[7月1日]
 夕方からミーコを連れてイースト・プレスChuChu Colorsシリーズの著者を囲む会に参加。場所は千駄ケ谷のレストラン、参加者は40名くらいでこぢんまりとしたパーティだったのだが、参加者は著者が島村洋子、久美沙織、森奈津子、横森理香、その他の作家が西澤保彦、岩井志麻子、瀬名秀明、津原泰水、牧野修、田中啓文、花井愛子、樹川さとみ、南智子などという濃いメンバー。森奈津子嬢は「遠方から男を呼び寄せる魔性の女」と呼ばれてました。フカサワマッキーの司会のもと、全員がひと言ずつ挨拶。二次会も行くつもりだったのだが、なんとなくはぐれてしまったとたんに調子が芳しくなくなったので今後に備えてパスして帰宅。では、おなじみのミーコです。
 黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。バッグから出たら西澤のおじちゃんがいたのであそんでもらいました。きれいなおねえさんたちにもかわいがっていただきました。それから、会場にきてた小学一年生の女の子にとられそうになりましたが、クラニーが引きはなしてくれました。おしまい。


[7月2日]
 三時から三田のカフェで秘密結社「鬼百合の会」の第一回会合。ミーコと寝たきり少女ウサギのアリスなどを連れて出席する。八人の貸し切りで、野間美由紀、森奈津子、ひかわ玲子、図子慧、西澤保彦、牧野修、江下雅之というメンバー。紅茶の専門店で百合系のお話のはずだったのだが、一次会はややおとなしめ(でも薄くはない)。五時半に渋谷に移動して二次会。ここから鯨統一郎、すがやみつる、松木美紀の三名が合流。酒が回るにつれ、一次会のメンバーを中心に各種カミングアウトを含めだんだん話が濃くなっていく。ことに西澤さんの話には感銘を受けた。なぜか肩の荷が降りたような気がする(笑)。三次会はカラオケ、野間・西澤・図子・松木・鯨・牧野が参加。鯨さんは苦手なので一曲も歌わないという自己申告だったのだが、いざ始まったら立ってフリ付き、うそつきくじらと呼ばれてました。「ゆきずり」などをデュエット。西澤さんはアニソンを封印、三善英史とかベン・キングとか幅広かった。なんとなく私が〈邪悪〉、牧野さんが〈怪しい〉という評価。「C-girl」を歌ったら「死死死と聞こえます」と言われる人は珍しいかも。あんなにさわやかな曲なのに。というわけで、三時前に解散、お疲れさまでした。


[7月3日]
 今月はいきなり三連投、ミーコを連れて『山尾悠子作品集成』刊行祝賀会に出席。六時半から東京ステーションホテル。変なホテルだなと思いつつ会場に向かったのだが、どうも裏口から入ってしまったらしい。二日前から牧野さんと「一緒にご挨拶に行きましょう」という周到な打ち合わせをしていたけれども、会場に一番乗りだったため私が先にご挨拶。ミーコをほめていただきました。わーいわーい、うれしいにゃ(モード混乱)。ここから先は山尾さんのインタビューと新作も載っている「幻想文学」58号〈女性ファンタジスト2000〉に掲載された牧野さんの爆笑エッセイを読むとなお面白いのですが(ちなみに、同誌掲載のゲオルク・ハイムの短篇は傑作)、ついに牧野修が山尾悠子に対面いたしました。打ち合わせとは違って紹介したのは私、それにしても名刺くらいすぐ取り出せるように準備しておけばいいのに。しかも、やっと取り出したのがイーストプレスのパーティで使った裏に落書きのある名刺、まるでコントを見ているかのようで段取りが悪すぎる。もっとも、私も大森さんの紹介で発起人でもある小松左京さんにご挨拶したのだが「誕生日が同じでして」とか変なことを口走っていたような気がする。出席者は四十人弱と小規模ながら、SF・幻想文学を中心に伝説の人を含む濃いメンバー。堀晃さんとも初対面。久しぶりは高原英理・佐藤弓生ご夫妻など。一次会は死ぬまでにこういう本を出したいなと思う『山尾悠子作品集成』(国書刊行会)を受け取って解散、かなりの人々が新宿のバーに移動。ここで伝説のまりのるうにいさんにご挨拶、ミーコをかわいがっていただく。うれしいにゃ。二次会の締めは、お疲れぎみのI崎編集長に代わり早稲田の哲学科から国書に入社して初仕事が山尾悠子さんというS嬢の一本締め、水を向けたのは私だがまさかほんとにやるとは思わなかった。元気があってよろしい。十数名が喫茶店に移動して三次会、せっかく山尾さんの前の席が空いてるのにいちばん端の席にコソコソとゴキブリのように隠れる牧野修。つくづくシャイな人である。まあ私も人のことは言えないので、二人で日の当たらない席に陣取りハイブロウな文学論を語り合った……ことにしておこう。というわけで、本日もタクシーで帰宅。


[7月4日]
 その後の読了は二冊。
 貫井徳郎『妖奇切断譜』(講談社ノベルス)は足フェチ男が秀逸でトリックも好み。歴史ミステリはさほどツボではないのだが、これは例外で個人的にはベストテン入り確実。新刊の『依存』を読む前に未読だったシリーズ第一作・西澤保彦『彼女が死んだ夜』(角川文庫)を読了。うーん、この出だしでこんなに暗くなるとは(笑)。早く『依存』まで到達せねば。それにしても、高瀬千帆と高瀬美恵はキャラが違う……って当たり前か。
[7月5日]
 久々に平穏な一日。迷っていても仕方がないから国内ミステリーのアンケートを送付。白川静『字統』(平凡社)を一応全部めくって怖い漢字に附箋を付け終わる。見た瞬間に吐き気を催すような字もありますな。


[7月6日]
 神保町で泡坂妻夫『奇術探偵曾我佳城全集』(講談社)などバッグ一杯分の本を買ったあと、五時から講談社のA元さんと打ち合わせ、「メフィスト」の連載のゲラを戻し、講談社ノベルス第2弾『四重奏Quartet』のプロットを渡す。幸い手応えを感じていただいたし、私も期するところはあるのだが、完成までにハードルが百、ほかにもプロットを作らなければいけない作品がいくつかあったりする。いづもそばに河岸を変え、八時過ぎまでそこはかとなく邪悪に歓談。


[7月7日]
 たびたびしつれいします。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。きょうはミーコの2回めのお誕生日なので(わーい)、ドルバッキー姉妹さんと池袋のナンジャタウンへあそびにいきました。アトラクションを5つほどまわってあそびました。ドルバッキー妹さんの獅子舞のボール入れがとってもおかしかったです。クラニーがナジャミーのぬいぐるみを買ってくれました。そのあと西口のパセラに移動し、四時間カラオケをしました。途中からなぜか夏しばりになりました。クラニーがはじめて歌ったのは「僕は流しの運転手」「背広姿の渡り鳥」「誘惑光線、クラッ!」「ジャニスの祈り」「うぐいすだにミュージックホール」「老人と子供のポルカ」「ラムのラブソング」などでした。猫キャンディーズのれんしゅうもしました。みなさま、おつかれさまでした。ししまい、じゃなくておしまい。


[7月8日]
 また三連投でミーコとナジャミーを連れて「高瀬美恵を励ます会@引っ越し記念浅草蕎麦ツアー」に参加。発案者は私なのだが、柴尾英令さんが幹事を買って出てくれて急遽決行。かなり不可解な構成の八人が参加(櫻井管理人も)。ピンクのクジラのぬいぐるみを買ったあと四時に雷門に集合、まず並木の薮に向かう。つゆは独特だがもりはいたって上品。いろいろとコントラストが面白い隅田川公園を散策してから五時にメインの蕎上人へ行ったのだが、あいにく臨時休業(いずれリベンジを予定)。やむなく吾妻橋やぶそばに方向転換、蕎麦湯を含めて胡麻汁そばが美味だった。ツアーはここで終了、ビアホールで三時間ほど飲む。主賓が最年少というメンバーなので「漫談の牧伸二低能の魅力」がすぐ通じてしまう。なお、そちらの能力のあるご婦人によると、私のオーラは淡いパステルオレンジで邪悪ではないそうだ。そうであろう。そのあとは今日もカラオケ、青江三奈追悼の「伊勢佐木町ブルース」など。最後に十年ぶりに「夜の銀狐」を歌ったら妙にウケた。主賓はいずれ「高瀬デラノーチェ」というペンネームを使うそうです。風邪気味で主賓が帰ったあともさらに五人で二軒目、一時に終了して柴尾さん、けーむらさんとタクシーで帰宅。ああ今日も四時間やってしまった。


[7月9日]
 読了本は七冊あるので駆け足で。木原浩勝・中山市朗『新耳袋 第五夜』(メディアファクトリー)はライヴで聞いた話も多いけれども、またいろいろとアイデアの芽を頂戴した。私の小説に卵を割るシーンが登場したら『新耳袋 第五夜』の影響だとお考えください。怖かったのは十三、十四、二十三話かな。ところで九十九話に「消た」という誤植があるのだが、再校までなんともなくていつのまにか「え」が消えていたりしたら怖いなとふと思った。西澤保彦『麦酒の家の冒険』(講談社文庫)は終盤悪酔いしそうな展開になるのかと思いきや、わりとすっきり終わってしまった(やや残念そう)。このタイプのパズラーは絶対書けません。小沼丹『小さな手袋』(講談社文芸文庫)はただの枯れたエッセイ集。ときどき発作的にど渋いものを読みたくなるのです。宮田昇『戦後「翻訳」風雲録』(本の雑誌社)は面白いんだけど山本夏彦の文章で読みたかった(わがまま)。恩田侑布子『イワンの馬鹿の恋』、山本左門『殉教』、池田澄子『ゆく船』はふらんす堂から出た第1・2・3句集、これは次の俳句時評で。

[7月10日]
 中篇は意外なほど順調に進んでいる。このペースなら今月中に渡せるかも。ただ、長篇B改めAはまだ半分に達せず。今月中に長篇Bを本格始動してC・D・Eのプロットに手を回したいのだが。
 クイックルワイパーなるものを購入。そうか、世の中にはこんな便利なものがあったのか。もっと早く買えばよかった。


[7月11日]
 西澤保彦『依存』(幻冬舎)を読了。個人的には去年の「夢幻巡礼」に続いてベスト入り確実の力作。漢字二文字のタイトルをもう一つ考えるとしたら「反復」。日常の謎について仮説が積んでは崩されるパートはデクスターばりでこれだけでもポイントが高いけれども、もう一つの流れと響き合い、なおかつその仮説全体が森の役目を果たしている。さらに葉と交感する小さな茂みがいくつかあり、そこでも仮説がざわめいている。全体に音楽的な構成で、デジタルとアナログの調和ぶりが好ましい。二つの流れが合流するあたりのサスペンス、および話全体の根の暗さ(笑)、いずれもツボで堪能しました。


[7月12日]
 驚いたことに中篇の第一稿が上がってしまった。まさか実質半月で150枚の作品が書けるとは。さすがにノッて執筆できる作品だと進み具合が違うな。ホラーですが内容は思い切り変で、ひそかにバカミス・ベストテン入りを狙ってるんですけど(笑)。ゆっくり推敲して今月中に渡せそう。というわけで、ずっと気になっていた蕎麦屋を二軒回って祝杯。三河島の禅味十割蕎麦は非常に辺鄙なところにある穴場。田舎系で好みは分かれるかも。


[7月13日]
 反動が出て不調につき執筆はお休み、溜まってきたゲラと推敲に専念。
 読了本は二冊。加門七海『呪の血脈』(角川春樹事務所)はとても端正な伝奇ホラー。ただ、終盤邪悪に暴走し何の救いもなく世界が崩壊して終わる話が好みなので、そのあたりがちょっとツボからずれたかな。民俗学より缶蹴りのほうが印象に残る。泉麻人『僕の昭和歌謡史』(講談社)は一気読みだが、ボーナストラックではもっとマニアックに暴走してほしかった。キャンディーズの話が出たら当然ピーマンとかベルベッツとか以下略。


[7月14日]
 翻訳と長篇Aを再開。
 浅羽通明『大学講義 野望としての教養』(時事通信社)を読了。あとがきに『活字狂想曲』の出版経緯についての記述が見えます。ミステリとSFからリンクされている日記なので、前者は第九講(第十講はちょっと強引)、後者は第十四講の後半が要チェックとまずそちらを紹介(ホラーな人には第六・七講)。それ以外では第十講の人権に関する部分がわりと基本かも。本題に関しては、この本を読んでまじめに物を考える鬱陶しそうな読者層には該当していないためパスということで。


[7月15〜16日]
 ロフトプラスワンの新耳袋トークライヴ(by木原浩勝・中山市朗)へ。今回は整理券も出る盛況ぶり。入口でライターの大地洋子さんにバッタリ会ったので、その友人たちとともに客席と化した控室で観る。証言者がゲスト登板してN病院の話にピリオドが打たれたのは収穫。実は隣町に住んでいたことがあり土地鑑があるのだが、微妙に生活圏から外れていたのは幸いだった。なお、都市伝説として否定された部分を思い切りアレンジして現在執筆中の長篇に活かす予定。その後は音声ビデオ、「呪怨」の清水崇監督のゲスト出演などと続き、おとなしめに収束するのかと思いきや、終盤に大ネタが連続して睡魔が失せる。大阪の宇宙人を筆頭に怪談以外の収穫もあり。そう言えば、目下ゲラ校正中の〈田舎の事件〉シリーズ第2弾『不可解な事件』(幻冬舎文庫十月刊)にちらっと木星人と金星人が出てくるし、アイデアの芽を折にふれて頂戴している……という話を『コミック新耳袋』(メディアファクトリー)掲載のエッセイに書きました。もう一つ、『新耳袋』第四夜の新しい帯にも登板しています。では、秘書の登場です。
 おあつうございます。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。クラニーが歌舞伎町のスーパーでおともだちを買ってくれました。三毛猫のミミちゃんです。ミーコよりひとまわりちっちゃいけど、目がいっしょでかわいいんだよ。わーい。ミーコはずっと起きておはなしを聞いてました。大地さんがほんとにこわがるのでなぐさめてました。おしまい。
 その後はいつものメンバーで喫茶店、八時ごろ帰宅して爆睡。
 読了本は二冊。森奈津子『西城秀樹のおかげです』(イーストプレス)は日本変態大賞受賞にふさわしい作品集(笑)。バナナはわりとふつうだからテーブルのほうが気持ちよさそう……という方向に流れるとまずいので、ある意味では近代文学を笑殺する表題作と「天国発ゴミ箱行き」を評価したい、とあわてて軌道を修正しておこう。同じセピア色のインク(私の『妖かし語り』もそうですが)で印刷されているのがマグダ・レヴェツ・アレクサンダー『塔の思想 ヨーロッパ文明の鍵』(河出書房新社)。無駄な記述のない美学エッセイで収穫だった。
[7月17日]
 中篇の訂正箇所を直して再プリントアウト、長篇Aに戻る。いろいろ並行していたとはいえ、やっと半分。視点が固定された幻想ホラーは捗らないな。次の長篇ホラーは多視点に戻すことにしよう。


[7月18日]
 中篇を仕上げ、各種プロットに手をつける。いろいろ資料も読まねばならないのだが。
「小説すばる」8月号が届きました。ホラーと幻想特集に「匣」という40枚の短篇を寄稿しています。白百合城方面でかそけき話題になっていた××の蛇が発想の源なのですが、どう化けたかご覧いただければ幸いです。


[7月19日]
 風邪で発熱、寝たり起きたりしながら静養。
 南條竹則『恐怖の黄金時代−英国怪奇小説の巨匠たち』(集英社新書)を読了。怪奇党は一家に一冊。四大巨匠をはじめメイ・シンクレアやウェイクフィールドにまで一章が割かれており、巻末にはM・R・ジェイムズの未訳の短篇まで収録されている。肩の力が抜けた記述の中にさらっと高度な考察が含まれる。このあたりは大人[たいじん]の風格でせう。


[7月20日]
 やっと熱が下がったものの調子悪し。エアコンが二基になったので喜んで両方つけてたら覿面に体調を崩してしまった。今後は注意しよう。
「問題小説」8月号が届きました。「アクアリウム」という30枚の短篇を寄稿しています。得意の不条理怪談なのですが、読者はどう思うのかという気がしないでもない。さらに、「秘書は黒猫」というタイトルのグラビアにも登板、エッセイを寄せています。こちらは秘書から。
 黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。書斎のほうのお写真にはママのマイコさんもうつってるよ。クラニーはいつもの営業用サングラスじゃなくてふつうの感じなんですが、ミーコはカメラ目線です。にゃお、エッセイの「M88星雲」は「M38星雲」のまちがいです。えっとそれから、「小説新潮」のグラビアにも出ました。シマコさんのおつむにのってます。おかげさまでミーコはグラビアクイーンになりました。うるうる。
 さて、担当のK地さんから『屍船』(徳間書店八月刊)の目次と扉のラフが届きました。凝った造本になりそうで楽しみです。牧野修さんの『性器の病』じゃなくて『病の世紀』と同時発売の予定。


[7月21日]
 五時より神保町で祥伝社のK藤さん、Y田さんと打ち合わせ。書き下ろし中篇の原稿を渡してほっとひと息……のはずだったのだが、ノベルスの加筆リニューアル案を示され、結局楽にならず(泣)。最初は意図的に用いた邪悪なコード自体にダメを出されているのかと思い憮然としていたのだが、よくよく話を聞いてみるとそうではなかったし、いちおう解決案を思いついたので応じる。自分がエンターテインメントのプロ作家をやっているのは何かの間違いのような気がしてきたため、風呂に入って休養。


[7月22日]
 長篇Aに戻るが、自分には荷が重いものを書いているようにも感じられる。ややモードが下降気味。


[7月23日]
 その後の読了本は九冊。ちょいと必要もあって今月の後半は〈後期筒井康隆強調月間〉、実は80年代以降は『ロートレック荘事件』くらいしか読んでいなかったのだ。とりあえず『鍵』(角川ホラー文庫)、『邪眼鳥』(新潮文庫)、『悪と異端者』(中公文庫)を読了。まだまだたくさんあるな。薄い本は好みなのだが、J・G・バラード『殺す』(東京創元社)はいくらなんでも薄すぎる。倍の分量にまで書きこめばホラーミステリの傑作になったのに。寮美千子『ノスタルギガンテス』『星兎』(ともにパロル舎)では前者。硬質なイメージが秀逸で、救いがなくて癒されるファンタジーの見本のような作品。森青花『BH85』(新潮社)は文体が肌に合うので一気読み。猫のラムちゃんがツボ。ちなみに私は83がという話は誰も聞いてませんかそうですか。新井素子『くますけと一緒に』(新潮文庫)の女の子に感情移入しながら読んでいる四十路の怪奇小説家というのは十分不気味であろう。話はかなり暗いです。ちなみに、ぬいぐるみとお話している人物が実はおやじだったという叙述トリックを思いついたのだが、これだけは書くまい。北森鴻『パンドラ’Sボックス』(カッパノベルス)は私生活エッセイと短篇をカップリングした面白い構成。短篇では「仮面の遺書」のトリックがちょっと悔しかったかも。


[7月24日]
 中篇書き下ろしはすんなり通りそうでほっとひと息。やはり短いほうが向いてるのかも。長篇リニューアルは物語内の時間を一日間延ばすのが眼目なのだが、当然のことながら前後も動くので結構時間がかかりそう。
 Fantasy Centreから小包が届く。怪奇党ご用達の小出版社と言えばAsh-Tree Press、今回もウェイクフィールドの単行本未収録短篇集『Reunion at Dawn』で気を吐いているけれども、このところ元気がいいのはMidnight House。ディック・ドノヴァンの短篇集ならまだしも、W.C.Morrowなんて聞いたことがない。ビアスの同時代人でいまや完璧に忘れられている怪奇小説家のようだ。どちらも限定450部、ほとんどけもの道の世界。
 大相撲名古屋場所のトピックは、何と言っても星誕期の初日からの十五連敗でせう。本人は「どこも悪いところはない」と言い続けていたのだが、それってただ単に衰えただけではないだろうか。


[7月25日]
 夢の中で秀逸なトリックを思いつき、興奮して目が覚める。トラックの幌の裏がスクリーンになっており、拉致した人物に延々と桜吹雪を見せるというもの。うーん、シュールではあるのだが。仕方なく朝の七時から仕事。仮眠中、またしても夢に驚いて覚醒。競馬の騎手になりミーコに乗って楽勝かと思いきや、後ろから猛然と土佐ノ海が追い込んできてぎょっとしたのだ。どんどんくだらなくなっていくな。


[7月26日]
 ミーコを連れて御徒町、七時よりパセラで洋楽カラオケ。その前に安いという噂のユニクロへ寄ってみたのだが、黒い服が少なくて期待外れ。真夏でも真っ黒な服を着る客のことを考えて……たら商売にならないか。カラオケは永久幹事中嶋千裕、櫻井管理人、ブラニー、けーむら、比呂などのメンバー。私は最新の持ち歌が「コール・ミー」だったりするので、「恋の売り込み」「煙が目にしみる」「悲しき天使」「悲しき街角」「悲しき雨音」などの独自路線。次の課題曲は「悲しき願い」か。十二時まで五時間歌って解散。堪能したものの、洋楽に縛られると演歌やムード歌謡も猛然と歌いたくなるため、駅から「恋あざみ」を口ずさみながら帰宅する。では、秘書より。
 黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。ミーコはM38星雲うまれなので英語はよくわかりませんが、いっしょうけんめいおどりました。またあそんでね。おしまい。


[7月27日]
 来週末は横浜のSF大会に参加するのだが(実は初参加)、やはり二つも企画に出なければならないらしい。初日(8/5)は18時からひかわ玲子さんのファンタジー企画、二日目は昼の12時半から大森さんのジャンル対抗〈最強の悪者〉決定戦に出ます。どちらも牧野さんとセットだから控えめに漫才でもやればいいのだろう。というわけで、あわてて宿を予約。なぜ伊勢佐木町に固執しているのかという気がしないでもないが。
 さて、「週刊小説」8/11号が届きました。ホラー特集に「古着」という40枚の短篇を寄稿しています。古臭い呪物怪談を現代風にアレンジしたものは今後も折にふれて書くつもりです。筆者の近況にも出ておりますが、相変わらず写真と内容にギャップが……。


[7月28〜29日]
 長篇リニューアルのためのデータを作成したあと、ミーコとミミを連れて歌舞伎町ロフトプラスワンの菊地秀行トークライヴへ。久々に座敷に座ったような気がする。座敷メンバーは高瀬美恵、神月摩由璃、柴尾英令、角銅夫妻、けーむらなど。今回はユニヴァーサル特集、「女ドラキュラ」「ミイラの手」「ロンドンの人狼」「狼男の殺人」「フランケンシュタインの復活」などが上映される。周りは睡魔に襲われていたけれども、私は仮眠をとってから臨んだので全部観ました。ストーリー、映像ともに凝っている「ロンドンの人狼」がベストかな。「フランケンシュタイン」のカットシーンは初めて観たのだが、あれでカットされるのなら少女を何人も惨殺している私はどうなるのかという気もする。アシスタントの飯野さんは遅刻したものの途中から本調子、「ポリシーの日本語訳は?」以下の展開が本日のハイライト(書けない)。終了後、菊地さんを交え十数人で上高地。ここでも飯野パワーは衰えず。七時半ごろ帰宅。


[7月30日]
 読了本は八冊。『カサブランカ革命』『カサブランカ帝国』(ともにイーストプレス)は本格百合小説アンソロジー。百合幻想ホラーをふつふつと書きたくなってきたのですが、男が女名前で寄稿することはできないのだろうか。倉阪ミーコとか西澤ウサコとか(笑)。後期筒井康隆強調月間は『串刺し教授』『家族場面』(新潮文庫)、『ダンヌンツィオに夢中』(中公文庫)、なんとなくエッセイの切り口は見つかったのであっけなく終了。来週はSF大会に備えてファンタジー強調週間の予定(泥縄)。菊地秀行『妖獣都市 魔獣児』(徳間書店)、『エイリアン蒼血魔城』(ソノラマ文庫)、『紅秘宝団』(祥伝社)を読了。近未来の荒川・台東区が魔界と化して独立しているという設定なら楽しく書けそうな気もするが、私が書いたら二番煎じの汚名を着たうえちっとも売れないようにも思われる。
[7月31日]
 長篇Aが300枚をクリア。あと150枚くらいで終わるかな? とにかく会話が少ない小説はつらい。ホドロフスキーなんて意識するんじゃなかったかも。
 今月の執筆枚数は250枚。執筆稼働日数25日、一日平均執筆枚数は10.0枚でした。涼しくなったら小説をセーブして翻訳をなんとかしようと思ってるんですが……。