3.1
 徳間三賞のパーティに出るつもりだったのだが、人がたくさんいる華やかな場所へ行くのは気が進まないし、仕事の話もしたくないし、結局パスする。本当に薬は効いているのかしら。夜は東大将棋と徹夜してしまう。負けたけど「とてもしっかりした将棋ですね」と最後にほめてもらう。東大将棋のマスターとAI将棋の最強モードは当然のことながら強いのですが、どちらかと言うと東大将棋のほうが筋がよくて好きかな。
 

3.2
 夕方、駅前の書店で「将棋世界」の新刊号を購入、家に帰るのももどかしく近くのルノアールで通読。帰宅後、何か忘れたような気がしたのだが思い出せない。しばらくしてやっと気づいた。私は夕食を忘れたのだった。これじゃ太るわけないな。
 

[読書メモ]
(小説)貞奴「死亡告知」(河出書房新社)。
(小説以外)中島義道「うるさい日本の私」(新潮文庫)、大山康晴「棋風堂堂」(PHP研究所)、桑原稲敏「往生際の達人」(新潮文庫)、升田静尾「好妻好局 夫升田幸三との40年」(文藝春秋)、中島義道「生きにくい・・・」(角川書店)、有栖川有栖「作家の犯行現場」(メディアファクトリー)、羽生善治・谷川浩司「第55期将棋名人戦」(毎日新聞社)。


3.3
油彩画の赤に傷あり聖二月
 某不肖の弟子の真似をしたわけではありませんが、このところ一日最低一句は作っているので冒頭に掲げます。飽きたらやめます。
 今日から確定申告の書類の作成を開始。鬱状態だとなおさら気が重い。まだ三分の一くらい。
 前にも何度かあったのだが、AI将棋には千日手の機能がないようだ。勝ったと思ったら打ち歩詰め、ここで形勢が逆転、最後は誰が見ても千日手なのだが手を変えてくれない。こちらも仕方なく同じ手を指し続け、結局401手で投了。膠着状態になって手待ちの応酬になることは間々あるのですが、あれは絶対に人間のほうが不利だな。
 

3.4
草若葉一滴の血に関はらず 
 今日も確定申告(初の青色申告)の続き、やっと残るは清書のみ。妄想系作家は経費率が低い。今年は取材旅行にでも行くか・・・って一週間に一度だけ出かけるのがやっとの状態なんだけど。面倒だし得にもなっていないような気がするから、来年から白色のどんぶり勘定にしようかな。それにしても、そのむかし早大法職課程教室の事務員だったころは事務の天才と呼ばれていたのに、どうしてこんなに無能になってしまったのだろう。まあ当時はパソコンがなく、人間の記憶と手作業に頼ってたんだけど。


3.5
つばめつばめ今度は死んで帰つておいで
 確定申告のメドがついたので、今度は連載の追いこみ。ただし2枚しか書けず。なお、長篇Bは350枚、長篇Cは220枚をクリアしていますので、いましばらくお待ちください。
 

3.6
花筏いづれ闇夜の塵芥
 昨日に続いて連載の追いこみ。また2枚。これ以上書くと鬱病が進みそう。毎月30枚にハードルを下げていただいたのに、ちっとも進まない。人気作家ならこれくらい一日で書くと思うけど。
 東大将棋のマスターには依然として惜敗どまり。今日は得意の三段ロケットで見るからに優勢だったんだけど、最後に間違えてしまった。やはり受けと終盤が課題か。いや、部分的に失敗しても挽回できる囲碁のほうがはっきり向いてるんだけど。将棋はときどき一手で挽回不能になるからなあ。


3.7
春の果て紐一本のいのちかな
 どうも辞世の句みたいな俳句しかできず、ただでさえ暗い日記がなおさら陰気になっているような気もしますが・・・。連載は今日も2枚どまり、30枚は無理か。とりあえず第四章を終わらせなければ。
 さて、「幻想文学」63号〔特集M・R・ジェイムズと英国怪談の伝統〕が届きました。今回は読みどころが多いですね。私は何も書いてませんけど。
 

3.8
爛春や鏡の中の古代文字
 連載をやっと最後まで書く。ただし全部で25枚。あとは推敲と確定申告書の清書と打ち合わせの準備が残っているのだが、結局夜は東大将棋を指してしまう。読み上げの安食女流プロに「とてもしっかりした将棋ですね」「いい将棋でしたね」とたまにほめてもらいます。勝てないけど。
 

3.9
そのかみの支那に怖の国黄砂降る
 ひたすら連載の推敲、プリントアウト。昨日の体重は51.2kg、体脂肪率は12.5%でした。以前は睡眠薬代わりにつまみとともに酒をバカバカ飲んでいたのだが、その分の摂取カロリーが減っているらしい。この調子だとまたコンビニの自動ドアが開かなくなってしまうのだが。
 

[読書メモ]
(小説)大石圭「履き忘れたもう片方の靴」(河出書房新社)。
 同業者としては忸怩たるものがあるのですが、このところ薄くてすぐ読めそうな純文学を図書館で借りて読んでいます。大石圭のデビュー作ってこんな作品だったのか。
(小説以外)「谷川浩司全集 平成九年度版」(毎日コミュニケーションズ)、車谷長吉「文士の魂」(新潮社)、L・ウィトゲンシュタイン「色彩について」(新書館)、羽生善治・先崎学「村山聖名局譜」(日本将棋連盟)、大内延介「大内延介の将棋初歩の基本戦法」(日東書院)、佐藤康光「佐藤康光の寄せの急所囲いの急所」(NHK出版)。
 ミステリーやSFの読者の大半は私小説を頭からバカにしているのではないかと思いますが、ごくたまに変な私小説作家が出ます。御大の志賀直哉がそうだし、藤枝静男もかなりおかしい。車谷長吉の小説自体は独特の関西文脈が肌に合わなくてあまり得手ではないんですけど、エッセイではときどき面白いことを言っています。「文士の魂」所収の「恐怖小説」、とくに志賀直哉の名作「剃刀」に言及した部分から引用してみましょう。
「私は恐怖の生々しさこそ、人間の精神のもっとも深い部分であるという感想を得た。『人間の精神のもっとも深い部分』とは、恐怖が死と結び付いた感情だからである」
 まさに一面の真なんですけど、これを長篇化しようとすると「物語」がどうしても邪魔をするんですよね。「物語」に没入できる幸福な長篇作家には一生なれそうもないな。ああ、結局は愚痴で終わってしまった。


3.10
影薄き花人地下道に還る
 やっと確定申告の書類を仕上げる。あとは提出のみ。それにしても、源泉ですべて一割引かれているのにこのうえ税金を払わねばならんとは・・・と一度でいいから書いてみたいものだ。その後はやっと連載を仕上げる。
 

3.11
流雛すこしかたむき俯せに
 連載をメールしたあと、虎ノ門の神経科へ。二十日分の薬をいただく。血圧はベストだし、よくなっているようなのでご心配なく。西日暮里経由で荒川税務署に向かい、確定申告書を提出する。その後、千住大橋の千寿竹やぶに向かったのだが、あいにく中休み。ガイドブックには中休みありと書かれていなかった。こまめな改訂を望みたい。やむなく北千住までてくてく歩き、ヨーカドーとルミネで黒服や枕やパイルシーツや鬼束ちひろのセカンドアルバムなどを山のように買って帰宅。ずいぶん歩いたおかげで体脂肪率は自己最低の11.0%、やはり歩くのがいちばんのようです。


3.12
春霖やかかはりのなき土中の手
 打ち合わせの準備を済ませ、執筆を再開。短篇を少しだけ書く。
 

3.13
野遊びの一人は覗く古い穴
 四時より日暮里ルノアールで講談社のA元さんと打ち合わせ。内容は秘密ということで。なんとなく病気自慢合戦のような会話でした。夜の将棋は相振り戦であとは詰めるだけというところまで東大将棋マスターを追いつめたのだが、秒読みでつかむ駒を間違えて時間切れ負け。くそっ。続く居飛車穴熊ビッグ4でも勝勢だったのに、やはり最後に愚手を指して逆転負け。感想戦で指摘された手を指したら(途中からまた対局できるのです)十数手で詰んだではないか。


3.14
シネラリア角を曲がつてきた君に
 午前中から仕事を始めたのに、軽い吐き気がして進まない。夕方やっと調子が出てくる。まだ本調子ではないようだ。
 某古書肆から本が届く。「千田光詩集」、「左川ちか全詩集」、白鳥友彦訳詩集「月と奇人」(以上、森開社)、ドナルド・バーセルミ「死父」(集英社)。私は馬齢を重ねてますが、千田光も左川ちかも(この二冊はほんとにうれしい)二十代で夭折してるんだよなあ。
 夜は将棋でまた徹夜してしまう。四間飛車(東大将棋マスター)対右玉風車(クラニー)戦が186手の熱戦になるからいかんのだ。しかし、50手過ぎに目から火が出る飛角両取りをかけられ角をタダで取られてから執念で端を破り、例によって詰めそこなったけどあわやというところまで追いつめて最後は入玉寸前まで粘ったんだから逆境には強いかもしれない。結局勝てないんだけど。
 

3.15
紫華鬘と書いて花を思ひ出せず
 将棋ファン限定の話題ですが、下記は試行錯誤を重ねて編み出したクラニー流の理想陣形です。

六 歩   歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩
七   歩 桂 銀   銀 桂
八 香   金       金 王 香
九 角               飛
  9 8 7 6 5 4 3 2 1 

 ここに至る方法は、ツノ銀中飛車、陽動振り飛車、右四間飛車の速攻をちらつかせながらの右玉風車といろいろあります。もちろん相手の陣形にもよりますが、基本図からはまず左桂をサバき、角筋を通すことを狙います。1九に隠居している飛車は九筋を自在に動き攻防に参加します。左桂を封じられた場合、もしくは飛車による他の筋の突破が難しい場合は、これまた隠居していた角筋を徐々に変え、飛車を1九に戻し、今度は右桂との連動で端攻め(雀刺し)を狙います(9九で角交換になったら左からも雀刺しが可能)。もし失敗したら玉を中央に逃げてひたすら粘ります。なお、相手が急戦に来たときに無理に組もうとすると、専守防衛で穴角になってしまう危険があるので注意を要します。これで東大将棋マスターともかなり熱戦になるんですけど、どんなもんでしょう。ちなみに、藤井システム四間飛車と矢倉もやるのですが(ただし勉強中)、かなりの確率で1三桂成という手を指してますね。いちばん好きな手役がチャンタ三色という麻雀もそうだけど、性格的に暗い端が好きみたい。元来は穴熊党だし。
 さて、「小説すばる」4月号が届きました。「ナメクジは嘆く」という短篇を起稿しています。連作「十人の戒められた奇妙な人々」の第一話で、今度はブラックユーモア系です。
 


3.16
花篝徐々に濁世を遠ざかる
 締切が近い短篇をとにかく最後まで書く。毎日何枚書いたか手帳に記しているのですが、一日十枚書いたのは実に2月12日以来。この一カ月間は本当に調子が悪かった。
 

[読書メモ]
(小説)笙野頼子「タイムスリップ・コンビナート」(文藝春秋)、赤坂真理「ヴァイブレータ」(講談社)、中原昌也「子猫が読む乱暴者日記」(河出書房新社)。
(小説以外)藤井猛・羽生善治「第十四期竜王決定七番勝負」(読売新聞社)、石部明句集「遊魔系」(詩遊社)、家田荘子「セックスレスな男たち」(集英社)、安部譲二「突撃将棋十二番」(日本将棋連盟)、河口俊彦「人生の棋譜この一局」(新潮文庫)、「千田光詩集」(森開社)、森下卓「現代矢倉の思想」(河出書房新社)。


3.17
永き日の赤い太陽額の中
 短篇をプリントアウトし、長篇Bを進める。本日より、仕事が終わるまでコンピュータ将棋をやるまいと堅く心に誓う。でも、テレビ東京の早指し戦とNHK杯の決勝をビデオ録画して見てしまったから、あまり意味がなかったような気も。
 

3.18
養花天かぐろきものも育めり
 短篇を送り、長篇Bを進める。いよいよあと一章。これが終わらないと次へ進まない。
 

3.19
冬座敷夏座敷にも同じ人
 長篇Bを少し書き、夜は三分の一ほど読み返す。
 

3.20
春の宵見知らぬ絵襖を開ける
 連載を再開、次の短篇をとりあえず起稿し、長篇Bを少し進める。鬱陶しくなってきたので散髪。ずいぶん待たされたから詰将棋の本を持っていけばよかった。
 

3.21
黒い人ボートレースの先頭に
 連載・長篇B・短篇を進める。頭の健康のため同時進行は三作までとしているのですが、ひと区切りついたときの気分転換はやはりこれかとあっさり禁を破って東大将棋。こういうときに限って長手数の熱戦になったりする。
 

3.22
春泥や館の裏にさりげなく
 四時より神保町で角川書店のK田さんと打ち合わせ。今月から始動するという話だったのに何も進んでなくて申し訳ない限り。来月中に起稿できればいいのですが。このところ引きこもりモードで本はネットで買っていたから、実に神保町は今年初めて。バッグ一杯分の本を買ったけど小説は一冊も買わなかったな。その後、久々に神田まつやに寄ってから秋葉原へ。新型iMacの最低機種は未発売だったし、当分品薄かもしれないから一段落したところで買うことにしよう。デフォルトの起動OSがOSXというのがやや引っかかってるんだけど。例によって上野まで歩き、ヨドバシでPS2の「東大将棋3」を買う。定跡対局など、スペシャルより機能はやたら多い。Mac版のAI将棋2002はまだ出てないようだし、Macはソフト環境が厳しい。近所に有名な道場があるから社会復帰のリハビリを兼ねて行こうかなと思ってるんですけど、いまひとつ勇気が出ませんね。
 

3.23
春陰の匣を開ければ何もなし
 長篇Bを主体に進める。東大将棋3で定跡対局をやっているのですが、この初級は明らかに強すぎるような気がする。まだあまりクリアできず。でも、ツノ銀中飛車とか右玉風車とか高田流左玉とか、私が勉強したいマイナーな戦法は何も入ってないんだよなあ。当たり前か。ちなみに、ひねり飛車しか相懸かりをやったことがない人って珍しいかもしれない。
 

[読書メモ]
(小説)大石圭「いつかあなたは森に眠る」(幻冬舎)。
(小説以外)苑田勇一「苑田勇一流基本戦略」(NHK出版)、趙治勲「地と模様を超えるもの」(河出書房新社)、家田荘子「AV男優」(扶桑社)、永井均「これがニーチェだ」(講談社現代新書)、「左川ちか全詩集」(森開社)、本多正一「彗星との日々」(BeeBooks)。
 このところ将棋の話題ばかりでしたが、ボードゲームの本職(?)はペーパー四段の囲碁なので、少しずつ勉強を再開。苑田九段の本はNHKの囲碁講座をベースにしたもので前著よりはわかりやすいのですが、放送を見ていた初心者の方はさぞ首をひねったことでしょう。


3.24
春塵のここなる家はナメラスジ
 連載を一枚書いてから長篇B、ようやく400枚に達する。あと少しなんだけど、まさかこんな展開になるとは。東大将棋3の定跡対局(定跡の途中から指す)は相変わらず苦戦の連続。横歩取りとか何が面白いのかさっぱりわからないし、自分好みの駒組みに変えようとしているうちに敗勢になってしまう。でも、フリー対局では高田流左玉戦法でマスターに快勝。負けたのが腑に落ちないらしく「3八金は筋が悪いと思いました」と感想戦で負け惜しみを言ってたけど、あれは高田流の基本なんです。戦法がマイナーすぎてインプットされてないのかも。それから、AI将棋2001は連続王手の千日手が反則負けだと知らないのだろうか。珍しく攻めるクラニー流(端ではなく角を中央に据える)で必死までかけたのに卑怯だぞ。
 

3.25
高みより一人堕ちたり百千鳥
 昨日と同様、連載を一枚書いてから長篇Bの追いこみ。いよいよ最後のパーツに入りました。夜の将棋は攻めるクラニー流で東大将棋3に連日の勝利。角頭の歩を桂で守り、桂頭を銀で守る高田流左玉作戦(対振り飛車用)は右玉風車からでも応用できますね(ただし、敵の角筋に注意していないとボコボコにされることも)。将棋でいちばん見たいカードは伊藤果七段vs高田尚平六段戦なんですけど、そういう人って日本に何人いるのかしら。ちなみに、毎日一局ずつ並べている高田六段の著書によると、最も多く左玉作戦を用いたのは松浦隆一六段だそうですが、すでにフリークラスに転落されています。流行らないのも当然か。碁の勘を取り戻すべく、深夜はAI囲碁6の最強モードに六子置かせて圧勝。序盤はじっくりきれいに組んでから戦うタイプだから、AI将棋のほうはどうも苦手なんですけど。中盤からだんだん力を出し、詰み筋に入ったらほとんどプロみたいになります。
 

3.26
蓬莱やたはむれに置く黒きもの
 長篇Bの追いこみなのだが、どうも頭が痛くて調子が悪い。ドラールはハルシオンなどとは対照的に長期作用型で早朝覚醒はないのですが、効くのが遅いのが難点。おかげでつい酒を飲んでしまい翌日に残ってしまう。それでもどうにか最後まで仕上げる。第一稿は412枚、あとは推敲あるのみ。
 夜の将棋は新クラニー流風車を試してみました。以下の駒組です。

 五     
 六 歩   歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩
 七   歩 桂 銀 角 銀 桂    
 八 香   金   王   金   香
 九         飛        
   9 8 7 6 5 4 3 2 1 
 
 美しい構えだなあ(不死鳥と名づけてみたい)。どこにも打ちこむ隙はありません。ただ、手損するので持久戦モードじゃないと無理かも。問題は攻めですが、左からの攻めを見せて警戒させ、2筋の歩つきを手待ちに見せかけるという陽動作戦を用い、一転して4五歩を伏線に右端に総攻撃をかけたらAI将棋陣はもろくも崩れて勝勢。でも、いままでの恨みを晴らさんとばかりに駒得を重ねながら最後の詰みを読んでいるうちに時間切れ負けしてしまった。くそっ。
 


3.27
あそこらにわたしのかばね春の山
 長篇Bの後半の推敲をしてから浅草へ。松屋でオセロ盤を買い(戦術書はいろいろ持っているのですが盤がないとよくわからない)、久々に並木の薮でもり二枚。ちなみに、演芸ホールには寄らず。みんな笑っているところで笑えないだろうから。なんとなく歩きたい気分だったので徒歩で帰宅。かなり遠かった。
 さて、「小説推理」5月号が届きました。「The End」連載第7回が載っています。250枚を経て、やっと次から本番の舞台に入ります。だんだん枚数が減ってきてるから、次こそ最低30枚は書かねば。今回の対談で話題に出ている津原さんの「ペニス」の最低連載枚数記録があるから気分的には多少楽だったりするのですが(笑)、そんなことを言っていてはいかんかも。
 

3.28
春暑しあたまのなかの白い渦
 連載と短篇を進めたあと、夜は長篇Bの前半の推敲。完成までもう少し。その後、またゲームで徹夜してしまう。イヤホーンで秒読みを聞くようにしたんだけど、やはり持ち時間が切迫すると厳しく、不死鳥は退治されてしまいました。将棋の敵は囲碁で。最強モードを謳ってるのに九子も置いてボコボコにされたあげく投了するなよな(>AI囲碁)。
 以下はあまり意味のない話ですが、旗を振りたがる人、持ちたがる人はあらゆる世界に存在します。一方、その旗に石をぶつけたがる人、焼こうとする人もまた多く存在します。この両者は、旗の権威を認めているという点では同じ穴のムジナです。たとえどんなに美しく崇高に見えるものでも、旗は旗であるがゆえに振りたくも持ちたくもないというのが現在の私の基本的な立場なんですけど、伝わる人には電光石火のごとくに伝わるし、伝わらない人には絶対に伝わらないでしょう。ただそれだけのことなんですけど。
 

3.29
幻氷や青い世界地図を畳む
 三時より日暮里ルノアールで講談社のA元さんと打ち合わせ。景気のいい話はないですねえ。いずれゲラが出て刊行月が決定したら発表します。それにしても、某氏の訃報には愕然。どれが遺作になっても悔いが残らないように書かなければ・・・と思ったりするから鬱状態になるのだが。とりあえず長篇Bのプリントアウトに着手。夜は久々にドローイング。「死せる神の肖像」とか描いてました。
 

3.30
末黒野に赤い女の佇つは夢
 連載を少し書いたあと、長篇Bを仕上げてFD作成。いつでも渡せるけど、ふと気づくともう週末なのだった。今月の執筆量は135枚。うーん、着実に落ちてるなあ。折り返しを回っている長篇Cが宙に浮いてしまったので、次の書き下ろしの完成目標は中篇。長篇D・Eも来月中に起稿だけはできると思います。


3.31
永遠は一瞬にして御開帳
 みなさん、たいへんごぶさたしてました。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。ミーコは久々におでかけしました。森奈津子さんのおうちでカクテルパーティをしたのです。
出席者は西澤保彦さん、集英社のC塚さん、クラニーです。ミーコはミミちゃん、ローリーちゃんといっしょにうかがいました。四時に世田谷の某駅で待ち合わせ、お買い物をしてから奈津子さんのおうちへいきました。 C塚さんがあとからフレンチのシェフのつくったお料理をもってきました。西澤のおじちゃんはとってもご満悦でした。クラニーせんせいはずっと調子がわるかったので心配してましたが、ちゃんとお話してました。でも、おとなのお話はミーコにはむずかしいです。えっとそれから、C塚さんからオコジョのおともだちを二匹もらいました。とってもかわいいです。クラニーは絵をいっぱいもっていってプレゼントしてました。遠いので先に出ましたが終電にあとちょっとで間に合わず、池袋からタクシーでかえりました。みなさん、おつかれさまでした。おわり。
 

[読書メモ]
(小説)今週はなし。どうもJ文学は薄くても途中で止まってしまう場合が多い。どうせ男と女が出てきてセックス描写があるのなら、濃密なアンチロマン・ポルノ(中黒の位置に注意)を読みたいものだが。来月からぼちぼちエンタテインメントに戻ろうかな。
(小説以外)白江治彦「白江治彦の手筋・ヘボ筋」(NHK出版)、小堀啓爾「独り荒野をめざせ 趙治勲物語」(毎日新聞社)、フスト=ホルヘ・パドロン「地獄の連環」(澪標)、依田紀基「囲碁最強の手筋 初段・二段・三段」(成美堂出版)、「白鳥友彦訳詩集 月と奇人」(森開社)、山口瞳「続血涙十番勝負」(講談社)、雨宮処凛「自殺のコスト」(太田出版)、平間至「捨て猫ミーちゃん」(河出書房新社)、趙治勲「カベ攻めの極意」(河出書房新社)。どうも東西の宇宙流は棋風に合わないので趙治勲流に転向しようかと思ってるのですが、墓穴を掘りそうな気も。パドロンの詩は暗くていいですね。