[9月1日]
 そこはかとなく必要あって、ジェームズ・ハーバート『鼠』(サンケイ出版、絶版)を読了。75年の初版だから「SF長編小説」と銘打たれている。内容はナメクジ物やゴキブリ物に先立つモダンホラー。
 クラシック関係の読書も続行中。読了したのは、梅津時比古『音と言葉のソナタ』、大束省三『北欧音楽入門』、久保田慶一『モーツァルトに消えた音楽家たち』、長木誠司『第三帝国と音楽家たち』(以上、音楽之友社)、中堂高志『クラシック作曲家あらかると』(三省堂選書)、山本茂『神童』(文藝春秋)の六冊。梅津氏はなかなかの名文家です。山本氏はボクシング畑で有名なノンフィクション作家、なるほどこんな残酷な人生もあるのかと『神童』を読んでしみじみ。


[9月2日]
 長篇Aが400枚をクリア。それにしても、この小説の作者はクスリでもやってるんじゃないかと思われるのではなかろうか。うーん。


[9月3日]
 その後の読了本は、鎌田敏夫『うしろのしょうめんだあれ』、松尾未来『ばね足男が夜来る』(以上、ハルキ・ホラー文庫)、『ゆきどまり』(祥伝社文庫)の三冊。『うしろのしょうめんだあれ』はスーパーナチュラルの要素がデジタルなのでホラーファンは肩透かしかも。ただ、ホラー・ミステリーとしては構成・細部ともに意外に凝っています。
ゲラが二冊になったのでしばらく読書量が減りそうですが、今月は品切モダンホラー強調月間の予定。
[9月4日]
 二時より東京創元社で『淑やかな悪夢−英米女流怪談集』の巻末座談会。共編訳者の南條竹則、西崎憲両氏、版元のH谷川さんとM原さんが参加。この三人の座談会は「幻想文学」37号以来だが、予想どおり私が最も寡黙だった。SF大会では言及を見合わせたセオドア・フランシス・ポウイス(ジョン・クーパー・ポウイスの弟)など、二時間ほど濃い話が続く。最後に配列の相談、作者五十音順を提案して並べてみたところ信じられないほどうまくいった。収録は本邦初訳多数の12篇(私の担当は5篇)、発売は十月二十日の予定。いちばん有名なのはシンシア・アスキスかメイ・シンクレアかというラインナップです。
 今日は掛け持ち。五時より神保町で白泉社のM浦さん、元廣済堂出版のS宮さんと打ち合わせ。S宮さんの編集参加で年内に文芸部門を立ち上げるということで、お話をうかがう……だけのつもりだったのだが、なぜか長篇書き下ろしのタイトルとヒロインの名前まで決まってしまう。うーん。とにかく、まず今年のことを考えよう。
 その後は久々に書店回り、いつ読むかわからないシェリダン・レ・ファニュ『墓地に建つ館』(河出書房新社)などを購入。やぶ仙で好物の三段重ねせいろ(胡麻、青海苔、とろろ)を食して八時過ぎに帰宅。


[9月5日]
 とりあえず『不可解な事件』(幻冬舎文庫)のゲラを仕上げる。自分で書いた小説の再校ゲラなのに折にふれて爆笑。ただ、ちょっと下ネタが多いかも。その後は長篇Aを進め、少し間があいてしまった長篇Bに移り、さらに連載の作中作に戻る。翻訳も中腰くらい入れないといけないし、相変わらず脳を三つくれ状態。
 南條竹則『あくび猫』(文藝春秋)を読了。登場人物の半分以上と面識がある(笑)。これはウロボロスよりそのまんまの小説で、カペル君とか嘘臭いキャラですけど実物も同じです。「別冊文藝春秋」連載時には私もちらっと出ていたのですが、カット分に回ってしまったのは残念。


[9月6日]
 今週二つ目のアンケートを送ったあと、「幻想文学」の俳句時評の下書き。『現代川柳の精鋭たち 28人集二八〇〇句』(北宋社)から十句選ぶのは大変だった。ノーギャラなのに。俳句の連作もやらなきゃいけないのだが、単独のものではなく、連載小説の一作中作の中に俳句の連作が含まれるのである。我ながら効率の悪い仕事ぶりだ。
 図書館本は出版関係の棚に移動、ラート=ヴェーグ・イシュトヴァーン『書物の喜劇』(筑摩書房)、『日本の小出版』(柘植書房)、小田光雄『ブックオフと出版業界』(ぱる出版)、櫻井秀勲『出版界・表通り裏通り』(リブリオ出版)、藤脇邦夫『出版現実論』(太田出版)の五冊を読了。生臭い話より書痴のエピソードのほうが面白いな。ちなみに、ブックオフへ行くと必ず気分が悪くなったりします。


[9月7日]
 胃腸を中心に体調が悪く、頭も芳しくなく、早めに仕事を打ち切ってバッハを聴きながら休養。かなり夏の疲れが出ているかも。
 ロザリンド・アッシュ『蛾』(サンリオSF文庫、絶版)を読了。前半はゴシックの雰囲気が横溢でぞくぞくするけれども、因縁がわかってからはコードがスリラーに変わってしまう。つくづく長篇ホラーは難しい。ただ、ラストは余韻が残るし、力量を感じさせる作品。例の「川本三郎誤訳」のために買った方もぜひご一読を。


[9月8日]
 一生に一度と思われる蛾つながりで、古泉迦十『火蛾』(講談社ノベルス)を読了。今年のベストワンはこれで決まりでしょう。ストリブリングの訳者で変なキメラ本格ばかり書いている特殊小説家が本作を高く評価するのは当然。謎解きから幻想小説に移行する部分だけでも凄いけれども、枠が外れてからがまたすばらしい。語彙豊富な文章にも青年の客気めいたものは纏わりついていず、ひたすら平明。二十五歳でこんな作品を書いてしまって後はどうするのだろうかと案じられるほどの傑作。脱帽しました。


[9月9日]
『文字禍の館』(祥伝社文庫)のゲラを仕上げたあと、今日は執筆をセーブして推敲と構想など。
「ダ・ヴィンチ」10月号の角川春樹インタビューによると、「ホラーのブームはあと5年」なのだそうです。「これからはSF寄りのホラーが増え、代わりに純粋なホラーは減っていく」とも。これからどころか、いままでだってそうじゃないかという気がしますけど。まあホラーはともかく怪奇小説はべつにブームになっていないので関係ない話かも。


[9月10日]
 今週二冊目のゲラを返送したものの、書評用のゲラが届いているからなくならず。また次が来るな。
 クラシック関係は、中堂高志『クラシック音楽家ぷろむなあど』(三省堂選書)、宮本英世『作曲家とっておきの話』(音楽之友社)、最相葉月『絶対音感』(小学館)の三冊を読了。ほかに、資料用に読み出したら止まらなくなってしまったブライアン・マスターズ『死体しか愛せなかった男 ジェフリー・ダーマー』(原書房)など。なんだか月50冊読んでいた学生時代に戻ってますが、これはたぶん石堂藍さんの藍読日記の影響でしょう。いや、初手から勝負する気はさらさらないんですけど(笑)。
[9月11日]
 長篇Aが450枚をクリア。これも500枚を超えるのは確実。
 どうも巡り合わせで、またキメラ本格系が同時進行になりそうな雰囲気。面倒なアイデアを思いついてしまった長篇Bが室内楽曲なら、まだ一行も書いていない長篇Cは交響曲といったところか。「赤い額縁」は分量的に交響詩なので、交響曲第二番。さて、いつ完成することやら。
 それに付随して記すと、このところ三角形に取り憑かれつつあります。世界は三角形で構成されている……というのはあまりにも唐突なので少し解説すると、一方の角に論理があります。弁証法を持ち出すまでもなく、この角の内部にも無数の三角形が息づいています。その対極にオカルト・宗教などの非論理があります。しかしながら、この非論理は体系性を有しており、論理と直線で結ばれます。必ず名前を付与されている妖怪なども論理の裏返したる非論理に属します。この論理−非論理の辺の上方にもうひとつの角が存在し、三角形を構成しています。直観把握や体系化されない宗教的法悦などがこの角に含まれるのですが、これは直截に言語化することができません。言うなれば俳句の切れのようなものです。したがって、論理−非論理の緊張関係によって階梯を上るしかないのです。個人的にはずいぶん展望が拓けたような気がします。読んでいる方はちっともすっきりしないかもしれませんけど(笑)。


[9月12日]
 クイックルワイパーに続いて奥の手ワイパーなるものを購入。これで完璧かも。掃除は気分転換にいいです。
 還ってきた異形コレクション、井上雅彦監修『帰還』(光文社文庫)が届きました。「骸列車」という短篇を寄稿しています。やや芸がないですがまた郷里がモデルで、作中にちらっと現れる悪夢は実際に少年時代に見たものです。『屍船』が出たばかりなんですけど、座りがいいから次の純然たる短篇集のタイトルは「骸列車」にしようかな。「小説すばる」の幻想系ホラーと祥伝社の邪悪系ホラー、ゆるやかな連作が二つあるのでかなり先の話ですが。なお、「幻想文学」でデビューした石神茉莉さんが本格デビューされています。


[9月13日]
 10月26日に集英社より刊行される皆川博子さんの短篇集『ジャムの真昼』の書評を起稿。ゲラで読んでいるとプロの書評家になったような気分。なお、田中啓文さんの第一短篇集『異形家の食卓』も同時刊行されるようです。
ロザリンド・アッシュ『嵐の通夜』(サンリオSF文庫、絶版)は「蛾」よりかなり落ちるかな。アッシュの邦訳本には致命的な間違いが付き物で、本書の訳者あとがきは「イギリスの流行作家スティーヴン・キングが」という文章で始まっています。ハーバートの立つ瀬がないな。


[9月14日]
 十一時に御茶ノ水の東京都がん検診センターへ。大腸ポリープの手術が来月の16日に決まる。やれやれ、またあの食事制限・下剤・内視鏡の三重拷問か。しかも今度は手術後一週間も禁酒らしい。確率は低いけれども出血したら点滴を打って数日間入院、万一おなかに穴が開いたら面倒な手術などと脅される。というわけで、その週は予定を入れられませんのでよろしく。あの拷問を受けると体重が1キロ以上減るのですが、このところの食欲不振ですでに52キロ台まで落ちている。ちょっと戻しておいたほうがいいかも。ちなみに、オリンピック選手名鑑に身長と体重が記載されていたので女子選手と比べてみたところ、私より細いのは陸上長距離・体操・新体操の三種目だけでした。シンクロの選手って意外に体重があるんですね。
 平井呈一『真夜中の檻』(創元推理文庫)を読了。未読は「文藝春秋漫画読本」掲載の「お化けの三人男」だけだったのだが、舐めるように再読。さすがに二十世紀最後の年、『山尾悠子作品集成』などエポックメイキングな本が出ますね。本文が終わったあとも解説・小伝・著訳書一覧・解題・付録と「エルム街の悪夢」のように続く構成ですが、『平井呈一句集』に収録されていない初期俳句の紹介があればなお良かったかも。表題作は何度も読み返しており、「長屋門」と「コの字型」は『屍船』所収の「草笛の鳴る夜」でちらっと使っていたりするんですけど、あのエロスは今後の課題ということで。


[9月15日]
 キングズリイ・エイミス『グリーン・マン』(早川書房、品切)を読了。これは完全なスーパーナチュラルだが、エイミスは純文学畑の作家だからコードが変で、幽霊と一市井人の房事が等価だったりする。きわめてユニークではあるものの、退屈だと感じる読者もいるかも。
 出版関係は山田敦夫『消える本屋』(アルメディア)、尾下千秋『変わる出版流通と図書館』(日本エディタースクール出版部)、安藤哲也・小田光雄・永江朗『出版クラッシュ』(編書房)、『本棚が見たい!1〜3』(ダイヤモンド社)の六冊。やはり人の本棚を覗いてるほうが楽しいな。どうでもいいけど、小田という人は「活字倶楽部」でも読んで勉強したほうがいいと思います。それにしても図書館って中途半端な数だよなあ。


[9月16日]
 書評→連載→長篇Aで息切れ。なお、ほとんど私信ですが西澤保彦さん、集英社の次の書き下ろし(「ブラッド」と同じ作者とは思えないユーモア物)は長篇Dでして、「準備」しただけで「着手」はしていませんからご安心ください。長篇Aが終わって長篇Bがメインになったら手が回るかも。長篇Eのプロット、短篇A・B、ちっとも進まない翻訳、いろいろ考えてるから食欲がわかないんだよな、ぶつぶつ。
 クラシック関係は宇野功芳・中野雄・福島章恭『クラシックCDの名盤』(文春新書)、鈴木淳史『クラシック音楽ほめ殺し』(洋泉社)、諸井誠『音楽の聴きどころ「交響曲」』(音楽之友社)を読了。昨夜、チョン・キョンファ盤がすごく良かったシベリウス「ヴァイオリン協奏曲」を安物の輸入盤で聴いたら別の曲みたいだった。なるほど、奏者や指揮者で選ばないといけないんですね。奥が深いな。


[9月17日]
 みなさん、こんにちは。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。きょうはドルバッキー姉妹さんとサンシャイン水族館へあそびにいきました。ミーコはおさかなを見るのがはじめてです。いろんなおさかながいましたけど、クラゲさんがいちばんきれいでした。大きなカニさんはきもちわるかったです。クラニーはエイとヤドカリのぬいぐるみを買ってました。とってもめずらしいぬいさんです。では、クラニーにかわります。
 その後は例によってパセラ。久々にカレーとサラダという食事らしい食事をする。今回は水族および水しばり、「ツッピンとびうお」「イルカにのった少年」「海のトリトン」「北の漁場」「渚のはいから人魚」「城ヶ島の雨」「オクトパス・ガーデン」「琵琶湖周航の歌」など、また四時間で三十曲くらい歌って九時に解散。お疲れさまでした。
[9月18日]
 座談会のゲラをチェックしたあと(ほとんど原形をとどめないほど書き直したけど)、書評をメールで送り、長篇Aに戻る。京極さんの個展のレセプションに行くつもりだったのだが、にわかに追い込みモードになったため自重。もう最後の一行は浮かんでいるのだが。


[9月19日]
 長篇Aの第一稿501枚が完成。もっとも、自主リニューアルおよび推敲にしばらくかかりそう。幻想ホラーとSF(ニューウェイヴですけど)の境界を狙ったのでむちゃくちゃ時間がかかってしまった。とりあえず書きたいものが書けたような気がするので満足感はあります。


[9月20日]
 フランク・デ・フェリータ『オードリー・ローズ』(角川書店、品切)を読了。こんなに早く因縁がわかってどう持たせるのかと思いきや、途中から法廷小説みたいになってしまう。むろんデ・フェリータは力量ある作家だから読ませるのだが、個人的にはやや拍子抜け。夫婦の頭がおかしくなって少女が陰湿に虐待されるという展開を期待してしまうのは……きっとジョン・ソールの読みすぎだろう。


[9月21日]
 長篇Aの推敲、半分まで。当初はそこはかとなく映像を意識していたのだが、こりゃ映画化は無理だな。今後の話ですが、ミステリーのコードを使うと右脳の暴走に歯止めがかかっていいかなという気がする。実際にデジタルな部分ばかり書かなきゃいけない局面になると苦痛を覚えるんだけど。そのあたりの配合とバランスが課題ということで、次のサイクルに向けて少しずつモチベーションを高めているところ。
 佐野眞一『業界紙諸君!』とダサコンの課題図書である永江朗『不良のための読書術』(ともに、ちくま文庫)を読了。前者は名著、山本夏彦の言う「存在しない」ものに関するルポルタージュは貴重だと思う。幻想文学会のOBが編集している「温泉新聞」は実物を見たことがあるのだが、広告が地味で笑えました。


[9月22〜23日]
 長篇Aの第一次推敲を終えたあと、ミーコ姫とミミちゃんを連れて帝国ホテル、江戸川乱歩賞のパーティに出席。去年より知り合いが多かったかも。小森健太朗さんと「火蛾」の話など。二次会は同ホテルのスカイラウンジ、有栖川有栖さんと初対面、森奈津子嬢と遊ぶ。ディテールを回想しようとしても田中啓文さんのしょうもない駄洒落しか浮かんでこないのはきっと疲れのせいだろう。一時ごろ浅暮さんとタクシーで歌舞伎町へ、ロフトプラスワンの菊地さんのトークライヴに合流。今回はユニヴァーサルが四本。遅れて乱歩賞組が合流、成り行きで私もステージに上がらされる。二次会は十数人で上高地、飯野さんの壊滅トークを拝聴して七時ごろ解散。お疲れさまでした。


[9月24日]
 やっとオリンピックの話題。女子マラソンは朝の七時のスタートなのだが、気が高ぶって選手と同じ四時に起きてしまう。シモンの調子がいままで見たなかで最高だったので最後まで厭な感じだったけれども、8秒差で振り切れたのは幸い。内容のある金メダルでした。前半戦のMIPは水泳男子100メートル予選に出た赤道ギニアの選手でしょう。予選は結構好きなのでライヴ映像で見てましたが、最後のほうはあわや水泳オリンピック選手が溺死するかと思った。
 さて、「SFマガジン」11月号が届きました。「人気作家46人が選ぶハヤカワ文庫SFベスト5」にアンケートを寄せています。同誌は初登場。集計はありませんが、「バベル−17」が一番人気でさほど重なっていませんね。個人的には「アインシュタイン交点」のほうが好きだな。
 図書館本は脈絡なく科学の棚に移動。アミール・D・アクゼル『天才数学者たちが挑んだ最大の難問 フェルマーの最終定理が解けるまで』(早川書房)、百瀬昭次『そろばんの向こうに宇宙が見える』(東京書籍)を読了。後者はそろばん神秘教のプロパガンダの趣で、子供向けの啓蒙書なのにケストラーの『ホロン革命』(懐かしい)とかいろいろ出てきて爆笑の連続。これは掛け値なしの奇書でしょう。
[9月25日]
 少し翻訳を進めたあと、喫茶店で複数のスポーツ紙をチェック、女子マラソンの全成績を熟読。モニカ・ポントのファンなのだが、スペインの代表になれなかったようだ。なお、37歳のビクタギロワがドーピングのリベンジを果たして入賞したという話題はどこも採り上げていなかった。帰宅後は連載の作中作とその他の部分を進め、長篇Bに戻り、まだ余裕はあるけど起稿済みの短篇A・Bに手を回す。長篇Cもいちおう起稿はしてあるので、いろいろ並行してちびちび進めるモード。
 ロバート・マラスコ『家』(早川書房、絶版・NV版も品切)を読了。ケレン味のないゴシック・ホラーだけれども、この長さでオーソドックスすぎるとやはり怖くない。つくづく長篇ホラーは難しい。


[9月26日]
 翻訳を進めたあと、連載の作中作と長篇B。途中で野球の準決勝を見てから長篇Aの修正とプリントアウトに手を回す。この作品が手を離れないと完全に次のサイクルへは行かないな。
 えっと、黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。「小説推理」11月号がとどきました。クラニーは何も書いてませんが、西澤のおじちゃんの連載小説にミーコとクラニーが登場してます。語り手は森奈津子さんで、図子慧さんもでてきます。ちょっとえっちだよ(笑)。


[9月27日]
 今日は執筆お休み。長篇Aの修正およびプリントアウトをしたあと、バスで浅草へ。まずROXビルで本とCDとぬいぐるみを買う。ぬいぐるみはラメ入りのウサギのラミーちゃんだが、いつも店員が「贈り物ですね」と断定するのはいかがなものか。弱々しく否定したら通じなかったらしく「いくつくらいの方ですか?」となおも問うので、やや強い調子で「個人で使います」と答えたところ曖昧な表情になった。男性ぬいぐるみ愛好者はまだまだ少数のようだ。その後、前回の蕎麦ツアーで臨時休業だった蕎上人に赴き、日変わりの五色蕎麦を食す。せいろ・田舎・茶きり・ケシきり・レモンきりの五種類で、ことにレモンきりは風味が十分に残っていて美味だった。満足。ほかにも良さげな蕎麦屋をチェックしたけれども、意外に五色蕎麦の量があったのでまた後日とし、しばらく散歩してから帰宅。


[9月28日]
 今日は連載が中心。第二秘書がいれば一日中暗号を考えてもらうかも。赤毛連盟より面白い仕事だろう。
 チャールズ・L・グラント『ペットの夜』(ハヤカワ文庫、品切)を読了。これはグラントらしい秀作で、緑と馬のイメージがフュースリっぽくて印象に残った。こういうポエジーを感じさせる長篇ホラーは貴重。アンドレ・シャステル『グロテスクの系譜』(文彩社)を資料として読む。とりあえず薄いほうから。


[9月29日]
 今月の執筆は早めに終了、長篇Aの第二次推敲に移る。来週早々に次のゲラが届くからなあ。
 今月の執筆枚数は201枚、稼働日数24日、一日平均は8.4枚でした。オリンピックと相撲があったからまずまず。


[9月30日]
 書き下ろし連作短篇集『不可解な事件』(幻冬舎文庫・533円+税)の見本が届きました。発売は十月十日です。帯を取るとミーコ姫が現れます。なお、著者紹介に『地底の鰐、天井の蛇』とありますが、『地底の鰐、天上の蛇』の誤りです。
 六時よりミーコ姫とミミちゃんを連れてDASACON4(本郷・朝陽館本家)に参加する。七時前にオープニング、見本が届いたばかりなので珍しく宣伝する。企画が始まる前にアズレーと一緒にポラロイド写真を撮られたところ、バックに変なものが写ってしまった。第一企画は永江朗氏をゲストに出版関係の話、ガイダンスのあとはもっぱら質疑応答。前に座った浅暮さんと涼元さんがどんどん質問するし、せっかく予習したんだから何か聞こうかなと思ったのだが、なにぶん声が小さい人なので拝聴のみ。いや、出版業界について考えてる暇があったら小説のことを考えるんだけど。その後は、古本オークションを小まめにチェックしつつWeb書評などの企画を聴いたりしてせわしない動き。『緑色遺伝子』を千円でゲットしてサンリオのディキンスンが揃ったのは収穫だったが、シルヴァーバーグの『確率世界』を買い逃したのは失敗。三時ごろまで大広間でだらだらしたあと麻雀部屋へ。大森・浅暮・タカアキラのメンツで半荘のみ、一年半ぶりに打ったら圧勝してしまった。浅暮さんの思い切りないてツモのみというきれいなチョンボが見られたのは幸い。五時前に大広間に戻り、カルタを見物。少し寝てからu−ki総統の爆笑トークを拝聴。最後に清水賢治さんと将棋を指し、意外にも勝ってしまう。定跡と詰将棋を勉強すれば初段を目指せるかも。九時半にお開きになったあと、マラソンに備えてすぐ帰宅。では、秘書猫の登場です。
 黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。ミーコは有里さんをはじめたくさんのみなさんにかわいがっていただきました。ミミちゃんはニムさんの猫になってました。タニグチさんのプチ子ちゃんや米田さんのチュチュ様とあそびました。プチ子ちゃんはとってもかわいかったです。クラニーがほしそうにしてました。みなさま、ありがとうございました。またあそんでね。おわり。