[3月1日]
 俳句の原稿を送ったあと、翻訳、長篇A・B。長篇Aは150枚をクリア。夜は久々に読書と将棋の勉強。


[3月2日]
 六時よりミーコ姫とミミちゃんを連れて徳間書店の三賞パーティに出席(東京會館)。会場で集英社のC塚さんにゲラ、K原さんに短篇の原稿を渡す。名刺交換をしたのは藤木稟さんと荻野目悠樹さん。けっこう飲んで記憶が飛んでいるので(仕事の話はなんとなく覚えてるんですが)、以下は秘書猫に代わります。
 みなさん、こんにちは。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。ミーコは森奈津子さんや五代ゆうさんや、たくさんのおともだちにあそんでもらいました。二次会はどちらも担当さんが幹事だったのでクラニーはこまってましたけど、ミーコのおともだちの五條瑛さんが大藪春彦賞を受賞されたのでそちらの二次会に出ました。途中でとつぜんスピーチに指名されたクラニーはずいぶんうろたえてましたが、なんとかしゃべってました。三次会は十人くらいでカラオケです。田中啓文さんのサックスをバックに「夜霧よ今夜もありがとう」をうたったのが印象にのこってるようです。えっとそれから、フカサワさんのカラオケにショックをうけてました。みなさん、おつかれさまでした。おしまい。


[3月3日]
 仕事中に荒川区の青色申告相談員が来訪、入会金を払い説明を聞く。「一人でご商売をされているそうですが」などという話を聞くにつれ、しかるべき指導のノウハウはあるのだろうかと不安になる。ひょっとしたら荒川区在住の専業作家は私だけかもしれないし。


[3月4日]
 今週はやっと小説読みに復帰。読了順に、福澤徹三『怪の標本』(ハルキ・ホラー文庫)、異形コレクション『幽霊船』(光文社文庫)、秋里光彦『闇の司』(ハルキ・ホラー文庫)。『怪の標本』は百間(誤字)の血脈が惻々と伝わる「雨音」がベスト。後ろ向きの怪奇小説はいいなあ。「訪問者」は私も書きそうな作品。瑣末なところですが、チラシのくだりでは何度もうなずいてしまいました(笑)。『闇の司』の表題作は「大江」という名前に反応するところだが(健三郎ではない)、文品は乱歩よりはるかに上。屍体に愛情がこもった秀作です。ことに三番目の殺しがいいな。小説以外は、可能涼介戯曲集『反論の熱帯雨林』(テアトロ)、『日本怪奇幻想紀行二之巻 祟り・呪い道中』(同朋舎)、綾辻行人原作・児嶋都漫画『眼球綺譚』(角川書店)、小町谷朝生『色彩のアルケオロジー』(勁草書房)、養老孟司・吉田直哉『対談目から脳に抜ける話』(ちくま文庫)、柿沼昭治『将棋に強くなる本』(金園社)。以前は一冊ごとに感想を書いていたのですが、すっかり根が続かなくなりました。当分は週末に一括というスタイルにします(また気が変わるかも)。
[3月5日]
 本日より翻訳のノルマを上げる。専門家から見たら児戯に類する枚数ですけど。あとは長篇A、連作短篇A、初期短篇選集のボーナストラック三篇のリニューアルにも着手。昔から変な小説を書いてたんですね。


[3月6日]
 資料集めが急務のような気がしたので久々にほぼ全休。室町砂場で別製大ざる、神田まつやで大もりを食したあと神保町へ。こういう日に限って書泉が臨時休業していたりするわけだが、とりあえず『科学技術と産業用語辞典』(富士書房)、『英和科学用語辞典』(講談社ブルーバックス)、『高等学校古典1』(朋友出版)、石塚尊俊『日本の憑きもの』(未来社)、モーリス・ブランショ『文学空間』(現代思潮新社)などを購入。複数の小説の参考資料ですが(単独ならシュールかも)、まだまだ足りない。夜はまた溜まりはじめたゲラに着手。


[3月7日]
 風の強い日は引きこもりモード。翻訳、長篇A、連作短篇A、長篇B、リニューアル短篇、各種ゲラを例によってネズミのように進める。


[3月8日]
 ボーナストラック三篇の第一次リニューアルが完了。ほかの初期作品はデータがないのでコピーをとってから手を入れなければならない。もっと早くワープロにしておけばよかった。夕方、鬱陶しくなってきたため散髪。近所の蕎麦屋で好物のきのこ天せいろを食し、実に久しぶりに体重が53キロ台に回復する。来月また検診だけど。


[3月9日]
「四重奏 Quartet」の校閲ゲラが届き再校がバッティング。執筆を早めに打ち切って「サイト」のゲラに専念。再校につきさらっと一回のつもりだったのだが、また頭から読むと文章のディテールが気になり、再度入念にチェック中。どうもキリがないですね。
 さて、「幻想文学」60号〈特集・幻想ベストブック1993−2000〉が届きました。座談会およびアンケートに登板しています。座談会では珍しくかなりしゃべってます。


[3月10日]
 翻訳の六本目の第一稿が完了。とりあえず最長の作品は終わったけどまだまだあるな。ヒュー・ウォルポールの短篇集は実質編訳なのですが、「虎」はいかにも私が選びそうな作品。夜は「サイト」のゲラがやっと完了。


[3月11日]
 十一時半すぎにドルバッキー姉妹さんと待ち合わせて国立劇場、生まれて初めて歌舞伎を観る。演目は鶴屋南北作「阿国御前化粧鏡」より「新世紀累化粧鏡(いまようかさねけしょうのすがたみ)」。私がわざわざ観に行くのだから「この恨み晴らさでおくべきか」「さても恐ろしき執念じゃなあ」という台詞があるお芝居ですね。一幕目は派手な仕掛けもあり満足。二幕目は地味につないで三幕目の鯉つかみになると完全なお笑いというわりとツボに来る構成でしたが、これが歌舞伎のデフォルトだと思うのは間違いらしい(笑)。終了後は御茶ノ水パセラで軽く二時間ほどカラオケ。初めて歌ったのは「大井追っかけ音次郎」「ゲット・アップ・ルーシー」「キャンディ・ハウス」など。歌舞伎帰りのカラオケは「お富さん」と「弁天小僧」が基本でしょう。では、秘書猫です。
 黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。ミーコはコイさんがとっても気に入りました。ねこ歌舞伎もあればいいにゃとおもいます。みなさま、おつかれさまでした。おしまい。
 今週の読書メモです。読了順に、小説は田中啓文『銀河帝国の弘法も筆の誤り』(ハヤカワ文庫JA)、柴田よしき『0(ゼロ)』(祥伝社文庫)、早見裕司『夏の鬼その他の鬼』(エニックスEX)、横田順彌『五無斎先生探偵帳』(インターメディア出版)。小説以外は週刊将棋編『見えたら初段詰将棋100次の一手100』(毎日コミュニケーションズ)、『大岡頌司自選百句』(九有似山洞)、佐藤信夫『レトリック認識』(講談社学術文庫)、『歌舞伎入門』(婦人画報社)。とうとう書名の羅列だけになってしまった……。
[3月12日]
「サイト」のゲラを返送したあと翻訳、長篇B、長篇A、連作短篇A。夜は「四重奏 Quartet」の再校ゲラに移る。このところ仕事の記述ばかりで日記が面白くないので、今週はごく一部で好評の生活向上週間とします。


[3月13日]
 というわけで、日暮里駅前のメガネドラッグで数年ぶりにメガネを買う。麻雀で対面の一萬が二萬に見えたり、洋楽カラオケの歌詞が見えづらかったりして衰えを感じたためだが、ふだんは鬱陶しいからかけないでしょう。ちなみに縁なしで、白い花がくっきりと見えます。フチナシの白い花……って芸風が違うやん。


[3月14日]
 通販で麻雀牌・マットセットを注文。仕事のノルマをクリアしたあと、丼を買う。米は主食じゃないから炊飯器は要らないのだが、パック容器のごはんはどうも味気ない。丼があれば、卵かけごはん、猫ごはん、お茶漬と思いのままである。本当に私の生活は向上しているのかという気がしないでもないけど。夜はゲラの追いこみ。


[3月15日]
 昨日注文した品がすかさず届く。さっそく積みこみ……じゃなくて牌さばきと切り方の練習をする。これで碁盤、将棋盤と併せて3点セットが揃う。あとはチェスとオセロの盤かな。べつに来客用ではなく、一人で黙々と陰気に勉強するためですが。


[3月16日]
 今日は執筆お休み。長篇Dの構想に着手、600枚強で収めるべく長篇Aのパーツを減らす。まだまだ紆余曲折がある模様。神保町で小説、資料、囲碁と将棋の戦術書など大きなバッグ一杯分の本を購入したあと、四時より講談社のA元さんと打ち合わせ。「四重奏 Quartet」と「メフィスト」連載のゲラを渡し、やっとゲラがなくなる(と思ったら夜また届く)。来年の話ですが、次回作のタイトルは「無言劇 Pantomime」に決定。


[3月17日]
 仕事のあと千駄木のハンコ屋に赴き、名刺の改訂を依頼する。発作的にど真っ赤な名刺を発注してしまった。谷中で靴を買って帰宅。


[3月18日]
 読書メモです。読了順に小説は北原尚彦『霧幻帝都』(エニックスEX)、東海洋士『刻个(誤字)卵』(講談社ノベルス)、大石圭『アンダー・ユア・ベッド』(角川ホラー文庫)。小説以外は内藤國雄『駒の音有情』(東京新聞出版局)、中村又蔵『知らざあ言って聞かせやしょう』(日本テレビ)、鈴木知志『麻雀ゼッタイ振り込まない法』(大泉書店)、『有段者のためのポケット手筋100』(日本棋院)、佐藤忠良・中村雄二郎・小山清男・若桑みどり・中原佑介・神吉敬三『遠近法の精神史−人間の眼は空間をどうとらえてきたか−』(平凡社)。小説も資料も消化は遅々として進まず。
[3月19日]
 折にふれて麻雀の練習をしながら長篇Aなどを進める。「迷宮 Labyrinth」の猫見ミーナもそうだが、私が女のコをかわいく書こうとするとなぜこうなってしまうのだろうか?


[3月20日]
 三時より高田馬場、第一回水庭杯麻雀大会に参加、見事優勝する。結果は以下のとおり。

優勝 クラニー +118
2位 森英俊 +105
3位 MANTRA +69
4位 W辺 +53
5位 ガメラ +41
6位 ブラニー −54
7位 みえぞーこと高瀬美恵 −130
8位 りえぞーこと鹿(殺)ちゃんY −192

 半荘4回が予選、A・B卓に分かれて決勝戦2回、計6回のトータル勝負。決勝1回戦でトップに立ったものの、最後は森さんにマクられて薄氷の勝利でした。麻雀は途中に約十年間のブランクがあったのですが、年間26日打って一度もトータルで沈まなかった(あまり大勝ちもしなかったけど)全盛期に戻りつつあるような気もする。なお、牌を掲げる女神をあしらった美しい優勝カップをいただきました。幻想文学会のカラオケバトルでチャンピオンベルトを巻いて以来の名誉かも(笑)。


[3月21日]
 今週はゲラがないから久々に息抜きモード。とりあえずエッセイの第一稿を書き、夜はカラオケの練習。初期作品選集のためのコピーを取り終わったけど、しばらく寝かせておこう。


[3月22日]
 真っ赤な名刺を受け取ったあと、七時より御茶ノ水パセラ、第5回洋楽カラオケに参加する。永久幹事・中嶋千裕、コミッショナー・けーむら、高瀬美恵、ブラニーなどのメンバー。最初の三十分間はブラニーの娘で姪のめいちゃんのミニコンサート。0才児からカラオケの英才教育を施しているらしく、さすがに音感がいい。いずれモー娘に入ってくれないかしら。本番は途中から故人しばりで異様に盛り上がる。選曲段階でずいぶん生きている人を殺したような気がする。初めて歌ったのは「ハロー・メリー・ルウ」「グレート・プリテンダー」「花のサンフランシスコ」「ママ・ミア」など。十二時に終了後、終電を逃してタクシーで帰宅。では、秘書猫です。
 みなさん、こんにちは、黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。ミーコはミミちゃんといっしょにおどりました。年のせいか、さいきんはゆっくりしたおうたもいいにゃとおもうようになりました。おつかれさまでした。おしまい。


[3月23日]
 さすがに今週は遊びすぎなので、ロフトプラスワンは自重して仕事モード。翻訳、連作短篇A、長篇Aを進める。


[3月24日]
 このところエンジンのかかりが遅く、仕事はなかなか捗らず。相撲も今週で終わるし(幕下上位と十両の取組を全部見てるからいかんのだが)、来週からピッチを上げねば。


[3月25日]
 読書メモです。小説はミルチャ・エリアーデ『令嬢クリスティナ』(作品社)のみ。小説以外は読了順に小島武夫『絶対負けない麻雀』(日本文芸社)、佐藤信夫『レトリックの記号論』(講談社学術文庫)、『手筋小事典』(日本棋院)、エリファス・レヴィ『高等魔術の教理と祭儀 教理篇』(人文書院)。
 佐藤信夫のレトリック・シリーズ五冊を完読。要するに、レトリックはそれ自体が思想であるということですね。イデオロギッシュな思想体系に胡乱なものを感じ、なおかつ言葉や文章表現にこだわりを持っている方には絶対おすすめのシリーズです。
[3月26日]
「ワンダーランドin大青山」の再校ゲラが届く。エッセイを送り、夜から着手。先週遊んでおいてよかった。
 春場所回顧。今場所は琴冠佑の9勝6敗がハイライトでしょう。かつて大竜があと一歩で果たせなかった35歳の新入幕に期待したい。私も下積みが長かったから(相撲を取ってたわけじゃないけど)、上のほうはわりとどうでもよくて十両下位と幕下上位の入れ替えにもっぱら注目しています。虎伏山も上げてやればいいのに。


[3月27日]
 翻訳、連作短篇A、長篇Aを進め、とりあえず今月のノルマをクリア。去年と同様、5月から(翻訳が終わってから)250枚ペースに上げる予定。夜はゲラ。


[3月28日]
 長篇Aが200枚をクリア。やっと三分の一か。マラソンに譬えれば給水ポイントにつき、図面などの内部資料を作っておかねば。


[3月29日]
 翻訳の7本目の第一稿が完了。残り4本を来月中に終わらせるのは苦しいか。推敲と調べ物も残ってるし。


[3月30日]
 長篇A・Bの各種内部資料(図面や登場人物表)を作成したあと、ゲラの追いこみ。今週は引きこもりモードのわりには仕事が進まない。バットマットに向かっている時間が長すぎるかも。


[3月31日]
 今日はすっかり花冷です。日暮里から三河島にかけては桜並木がむやみにあり、労せずして花見ができるのですが、夜に桜を見るたびに「夜桜お七」のメロディが条件反射的に流れるのは私だけだろうか?
 今月の執筆枚数は211枚、稼働日数24日、一日平均は8.8枚でした。


[4月1日]
「ワンダーランドin大青山」のゲラを返送。これで上半期の三冊が完全に手を離れる。あとは下半期の推定五冊だなあ。げそっ。
 今週の読書メモです。読了順に小説は小野不由美『黒祠の島』(祥伝社ノン・ノベル)、J・G・バラード『残虐行為展覧会』(工作舎)、藤岡真『六色金神殺人事件』(徳間文庫)、小説以外は『ヨセ小事典』(日本棋院)、種村季弘・高柳篤『だまし絵』(河出文庫)、藤井猛『四間飛車を指しこなす本1』(河出書房新社)。