方ぶりに吉屋信子や森茉莉な世界に浸る。
 夜、山田正紀さんをスペシャル・ゲストにお迎えした「輝け! 第2回神保町ムー
ド歌謡祭」に、ちょこっとだけ出席。そそくさと数曲歌わせていただき、早々に会場
を後にする。途中、日下三蔵氏と怪しい相談など。


11月21日
 14:00から小学館スピリッツ編集部のH野氏と神保町で「くだん」狩りの打ち
合わせ。小生が提案した取材プランに沿って、きっちりリサーチ&アポ取りがなされ
ているのに非常に感心する。御当人は「肝心の剥製が×××ちゃってるそうで……」
と落胆の表情だが、いえいえ〜と〜んでもない、それは画期的な手がかりなのだよ!
 と大いに督励する(笑)。しかし、これだけ盛りだくさんの行程で1泊2日はかな
り強行軍かも。小生は毎度のことなので別にいいんだけどさ……。
 帰って大急ぎで「ダ・ヴィンチ」ホラー年間ベスト・アンケートを書き上げ送信。
 養老孟司さんに電話、風間賢二対談の承諾をいただく。そう、bk1の特別企画
『ザ・スタンド』刊行記念ひみつメルマガ』(仮称)の目玉企画である!
 ムーの「伝奇入門」連載用画像を、先にK池さんに送信しておく。原稿の中身は後
送だ(笑)。今回のネタである『唐宋伝奇集』を読みながら寝てしまう。


11月22日
 明け方から両国のデニーズで仕事。ムーの「伝奇入門」第2回を仕上げる。今回は
『唐宋伝奇集』のパート1。マニアな方向けには、鏡花の怪作「月夜遊女」と「飛天
夜叉」の比較検討あたりが眼目でしょうか。
 15:00前に半蔵門のドトールで神無月マキナさんと待ち合わせて、紀尾井町の
文藝春秋本社へ。スプラッターパンク・シリーズ担当のN島氏に取材。私はその後の
予定が押していたので、中座する。インタビューはマキナさんの心得た質問で、すい
すい進んだ模様。詳しくは12月上旬更新のbk1ホラーサイト「ブックルポ/スプ
ラッターパンクの鬼畜世界」を待て!
 そのあと学研とかを回って深夜帰宅。
11月23日
 今日は終日、事務所に腰を据えていられるのだが、取材前に片づけておかねばなら
ないことが山積。とにかくホラー大賞の応募原稿の残りを読む。ひたすら読む。
 昼飯がてら錦糸町へ出て、ヨドバシカメラ他で、明日からの取材に必要なものを物
色。
 戻って、せっせとホラー大賞の続き。深更に至って、ようやく一次通過作を確定す
る。長篇は低調、短篇はまずまず、か。カドカワの担当者に選考結果をFAXして、
コンビニで通過作プラスアルファを返送。


11月24日
 明け方、アエラムックのS木さんに「恐竜文学史」原稿用の書影本を発送するため
再びコンビニへ。しかし最近の宅急便は、深夜に持っていくと、近距離ならその日の
午後に届くのであるな。便利になったものじゃ。
 結局一睡もするヒマのないまま、羽田空港へ向かう。
 8:30にJALの出発ロビーで、小学館ビッグコミック・スピリッツ編集部のH
野くんと、今回の「くだん」狩りの主役である漫画家の柴田亜美さんと落ち合う。
『南国少年パプアくん』や『TKマン』の作者とは、これが初対面。ホイと手渡され
た航空券は……おいおい、スーパーシートかよ! さすがは小学館、というか天下の
スピリッツ編集部(笑)。
 1時間半ほどで大分空港に到着。離陸直後、取材の景気づけにいいや〜とばかり
(笑)加門七海『大江山幻鬼行』(ちなみにこのタイトル、「幻」の字は明らかに余
計。これではせっかくの語呂合わせがだいなしではないかっ!)を読み始めたら、着
陸までにちょうど読み終わってしまう。ふ〜ん「鬼車」ねえ……ま、感想はいずれど
こかで。
 そのままタクシーで一路、別府に向かう。別府駅前で、大分放送記者のT中氏と合
流。H野くんの大学の一年先輩、ということは小生の遙か後輩でもあるわけだ。今回
の取材では、事前のリサーチその他、すでにいろいろとお世話になっている。地元事
情や人脈に精通した案内役がいてくださるのは、心強いかぎりである(結局、T中氏
には翌日も休日返上でお世話になった。深謝!)。
 駅前の料理屋でボリュームたっぷりの昼食後、ホテル(東洋一の規模を誇る、らし
い杉乃井ホテル)に寄って荷物を預けてから、最初の目的地、霊泉寺へ。
 ここにはかつて、あの水木しげる御大が伝説の「くだん」の剥製を目撃したという
鶴見地獄があったのだが……いまは駐車場前の売店に「幸福たまご」の黄色い幟がは
ためく、何やら怪しげな(!?)観光寺院と化しているのだった。
 現在の所有者で不動産屋も経営する社長さんと面会。なんとこの方、物件の引き渡
し直後に、施設に残されていた「くだん」の剥製を焼却処分したのだという!
「あ〜あんなもの作り物だよ、作り物!」(いや、そんなことは先刻承知なんです
がぁ……)「それももうボロボロでねぇ、汚らしいから焼いちゃってくれ、と処分し
てもらったんだよ」(嗚呼!!!)
 寺院建設当時のアルバムを見せてもらったあと(残念ながら剥製は写っていなかっ
た)、境内を案内していただく。本堂の裏には今でも熱湯の沸き立つ「地獄」があ
る。裏山に埋もれていたのを改めて安置したという古びた五百羅漢との対比は、なか
なかに怪しい雰囲気。裏手への斜面にかけて、かつては「地獄めぐり」の施設があっ
たものらしい。(嗚呼ここに「くだん」が……)と湯煙ただよう境内を見下ろして、
ほのかな感慨に浸る。
 この日は他に、市役所や図書館などを回って撤収。恒例の「地元図書館チェック」
では、肝心の温泉関係や郷土史本にさしたる収穫がなかったものの、ふと手にとった
最新刊の別府観光ガイドの1ページに、地元郷土史家の御子息の記事と、氏が所蔵す
る戦前の別府各所を写した写真のコレクションを発見して驚喜。電話帳を繰ると……
あったあった! 早速、H野くんにアポ取りしてもらうと「面会OK」の返事。やっ
たね。
 夕食は名物の関サバ・関アジに舌鼓を打つが、小生、生ビール2杯でなぜか酔っぱ
らってしまう。久しぶりに飲んだからかいな。それとも寝不足のせい!? 大の妖怪好
きであるという柴田さんの質問に、あれこれお答えしていたはずなのだが、後半はど
うもイマイチ記憶がもーろー。何をしゃべりまくったことやら……(恐)。ふらふら
になってホテルへ戻り、ひとまず熟睡。


11月25日
 明け方近くに目を覚まして大浴場へ。新館の部屋から本館にある浴場まで迷路のよ
うな廊下を伝ってようやくたどりつく。ううむ、東洋一という謳い文句も伊達じゃな
いかも。
 こんな時間だというのに、けっこう風呂場が混み合っていてビックリ。露天風呂に
浸かって、白みかかった払暁の空をぼ〜と眺める。いや〜極楽極楽。
 ……と、そこでハタと気がついた。実はこの「くだん」狩り期間は、同文書院から
年明けに刊行予定で進めているホラー評論集の書き下ろし部分の構想をまとめる期間
でもあったのだ!(酔いが醒めてから思い出すヤツ……)
 部屋に戻って、湯煙たなびく山肌が明けそめてゆく光景を眺めながら、日本ホラー
の来し方行く末に、思いを馳せる。
 9:00にロビーに集合。見晴らしの良いレストランで朝食をとりながら、本日の
作戦会議。地元の昔に詳しい古老がお住まいと聞いたホテル近くの酒店に電話を入れ
ると、応対に出られた老婦人の口から、さりげに「くだん」という言葉が! ビン
ゴぉ!! さらに、やはり事情通と教えられた地元ホテルの社長さんに電話すると、
「それなら旧経営者の親族のKさんが知ってるはず」と、あっさり連絡先を教えてく
ださったではないか!!!
 一気に展望が開けたのは大ラッキーなれど、問題は残り時間。果たして一日で追求
しきれるのか……結果から言えば、実にドラマチックな紆余曲折を経て私たちは、一
度は空の彼方へ煙と化して消えたかと思われた「くだん」の剥製の尻尾に肉迫したの
だが……その顛末を縷々ここに記していると、年末進行でニコヤカに殺気だつ各社の
編集者氏に袋叩きにされかねないのであーる(笑)。
 というわけで、とりあえずは12月18日に発売されるビッグコミック・スピリッ
ツ増刊「山田1号」(なんちゅータイトル!)に掲載される柴田亜美さんの妖怪探訪
漫画に御注目ください。アッと驚くこと請け合いである。
 小生のほうは、元少女小説家で現在はプライベート・プレスを営む(嘘)高瀬美恵
という人が冬のコミケで販売する予定の『くだんちゃんの本』(これまたなんちゅー
タイトル!)に、とりあえず寄稿する予定。
 なお同書には、他にもアニメーション演出家の角銅博之さんとか漫画家のイダタツ
ヒコ&なちさん御夫妻とかぬいぐるみ兼童話作家の倉阪ミーコといった豪華メンバー
が寄稿しているそうなので愉しみである。もちろん編集発行人も、入魂の大傑作くだ
んホラーを鋭意執筆中だそうなので、期待は高まるばかり。「くだん」ファンはコミ
ケに走れ!


11月26日
 予想以上にハードとなった取材の疲れで泥のように熟睡後、午後からのそのそ起き
出して、所用で池袋へ。たらたら買い物して、よろよろ帰宅。
 ダ・ヴィンチの恋愛ホラー特集のリストを神無月マキナさんに送付して、以後は同
文書院の書き下ろしに専念。


11月27日
 書き下ろしホラー評論、ここ数日でほぼメドは立ったものの、いざ書き出すと、な
かなか難航。う〜ん、本当に年明けに出せるのかな〜(弱気)。
 昼メシがてら、秋葉原へ。TゾーンでLOOXの標準バッテリを売っていたので購
入。これで6時間くらいは外に出ずっぱりでも仕事ができるぞよ(笑)。
 角川ホラーの箱と幻想文学59号の箱(ラテアメ特集、予想に反して売れ行き好調
につき、急遽ウチの在庫まで出荷することになったのだ。早く買わないとーなくなる
ぞー/笑)を発送するため、宅急便に集荷に来てもらう。電話して1時間以内に来
る、というスピーディさ。これじゃ他の宅配業者や郵便局はとても太刀打ちできませ
んなー。
 でもって、集荷に来てくれた宅急便の人。送付状を見て「あれ!? 幻想文学のヒガ
シさんて……あのぅ、もしかしてムーで、かごめかごめの謎とか書いてらっしゃる方
じゃないですか?」
 ひょええええ〜、よくぞ御存知で(笑)。聞けば、怪しい話が大好きなのだとか。
いやはやどうも、御贔屓にありがとうございます。
 夜、小学館のS原さんから『ミシン』書評のゲラが出たと連絡あり。FAXで送っ
てもらい即返。


11月28日
 13:30から飯田橋の角川書店会議室で、「本の旅人」に掲載されるホラー大賞
予備選委員鼎談に出席。あとの出席者2名は、大森望&茶木則雄両氏という、なにや
ら「ぼっけえ」つながりな顔ぶれ(笑)。
 このメンツでは、小生の役まわりは必然的に超自然原理主義的なものにならざるを
えないのは明白なので(笑)、終始そのスタンスにて発言する。
 終わってから五反田に回り、獅子堂@ムーと数方庭原稿の写真打ち合わせ。向かい
のブックオフに寄ってサッサと帰宅。書き下ろしを続行。


11月29日
 昼前から菊川駅前ドトールの禁煙席に陣取って仕事していると、携帯が。スピリッ
ツ編集部のH野くんから「今日の午後2時にアポとれました」とのこと。「おッ、行
く行く〜」と答えて、そそくさと取材の準備を整える。
 別府取材のときに判明した、かつての「八幡地獄」経営者のお嬢さま(東京在住、
というか、ウチの事務所からは睫眉の間!)のお宅へうかがえることになったのだ。
収穫は……予想以上のものだった! 仰天ものの写真をゲットぉぉぉ〜。
 おっととと、16:00に京都から上京したGくんが事務所見学(?)に来ると
言っていたのに、もう時間を過ぎちゃってるよ、と慌てて携帯に電話を入れると、緑
一丁目の交差点付近で迷っている由(笑)。
 ちょうど帰り道だったので迎えに行き、そのまま近所のジョナサンへ有無を言わさ
ず連行する。現在事務所は資料が散乱、というか七転八倒して、とてもじゃないが他
人様にお越しいただける状態にはないのだった。すまんすまん。お土産に京都名物お
たべの皮で作られた新製品のゴマ団子なるものを頂戴し(美味でした)、お返しに、
今日届いたばかりのゾンビ本を謹呈する。
 途中K山も加わって、早めの晩飯を食いながら、昨今のホラー事情について忌憚の
ない意見交換。あとは中島みゆき話とか。これからシアターコクーンの「夜会」にお
もむくというGくんを見送り、戻って仕事。
 ちなみにそのゾンビ本とは『ゾンビ手帖 Notebook of the Living Dead』(DA
RUMA PLANNING発行/本体2000円)と題された400頁を越える大
力作。全篇の過半を占める「ゾンビ映画不完全ガイド」は、A級からZ級まで確認し
えるかぎりの内外のゾンビ映画について、データのみならずいちいちコメントまで加
えた鬼のような労作。まったくもって御苦労さまでした! 他に幻の「『死霊のえじ
き』オリジナル脚本」とか「キョンシー映画と香港ゾンビ映画」とか、為になる死
霊、じゃなかった資料が満載。小生は「ラザロの裔――生ける死者たちの文学誌」な
る一文を寄稿しております。
 同書は今のところ取次〜書店ルートを通していないようで、店頭販売は中野ブロー
ドウェイの「タコシェ」のみの模様。入手希望の方は下記のサイトへアクセスを! 
絶対に買って損はないはず。
 http://www.rr.iij4u.or.jp/~django/


11月30日
 昼食後、いつものシュベーネで仕事していたら、いつものK本@ダ・ヴィンチから
電話。今度は変わった装幀本の企画だそうな。事務所に戻って書庫を見てみる、と答
える。
 しかしホラー方面の最近の出版物で、凝った装幀、仕掛けのある装幀ってのは意外
に少ないもんだよなぁ、と実感。その原因はおそらく、採算点ぎりぎりでの刊行を宿
命づけられているからでありませうな。要するに、装幀に凝るような余裕はないって
ことね、世知辛い話ですが。
「ムー」の数方庭〜塵輪伝説原稿を一気呵成に仕上げる……つもりが、ちょいと追加
で調べあげなきゃいけない課題が出てきて、思ったより時間がかかってしまう。ぜい
ぜい。