[9月1日]
『百物語異聞』(出版芸術社、ふしぎ文学館・1500円)の見本が早くも届きました。来週末には入る予定です。とうとう〈魔界の使者〉になってしまいましたが、あとがきに記したとおりホラーばかりでなくいろいろ入っておりますのでよろしくお願いします。27篇収録で1500円はお買い得だと思うんですけど。
 夕方から秘書猫をつれて赤坂。砂場に寄ってから七時よりですぺらで暑気払い恐怖の会(幻想的掲示板オフ)。約二十名が参加、いったん数名でカラオケに抜けたあとですぺらに戻る。終電で帰るつもりだったのだが、笹川君がべろべろに酔っ払っていて面白いのでいろいろと邪悪なツッコミを入れて遊ぶ。結局、二時すぎに解散、タクシーで帰宅。手抜きレポで恐縮です。


[9月2日]
 読書メモです。読了順に小説は有栖川有栖『作家小説』(幻冬舎)『暗い宿』(角川書店)、西澤保彦『完全無欠の名探偵』『死者は黄泉が得る』『瞬間移動死体』(以上、講談社文庫)、牧野修『呪禁官』(祥伝社ノン・ノベル)。『作家小説』は「田舎の事件」シリーズの作者の琴線に触れる部分があるので「ポンツーン」連載時から読んでました。「殺しにくるもの」「書かないでくれます?」はホラーファンにもお薦め。ハイブロウな阿刀田高の趣のメタホラーなのですが、見せ方が抜群にうまい。『暗い宿』では世代的に「ホテル・ラフレシア」、ちなみに私は「ホテル・カリフォルニア」を歌うたびにこれはホラーソングだと主張しています。さて、西澤さんが日記で「殺しにくるもの」を絶賛してましたけど、これは当然すぎるほど当然で、温顔の下に隠したダークな部分が反応しているに違いない(笑)。そのダークな素顔はすでに第二長篇『完全無欠の名探偵』に垣間見えますね。もう一つ、温顔の下に隠した(くどいって)暗い私小説作家の顔も諸作にちらちらと見えます。全国六十九万人の西澤ファンの中でこんな読み方をしているのは私くらいかも。そんな表と裏の顔がほどよくブレンドされている風変わりなカクテルが『瞬間移動死体』、これは珍しく犯人が当たったなあ。『呪禁官』はオカルト青春アクションだと聞いていても半信半疑だったのですが、読んでみるとそのとおり。どうしてあたしを置いて明るいところへ行こうとするのかしら(あたしのノン・ノベルはあれなのに)。でも、牧野修は牧野修、やっぱり天使が出てきたりする。国立呪禁センタービルは素数階ごとに通路で結ばれているとかオカルトネタがやたら楽しいのですが、私にウケてるようではどうでしょう。それから、舞台はオカルトと科学の立場が入れ替わった世界、アイデアは立ってるし理屈も付与されているから文系の私から見ると明らかにSFなんですけど、S派の人はいったいどう読むのだろう?
 小説以外は中島義道『私の嫌いな10の言葉』(新潮社)、久世光彦『悪い夢 私の好きな作家たち』(角川春樹事務所)、家田荘子『ボーダレス・ラバーズ』(ベスト新書)、車谷長吉『業柱抱き』(新潮文庫)、中島義道『「哲学実技」のすすめ』(角川oneテーマ)『哲学の道場』(ちくま新書)。恐るべきことに『私の嫌いな10の言葉』は十刷になってるんですが、こういう本が売れるのならそう捨てたものじゃないかも。凶悪事件が起きるたびにワイドショーを見ながら素直に憤っている人々に対して逆に憤りや厭な圧迫感を覚えるようなタイプの人なら、この人の著作はたぶん合うと思います。道を踏み外しても知りませんが。
[9月3日]
 長篇D(伝奇ホラー)の構想第一稿を作ったあと、秘書猫をつれて飯田橋。二時より双葉社のH野さん、「小説推理」のN堂新編集長と打ち合わせ。まず志な乃で食事、蕎麦は太めであまり好みじゃなかったけど名店でこんなにむやみに量のある店は珍しい。野菜天ぷらも食べたから蕎麦ツアーの予定を白紙に戻す。喫茶店に移って連載「The End」の件、幸い好評でほっとしました。このところ風呂敷作家と化してるんですが、「死霊」と「城」と「ドグラ・マグラ」と「百年の孤独」をブレンドしたような作品にするとかなんとかまた盛大に広げてしまう。とりあえず「死霊」を完読せねば。終了後は大江戸線で浅草、ミーコ姫にごほうびを買ってから浅草演芸ホールへ。雨につき観客は推定30人。圓彌の「鼻ほしい」と文生の「高砂や」が良かった。色物では三増紋之助の曲独楽が溌剌としていて秀逸。では、秘書猫です。
 ちょっとごぶさたしてました。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。クラニーせんせいがモルモットのぬいぐるみをかってくれました。ミミちゃんより大きいネズミさんで前足がうごきます。クラニーはお店の人に「おうちに50ぴきぬいさんがいます」と自慢して笑われてました。ではでは。


[9月4日]
 長篇Aが400枚をクリア。だんだん盛り上がってきたけど、通常のエンターテインメントの盛り上がりとはかなり違うような気も。連載も再開。当然のことながら月刊誌の連載は毎月締切があるのです。間際になって手をつけて進むような内容じゃないから、毎日少しずつ書かねば。


[9月5日]
 長篇Aと連載を進め、夜は短篇の推敲。特記事項なし。


[9月6日]
 短篇をメールし、長篇Aを進めてから連載のゲラ校正。
 さて、近未来SFミステリホラー長篇『BAD』(エニックス・1429円+税)の見本が届きました。とてもシャープでかっこいい装幀です。扉絵は槻城ゆう子さんに描いていただきました。ありがとうございます。なお、判型は四六ハードなのでお間違えなきよう。発売は14日です。これは売れそうな気がするんだけどな……。


[9月7日]
「将棋世界」初段コースの採点済みハガキが返送され、めでたく規定の千点に到達する。1問につき百点、毎回5問ずつ出題されるから全問正解だと2回でクリアできるのですが、三段コースまで問題が共通で難しいとはいえ7回もかかっているようではあまり自慢にはならないか(初回は屈辱の0点だったし)。これで囲碁と将棋の有段者になったので次のターゲットはチェスかオセロか連珠……とむやみに気が多いから個々の実力が向上しないのだが。ちなみに、優れたテーブルゲームは必ず未知の局面になるから面白いので、あらかじめ「正解」が設定されているゲームはまったくやる気になりません。これは(私の)幻想文学とクロスする領域のある「ミステリー」は好きだけど犯人当てなどの「推理」には思い入れがないという心性とパラレルのような気も。


[9月8日]
 連載と長篇Aを進める。パソコンの調子がいよいよ悪くなってきたので、来週買い替える予定。頻繁にフリーズするし、化けて読めないサイトも多いから我慢の限界。


[9月9日]
 読書メモです。小説は『埴谷雄高全集第三巻(死霊)』(講談社)のみ。とうとう完読したぞ。率直に言って筋はどうでもいいです(暴言)。また、革命だの最後の審判だのといった声の大きいワーグナー的なところも私にとってはどうでもいい(半世紀にわたる執筆中に諸学がどんどん追い越していって古くなっている部分も目立つ)。心地いいのは運河や霧の街や月光などの風景描写で、意外なほどフラジャイルで音楽的。屋根裏部屋の闇などの重低音の響きもひたすら快い。そういったお気に入りの箇所にベタベタ付箋を貼りながら読みました。なんか偏頗な読み方かも。小説以外は読了順に伊藤進『怪物のルネサンス』(河出書房新社)、古今亭志ん生『志ん生廓ばなし』(立風書房)、中島義道『人生を〈半分〉降りる』(新潮OH文庫)、松岡正剛『フラジャイル 弱さからの出発』(筑摩書房)。『フラジャイル』は好著、フラグメントからフラジャイルへという過程はとても刺激的だった。「消息」という言葉の特殊な使い方を真似しているくらいで、松岡正剛の影響はそこはかとなく受けてるんですけど。シオランが何カ所かに引用されているので、便乗していまだに呪縛を受けている言葉を引きます。「作品は死ぬ。断片は書かれたことがない以上、死ぬこともありえない」(E・M・シオラン)。
[9月10日]
 長篇Aが450枚をクリア。だんだん頭が割れそうになってきた。夜は今日届いた「銀の仮面」の再校ゲラに着手。同書は千街さんの力作解説と藤原編集室さん作成の著作リストつき。本邦初で最後と思われるヒュー・ウォルポール短篇集にふさわしい本になりそうです。


[9月11日]
 最近とみに思うに、作者というのは実は存在していないのではないだろうか。本が出るときにはすでにその作者は死んでいるのです(要するに憑き物が落ちている)。周りを見回したところほかに作者らしい者はいないから作者のふりをしてインタビューなどに出ると何をしゃべっていいやらわからなくなって沈黙してしまったりするんですけど、あれは厳密に言えば作者の亡霊であってその発言は信ずるに足りない。では、小説を書いているときは作者なのかと言えばあながちそうでもない。小説の文章が思い浮かぶ瞬間と実際に書く瞬間は絶対に一致しない。小説のことを考えているときは書いていないのだから作者ではない。そう考えると作者はどこにもいないのですが、にもかかわらず私の本が存在しているのは秘書猫が夜中に書いたりしているからではないだろう。


[9月12日]
 台風が直撃したりテロが起きたりするのは、私の本が一週間に二冊も出たせいではないだろう(片方が〈魔界からの使者〉で片方が「BAD」だったりするのだが)。このところ宗教の発生に興味を抱いているのですが、なるほどこういうささいなことから萌芽する可能性もあるわけですね。それから、これは前から考えてたんですけど、まったく構造の違うものに対して人間が憎悪を抱くことはない。基盤が共通していて決定的な差異(断層)があるという状態があって初めて地震めく憎悪が発動する。してみると、イスラム原理主義もアメリカもせんじつめれば同じ穴のムジナなのだろう(山本夏彦いわく「世を滅ぼすのは正義である」)。
 紀伊國屋Webで注文した本が大量に届く。もっとも半分は『失われた時を求めて』、連載「The End」を書いているときじゃないと一生プルーストを読まないような気がしたからオーダーしたのだが、積んでみるといやというほど厚いな。本当に完読できるのかしら。ちなみに、部屋は結構静かなのにずっと耳栓をしたりしている人なので、プルーストみたいにコルク貼りの部屋に住むのが理想。さらに言えば、外で戦争をやっているのにコルク貼りの部屋で「眠るように美しい短篇」を書いていて、完成した瞬間に扉が開いて銃殺されたりするのが理想の死に方のひとつなんですけど、死というものは往々にして(本来的に)不条理で理不尽である。しかし、その不条理を恫喝的に示されることも時には必要であり、そこから内省的思考が生ずれば愚行の連鎖は断ち切られるような気もするのだが、少なくともブッシュや小泉には通じないだろう。なんら実効性のない緊急アピールなどを出したがる正義好きの人々にも。


[9月13日]
 連載と長篇Aを進め、夜はゲラ。特記事項なし。


[9月14日]
 前に引用したシオランの言葉がこう言い換えられることに気づき愕然とする。「作品は死ぬ。断片は書かれたことがない以上、死ぬこともありえない」→「私は死ぬ。〈私〉は生きられたことがない以上、死ぬこともありえない」。私は三人いるなどとときどき言われるのですが、ひょっとすると〈私〉を遍在させることによって死の恐怖から逃れようとしているのではないだろうか(私が完全な空虚と化してしまえば死ぬこともありえない)。ホラーを書くという行為もベクトルは同じなのではないか……と書いているのは私なのか、それとも〈私〉なのか。このところ哲学にハマりつつあるのでこんなことばかり考えてるんですけど。「ぬいぐるみの猫はなぜ猫と言えるのか」とか(笑)。


[9月15日]
 三時より高田馬場で第二回水庭杯が行われる。五人の2ヌケで七回戦。結果は以下のとおりです。
優勝 みえぞうこと高瀬美恵新水庭杯 +108
2位 ブラニー +96
3位 クラニー前水庭杯 +37
4位 音羽亭こと森英俊 −25
5位 MANTRA −216
 というわけで防衛失敗。例によって2位が多く三回もヌケたから不完全燃焼である。ハイライトは私のトップ目で終盤を迎えた四回戦で炸裂した高瀬さんの理不尽な倍満。チートイ・ドラドラの八万単騎のリーチだが、八万は捨ててあってどフリテン(笑)。単騎のフリテンリーチは初めて見ました。なんとこれをツモって裏ドラが八万というのは釈然としないよなあ。まあ二年以上続けているトータルノー沈み記録を更新したからよしとするか。終了後は馬場で呑んでタクシーで帰宅。お疲れさまでした。次はリベンジするぞ。


[9月16日]
 読書メモです。小説は読了順にアントニイ・バークリー『ジャンピング・ジェニイ』(国書刊行会)『最上階の殺人』(新樹社)。俳句で「季語や定型をいじめる」という言い方がありますが、ミステリーのコードをエレガントに虐待する底意地の悪さがバークリーの真骨頂。『ジャンピング・ジェニイ』は爽快なラストも秀逸。『最上階の殺人』は犯人が当たったと思ったのだが、やはりバークリーのほうが一枚上手だった。小説以外は佐藤弓生歌集『世界が海におおわれるまで』、佐藤弓生詩集『アクリリックサマー』(以上、沖積舎)、岸本マチ子句集『曼珠沙華』(毎日新聞社)、立川談志『談志楽屋噺』(白夜書房)、中島義道『ぼくは偏食人間』(新潮社)『孤独について』(文春新書)。私はいまだかつて自分より偏食の人間に会ったことがないんですけど、中島氏とはいい勝負かも(ちょっと勝ってるかな)。基本的に肉も魚も貝も鳥も全部ダメなのですが、原形=生前を彷彿させない加工品(ハムや練り物など)なら原則としてOK。また、お好み焼きやカレーライスなどに混入されている肉は許容する(大量は不可)。逆に牛丼屋、焼肉屋のたぐいには一生足を踏み入れたくない。魚はダメだけど寿司は形が幾何学的だからネタによっては食べられる。エビフライやエビ天は好物ではないものの衣をまとっているから食べられるし、かっぱえびせんはむしろ好物だが、寿司ネタのエビはナマすぎるからダメ……というふうに〈本来的偏食〉は書きだしたらキリがないのです。
[9月17日]
 ヒュー・ウォルポール「銀の仮面」の再校ゲラを返送してひと息つく。長い道のりであった。夜は短篇のゲラ。


[9月18日]
 紀伊國屋Webでオーダーした本がまた大量に届く。大森荘蔵『時は流れず』(青土社)『哲学の饗宴』(理想社)、井筒俊彦『意識の形而上学』(中央公論新社)、ロラン・バルト『彼自身によるロラン・バルト』(みすず書房)『零度の文学』(現代思潮社)など。いい歳をしてなんだかなあという気もする。そのうちやるんじゃないかと思っていたのだが、『零度の文学』はしっかり部屋にあった(旧版は田舎にあるかも)。注意しよう。


[9月19日]
 三時過ぎに江戸川橋の竹本健治さんの仕事場にお邪魔してゲーム。メンバーは浅暮三文、福井健太とその後輩二名。初めて見る中国将棋を見物してから囲碁と将棋。福井君との将棋で初めて居飛車穴熊を試す。勝つには勝ったけど、やはり振り飛車のほうが美しく感じられる。次は中田流三間飛車を試してみよう。蕎麦を食べてからカードゲーム(ミシシッピーとかフォローザクイーン入りのセブンとかエイトとか)。浅暮さんが帰ったあと私も終電で失礼しようと思っていたのだが、本格的なポーカーは初めてだし役の順序もうろ覚えで開始一時間あまりでボコボコにされ帰るに帰れず、結局朝の九時(!)までやってしまう。丑三つ時から相当盛り返したから次は勝てるであろう。大変お疲れさまでした。


[9月20日]
 さすがにへろへろでお休み。


[9月21日]
 六時より秘書猫をつれて帝国ホテル、江戸川乱歩賞のパーティに出席する。誰とも名刺交換をしなかったパーティは初めてかも。二次会は約二十名で数寄屋橋のビッグエコー、エグゼクティヴと貧民に分かれて一時前まで延々とカラオケ。久々に全開モードでカラオケテロリストとか呼ばれましたが、フカサワマッキーの露払いに終始したような気も。マッキーが熱唱しているときだけ機械が曲を受け付けなくなるのだから恐ろしい。では、ここで秘書猫です。
 みなさん、こんにちは。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。ミーコは「やぎさんゆうびん」をうたいました。こんなにおおぜいの前でおうたをうたうのははじめてなのできんちょうしましたが、とってもウケました。うれしいにゃ。
 その後、貧民組(田中啓文、牧野修、浅暮三文、北原尚彦、黒田研二、笹川吉晴)はロフトプラスワンの菊地さんのトークライヴに合流。ロフトはずいぶん久しぶりのような気がする。「赤死病の仮面」などのロジャー・コーマン特集でしたが、途中でゲストが全員登壇。浅暮さんがおなじみの企画クラッシャーモードでやたら飛ばしていた。終了後は上高地でお茶、例によって脳を撹拌されるような飯野さんのトークを拝聴してから八時前に帰宅。お疲れさまでした。


[9月22日]
 夜に少し仕事。体力を考えたほうがいいかもしれない。


[9月23日]
 読書メモです。今週は久々に小説はお休み。小説以外は井筒俊彦『マホメット』(講談社学術文庫)『イスラーム思想史』(中公文庫)、中島義道『哲学者とは何か』(ちくま文庫)『ひとを〈嫌う〉ということ』(角川書店)『〈対話〉のない社会』(PHP新書)。『マホメット』は叙事詩のような格調高い文章で、小冊ながら掛け値なしの名著。教科書然とした『イスラーム思想史』にも思わず掛け声をかけたくなるようなくだりがある(掛け声をかけながら本を読む人がいたら不気味だが)。こういう名文家がその後長く英文で著作を書き「コーラン」の翻訳をしてるんだから、それだけでも化け物だよなあ。それにしても、中島義道はこんなに本を書いてるのか。中年になって思いがけなく陽が当たると気が狂ったように本を出したくなる気持ちはよくわかったりするんですけど(笑)。
[9月24日]
 頭が痛くて調子が悪いのだが、先週遊んだ分を取り戻すべく連載と長篇Aの追い込み。
 大相撲秋場所回顧。上位陣総崩れは私好みの展開だった。一瞬だけ大善優勝という悪夢のようなシナリオが浮かんだのだが。


[9月25日]
 連載と長篇Aを進めたあと、夜は浅草へ。長篇Bの舞台が浅草なので一応取材のつもり。蕎麦屋の休業が多かったから与ろゐ屋でざるらーめんを食したところ「蕎麦湯がわりです」と赤い湯桶が出てきたのは妙な気分だった。それにしても夜の浅草は寂しいな。


[9月26日]
「小説推理」11月号が届きました。新連載長編幻想小説「The End」第一回が掲載されています。月刊誌はほんとにすぐ締切が来ますね。ずいぶん前から始動しているのにまだノルマの30枚に達せず。


[9月27日]
 また紀伊国屋Webから本が届く。今月は十万くらい本を買っているような気がする。今日届いたのはバーナード・ケイプス怪奇小説選『床に舞う渦』(鳥影社)、トマス・ネーゲル『コウモリであるとはどのようなことか』(勁草書房)、野矢茂樹『論理トレーニング101題』(産業図書)、若島正『盤上のファンタジア』(河出書房新社)。


[9月28日]
 長篇A「青い館の追憶」560枚の第一稿が完成。やれやれ、やっとゴールに到達したか。自主リニューアルに半月ほどかかりそう。「The End」連載第二回32枚の第一稿も一応できる。こちらはまだ第一章が終わったところ。これでまた遊べるぞ。
 というわけで、六時より秘書猫をつれて飯田橋のホテル・エドモント、鮎川哲也賞の受賞パーティに参加する。鮎川賞は初めて出たパーティだからなんだか懐かしかった。名刺交換をしたのは藤岡真さん、加納朋子さん、黒崎緑さん、原書房のI毛さんなど。二次会はタゴールの二階、人が多く阿片窟みたいで息が詰まってきたため十一時前に約十名でカラオケ・カーニバルへ。ずっとまったりとお話モードだったのですが、日付が変わると柴田よしき別動隊、我孫子・大森別動隊などが続々と合流、結局全開してしまう。初めて歌ったのは「Raining」「ヘッドライト・テールライト」。西澤保彦さんと「失恋魔術師」をデュエットなど。倉知淳さんの歌を聴けたのは収穫だった。四時に解散してタクシーで帰宅。では、秘書猫です。
 黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。ミーコはおめかしをして赤っぽい青猫のサリーちゃんといっしょに出ました。きょうは女の人だけじゃなく、倉知さん、愛川晶さん、本多正一さんなどのおじちゃんたちにもとってもかわいがっていただきました。またあそんでね。おしまい。


[9月29日]
 夕方から秘書猫とミミちゃんをつれて神保町へ。出雲蕎麦で食事をしたあと七時ごろから御茶ノ水パセラ、第6回神保町ムード歌謡祭に参加する。集英社C塚、西澤保彦、浅暮三文、東雅夫、AZMのデフォルト・メンバーにお忍びの方を加え、本格ムード歌謡がしだいに拡大解釈されやがてジャンルの解体に至るという展開で十二時半まで延々とカラオケ。初めて歌ったのは「螺旋」「We can go」など。ずいぶん久々にアズレーと「北ホテル」をデュエットしたらやはりこれがいちばんウケてしまう。二日でカラオケ十時間、新ネタをあらかた吐き出してしまったからまた仕入れをせねば。というわけでお疲れさまでした。


[9月30日]
 今月の執筆枚数は204枚、稼働日数24日、一日平均は8.5枚でした。
 読書メモです。小説は読了順に山田正紀『地球・精神分析記録』(徳間デュアル文庫)『超・博物誌』(集英社文庫)『人喰いの時代』(ハルキ文庫)『妖鳥[ハルピュイア]』(幻冬舎文庫)。今週は未読作品がずいぶんある山田正紀強調週間でした。いまごろ「人喰いの時代」を読んで「ミステリ・オペラ」の原点はここにあったのかと気づいているようではいかんかも。個人的には「妖鳥」のほうが好みで、これまた曼陀羅と(短調の)オペラ。しかし最も驚いたのはミステリー作品ではなくファンタジーの「超・博物誌」のラストだし、アイデアの秀逸さではSF「地球・精神分析記録」がベスト。うーん、凄いな。小説以外は中島義道『哲学の教科書』(講談社学術文庫)、永井均『〈魂〉に対する態度』(勁草書房)。永井均は哲学の王道のように思われるが、それは〈永井均〉の哲学であって〈私〉のものではない……というのは何か悪い病気に感染しつつあるような気がしないでもない。
[9月24日]
 頭が痛くて調子が悪いのだが、先週遊んだ分を取り戻すべく連載と長篇Aの追い込み。
 大相撲秋場所回顧。上位陣総崩れは私好みの展開だった。一瞬だけ大善優勝という悪夢のようなシナリオが浮かんだのだが。


[9月25日]
 連載と長篇Aを進めたあと、夜は浅草へ。長篇Bの舞台が浅草なので一応取材のつもり。蕎麦屋の休業が多かったから与ろゐ屋でざるらーめんを食したところ「蕎麦湯がわりです」と赤い湯桶が出てきたのは妙な気分だった。それにしても夜の浅草は寂しいな。


[9月26日]
「小説推理」11月号が届きました。新連載長編幻想小説「The End」第一回が掲載されています。月刊誌はほんとにすぐ締切が来ますね。ずいぶん前から始動しているのにまだノルマの30枚に達せず。


[9月27日]
 また紀伊国屋Webから本が届く。今月は十万くらい本を買っているような気がする。今日届いたのはバーナード・ケイプス怪奇小説選『床に舞う渦』(鳥影社)、トマス・ネーゲル『コウモリであるとはどのようなことか』(勁草書房)、野矢茂樹『論理トレーニング101題』(産業図書)、若島正『盤上のファンタジア』(河出書房新社)。


[9月28日]
 長篇A「青い館の追憶」560枚の第一稿が完成。やれやれ、やっとゴールに到達したか。自主リニューアルに半月ほどかかりそう。「The End」連載第二回32枚の第一稿も一応できる。こちらはまだ第一章が終わったところ。これでまた遊べるぞ。
 というわけで、六時より秘書猫をつれて飯田橋のホテル・エドモント、鮎川哲也賞の受賞パーティに参加する。鮎川賞は初めて出たパーティだからなんだか懐かしかった。名刺交換をしたのは藤岡真さん、加納朋子さん、黒崎緑さん、原書房のI毛さんなど。二次会はタゴールの二階、人が多く阿片窟みたいで息が詰まってきたため十一時前に約十名でカラオケ・カーニバルへ。ずっとまったりとお話モードだったのですが、日付が変わると柴田よしき別動隊、我孫子・大森別動隊などが続々と合流、結局全開してしまう。初めて歌ったのは「Raining」「ヘッドライト・テールライト」。西澤保彦さんと「失恋魔術師」をデュエットなど。倉知淳さんの歌を聴けたのは収穫だった。四時に解散してタクシーで帰宅。では、秘書猫です。
 黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。ミーコはおめかしをして赤っぽい青猫のサリーちゃんといっしょに出ました。きょうは女の人だけじゃなく、倉知さん、愛川晶さん、本多正一さんなどのおじちゃんたちにもとってもかわいがっていただきました。またあそんでね。おしまい。


[9月29日]
 夕方から秘書猫とミミちゃんをつれて神保町へ。出雲蕎麦で食事をしたあと七時ごろから御茶ノ水パセラ、第6回神保町ムード歌謡祭に参加する。集英社C塚、西澤保彦、浅暮三文、東雅夫、AZMのデフォルト・メンバーにお忍びの方を加え、本格ムード歌謡がしだいに拡大解釈されやがてジャンルの解体に至るという展開で十二時半まで延々とカラオケ。初めて歌ったのは「螺旋」「We can go」など。ずいぶん久々にアズレーと「北ホテル」をデュエットしたらやはりこれがいちばんウケてしまう。二日でカラオケ十時間、新ネタをあらかた吐き出してしまったからまた仕入れをせねば。というわけでお疲れさまでした。


[9月30日]
 今月の執筆枚数は204枚、稼働日数24日、一日平均は8.5枚でした。
 読書メモです。小説は読了順に山田正紀『地球・精神分析記録』(徳間デュアル文庫)『超・博物誌』(集英社文庫)『人喰いの時代』(ハルキ文庫)『妖鳥[ハルピュイア]』(幻冬舎文庫)。今週は未読作品がずいぶんある山田正紀強調週間でした。いまごろ「人喰いの時代」を読んで「ミステリ・オペラ」の原点はここにあったのかと気づいているようではいかんかも。個人的には「妖鳥」のほうが好みで、これまた曼陀羅と(短調の)オペラ。しかし最も驚いたのはミステリー作品ではなくファンタジーの「超・博物誌」のラストだし、アイデアの秀逸さではSF「地球・精神分析記録」がベスト。うーん、凄いな。小説以外は中島義道『哲学の教科書』(講談社学術文庫)、永井均『〈魂〉に対する態度』(勁草書房)。永井均は哲学の王道のように思われるが、それは〈永井均〉の哲学であって〈私〉のものではない……というのは何か悪い病気に感染しつつあるような気がしないでもない。