5.1
 連載の第五章がやっと終わったけど、まだ20枚。ゲラも進んでないし、私のGWはもう終わってしまったようだ。
 

5.2
 連載・中篇・長篇Cを進め、ネットで調べ物。夕方は喫茶店でドライカレーを食べながら(体重回復のため米を食べるようにしているのです)、「将棋世界」の最新号を読む。「高橋和と中倉彰子のみんな大好き」にミーコ姫とともにゲスト出演してクラニー流風車を披露するというささやかな野望があったりするのですが、特殊小説家の知名度では無理か。
 

5.3
 例年ならSFセミナーだが、仕事は進まずテンションは上がらず、引きこもりモード。連載・中篇・長篇C・ゲラといつものコース。夜は有名なネット将棋を初体験。自分が性格的にネット将棋に向いていないことを再確認。早指しとはいえ(持ち時間は一時間くらい欲しいものだ)、相手が誰かわからないから緊張してまったく手が見えないし方針も定まらないのには我ながら呆れるばかり(マウスの操作にもむやみに気を取られてしまう)、10級なみの内容で惨敗。今後はコンピュータ将棋(今日は高田流左玉であと一歩まで東大将棋マスターを追いつめたのだが)と指し将棋に絞ろうかな。今日みたいなヘボ将棋では相手にも失礼だし。でも、ネット将棋では相手が受け方を知らないと潰せるという戦法をとる人が多いようですけど、何か美学が欠如しているような気もします。双方美しく組み合い(個人的には飛車が九筋を滑るように陰気に動く形にして)、四、五十手を超えてからやおら中盤戦に入るような長手数の将棋じゃないと指した気がしないんだけどなあ。あからさまな負け惜しみですが。しょうがないから深夜はAI囲碁をいじめて憂さを晴らす。ダメヅマリの味の悪さというファクターをプログラミングするのは難しいんでしょうね。
 

5.4
 仕事はいつもと同じ。ゆうべの舌の根も乾かぬうちに実名で指せる(そのほうが向いていると思う)ネット将棋道場に登録してしまう。でも、昨日みたいなヘボ将棋だといい物笑いなので、実戦はもう少し勉強してからにしよう。というわけで、定評ある低速の寄せを解消すべく、紀伊国屋Webに谷川浩司の「光速の寄せ」シリーズを発注。でも、囲碁鉄人指南シリーズや最強の碁打ちと言われるイー・チャンホの伝統碁シリーズも発注してしまったから、相変わらず腰が据わっていない。碁と将棋の本を一度に1万5千円も買いますか。それにしても、PS2東大将棋3の棋力認定問題はいやに難しいですね。やっと苦労して2級までたどりついたけど、初段はまだまだ遠そうだ。
 さて、「本格ミステリ02」(講談社ノベルス・1600円)が届きました。「鳥雲に」という短篇が収録されています。この作品が本格の年間ベスト集に入っていいのかという気がしないでもないので、なんとなく据わりの悪そうな作者メッセージも寄稿しております。
 

5.5
 小説脳が疲弊してきたので執筆はセーブ。ゲラを進めながら隠居の日曜日を過ごす。NHK将棋トーナメントの石田九段の解説を聞いていて「こういう人は幸せそうでいいな」と思った。後手は右玉風車かと期待したのだが違いましたね。その後、こども将棋名人戦まで観てしまう。着手が早いのにはびっくり。プロなら衰えだす歳から本格的に勉強しはじめたおじさんは早指しでは指せません。
 

[読書メモ]
(小説)二冊のゲラに専念のため今週はお休みです。
(小説以外)水原紫苑「星の肉体」(深夜叢書社)、石田芳夫「五段突破の詰碁100」(土屋書店)、加藤正夫「囲碁鉄人指南 中国流の魅力」(日本棋院)、浦野真彦「終盤で役立つ5手詰集Part2」(将棋世界5月号付録)。
 どうでもいい話ですが、歌人の水原紫苑さんはミーコという犬を飼っていたらしい。ほんとにどうでもよかった。


5.6
 急に暑くなったせいか、薬を嚥んだのに久々に早朝覚醒があってうろたえる。仕方なく仕事。GWを全部潰して連載がやっと最低ノルマの30枚に達する。仮眠後の夜は一冊目のゲラの一回目をようやく終える。本の初校ゲラは原則として二回チェックするので、二冊あると進みませんね。
 

5.7
 連載33枚の第一稿を仕上げてプリントアウト。疲れた。長篇Cは残りのパーツが少なくなってきたのだが、まだ300枚に達せず。夜は休養、カラオケの練習をするのは三カ月ぶりくらいかもしれない。相変わらず食欲はないのですが、少しずつ回復しているような気も。深夜は最近負け続きだったAI将棋2001の二段モードにクラニー流風車で快勝(翌日は高田流左玉でも完勝)。ひどいときとの落差がありすぎるけど、ネットで風車戦法の棋譜を採取して勉強した甲斐がありました。余勢を駆って高田流左玉の棋譜を採取しようとGoogleで検索したら、いきなりこの日記が出て役に立たず。そんなにマイナーな戦法だったのか。
 

5.8
 朝に宅急便のチャイムで起こされて調子が悪く(私は昼まで寝てるので起こさないでください)、小説脳が動かず。中篇はどうにか折り返しに達する。あとは連載やゲラなどの推敲に移行。では、私とは対照的に元気な秘書猫です。
 黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。こんにちは。きょうはクラニーせんせいがぬいぐるみ用のスプレーをかけてくれました。かわいた布ですぐふきとり、あとはゾウのエルちゃんにのっていい子にしてました。ミーコはお肌がつやつやになりました。わーい。
 

5.9
 連載をメールしてひと息。普通の月ならゲラが出るまで少し羽を伸ばせるのだが、今月は本のゲラと短篇が二つずつあるから無理そう。というわけで、中篇・長篇C・短篇Aを進め、4/15以来ほぼ一カ月ぶりに一日十枚書く(毎月同じようなことを書いているような気もするが)。夜はゲラ。
 さて、井上雅彦監修・異形コレクション「恐怖症」(光文社文庫・838円)が届きました。「布」という短篇を寄稿しています。今回はあらかじめ字数と行数のフォームを作ってから書きました。ホラーの「ホ」の字の話もちらっと振っています(笑)。
 

5.10
 一時に虎ノ門の神経科へ赴き、二十日分の薬をいただく。先生は私の顔を見るたびに「良くなってきた。気合が乗ってきた」と言ってくださるのだが、ほんとにそうなのだろうか。競走馬に譬えれば、出ればタイムオーバーの馬がやっと8着くらいに来るようになった感じじゃないかしら。たぶん最初の状態がひどすぎたのだろう。その後、博品館でぬいぐるみを買ってから秋葉原へ。まずソフマップで懸案のデジカメを購入。いつ行くかわからない取材用で、凝った使い方をするつもりはないから、iPhoto対応でいちばん安かった富士フイルム(イはナミ字でなければならないという商業印刷物校正者時代の瑣末な知識が唐突に甦ったりする)のFinePikを買う。当分はぬいぐるみばかり撮っているような気も。肝心の新型iMacはまだ見送り。来週ADSLの工事があるのですが、モデム設置工事会社から何も言ってこない。とりあえずLANカードを買っておこうと思ったんだけど、合わないものを買ってしまうのが怖くて見送り(だいたい原理がさっぱりわからないのだ)、ケーブルとかUSBハブポートとか無駄になりそうにないものだけ購入。上野まで歩いて帰宅後は一冊目のゲラをやっと仕上げる。
 たびたび、しつれいします。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。クラニーせんせいがおともだちをかってくれました。ワインレッドの猫のレディちゃんです。とっても上品できれいです。ミーコはたいていねてますけど、レディちゃんはずっとおすわりしています。えらいにゃとおもいます。おしまい。
 

5.11
 仕事は中篇・長篇Cなど。デジカメが動いたのでさっそく秘書猫を撮ってみる。ただ、まだかわいく撮れないしPCとの接続は次のステップだから、デスクトップピクチャがミーコ姫になるのは当分先の模様。夕方は北千住で黒服を調達。女性は苦労しないでしょうけど、下着まで黒で統一しようとすると結構大変なのです。
 

5.12
 昨日は朝の五時過ぎまでAI囲碁をいじめていたので、今週も隠居の日曜日。それでも一冊目のゲラを返送し、仕事をほぼ予定どおりこなす。長篇Cはようやく300枚をクリア。作家の日記を読んでいると睡眠薬の名前がよく出てきますが、効果の持続時間によって四つのタイプに分類されます。有名どころを例にとれば、超短期作用型(ハルシオン)、短期作用型(レンドルミン)、中期作用型(サイレース)、長期作用型(ドラール)。私が使っているドラールはいったん寝さえすれば理想の睡眠時間(私の場合は7時間くらい)がとれるのですが、効くまでがとにかく遅い。仕方がないから酒を飲みながらコンピュータ将棋を指したり碁を打ったりしていると、ますます目が冴えてしまう。困ったものだ。
 

[読書メモ]
(小説)宮部みゆき「本所深川ふしぎ草紙」(新潮文庫)、「あやし-怪-」(角川書店)、「かまいたち」(新潮文庫)。
 なぜか打ち合わせのときに「時代小説はどうですか?」と言われることが多いので、今週から趣味に合いそうなものを選んで読みはじめました。有名な武将や剣豪が出てくる作品は間違っても書けそうにないですが、怪しのものなら別かもしれない。折にふれて考証用の資料を買っておこうかな。
(小説以外)野矢茂樹「心と他者」(勁草書房)、谷川浩司「光速の寄せ5 寄せ手筋総集編」(日本将棋連盟)、ジャック・デリダ「言葉にのって」(ちくま学芸文庫)。
「哲学はホラーでオカルトはファンタジー」というネタを振りかけてやめたことがあったので、序説めいたものを書いてみます(たいしたことは言ってませんが)。「向こう側」の構築性という点で硬派のオカルトとファンタジー(ことに異世界ファンタジー)は通底しています。とりあえずこちらには興味がありません。一方、哲学は日常から始まります。その問題の立て方、論証の進め方には厳密さが要求されるので緻密な頭ではない私には向いていないのですが、ある問題を突き進めていくと、不意に不気味な光景が現れる(もしくは垣間見える)ことがあります。むろんセンターでもなんでもないんですけど、少なくとも〈私〉にとってはこれはホラーなんです(〈〉の意味については永井均の著作をお読みください)。換言すれば、私的言語ならぬ詩的言語を感じることがあるわけですね。さて、哲学は「向こう側」へは行きませんから、ここで日常や常識との理屈っぽいせめぎ合いになります。おかげで延々と論争ばかり続いているような印象があるのですが、私の好みの哲学はどこかに離人症的感覚もしくは世界没落体験が内包されているもので、土屋賢二(おやじ系エッセイストだと思われているかもしれませんが本職はちゃんとした哲学者)などは面白いんだけどクールすぎてちょっと肌に合わない。やはり、いくらあからさまに間違っていたとしても大森荘蔵はいいなと思います。全然まとまってないな。


5.13
 中篇・長篇C・短篇Aを進め、夜はゲラ。たまにはネット碁や将棋もと思うのだが、どうも電話嫌いと一脈通じるメンタリティがあるようで、なかなか接続できない。仕方なくAI将棋、先週の連敗に敵は発奮したらしく戦法を変えてきたのでまた勝てなくなってしまった。うーん。
 

5.14
 ADSLのモデム設置工事会社からやっと連絡が来る。パソコンを使ってる男の人なら誰でもできる工事という話なので、モデムとスプリッタを宅急便で送ってもらうことで話がまとまる。デジカメのストロボの焚き方をやっと覚えた私が「パソコンを使ってる男の人」の範疇に入るかどうか(まあ使ってることは使ってるんだけど)一抹の不安は残るのだが。それにしても、「パソコンはWindowsですよね?」と言われるのはちょっとむっとしますね。仕事は中篇と長篇Cを進め、とりあえず短篇Bを起稿、夜の仮眠後は連載と本のゲラ。体脂肪率が自己最低の9.0%まで落ちたため、今日から少しでも夜食を食べるようにする。深夜は高田流左玉で久々に東大将棋マスターに勝つ。基本的にクラニー流風車と同じパターンで、端歩を早めに突き越し(これはクラニー流左玉)、駒をたくさん利かせて端を破るわけです。四間飛車の藤井システムとも一脈通じてますね。それにしても、シラフより酒が入ったほうがましな将棋を指せるのはなぜだろう。
 さて、「小説すばる」6月号が届きました。「ロボットは怒る」という短篇を寄稿しています。連作「十人の戒められた奇妙な人々」の第二話なのですが、「奇想天外! ロボット小説大特集」に入るというので、作者としては頑張って合わせたつもりです。なお、瀬名秀明さんによるブックガイド「国産ロボット小説最前線」に拙作「BAD」が取り上げられていてびっくり。こんなところに入れていただいていいのかしら。
 

5.15
 連載のゲラを返送し、中篇・長篇C・短篇Bを少しずつ進めてからゲラ。今日はNTT局内でADSLの工事が行われたはずだが、ネットには接続できた。要するに、モデムが届いたら接続してパソコンの設定を変えればいいのだろう。なお、管理人さんによるとiBookにLANカードは不必要なのだそうだ。道理で変だと思った。相変わらず基本的なことがわかってないな。深夜はAI囲碁、録画したNHK囲碁トーナメントの大矢九段の解説を聞いて碁はやはり途中で何度も地合いの計算をしながら打たねばならんのだと考えを改め、かなり時間をかけて打ってみる。結果は最強モードに9子置かせて82目勝ち。相手がヘボすぎて飽きたから今度は碁会所にでも行ってみようかな。
 

5.16
 久々に早朝覚醒が起きたので仕方なく仕事。とりあえず連載を再開し、長篇Cを進めていたら待望のモデムが届く。寝不足で死んでいたのだが、ケーブルが足りないのでよれよれ状態で秋葉原まで買いに行き、どうにか接続を完了する。だが、ここで思わぬ陥穽が口を開けていたのであった。どうしても接続パスワードを思い出せないのだ。オンライン上で一度変更したような記憶が朧げにあるのだが、何に変えたのかさっぱり思い出せない。手帳にも控えていない。名刺の裏に書いたものをうっかり捨ててしまったような気がする。秘書猫も知らないと言う。いずれにしても、自分の記憶力の衰えを考慮しなかった報いである(二十代のころは驚異的な記憶力を誇っていたはずだが、かなり脳細胞が潰れているらしい)。これではモデムがあっても宝の持ち腐れである。パソコンに関してはむやみに気が短い私は、それなら元のプランに戻そうと思ってサポートセンターへ電話したのだが、ひと月もかかってしまうらしい。やむなくそのままにしたものの、パスワード再発行の書類は封書で来るから、一週間くらいネットとメールが使えないようだ。まったく、何をやってることやら。
 ついでにお知らせしておきますと、去年のウイルス騒ぎで半年前からメールアドレスが変わっております。一部の資料に載っているplalaのkranyのアドレスに出しても届きません。間違い電話かもしれませんが、前に「締め切りですが、いかがでしょうか」というまったく身におぼえのない恐ろしい留守番電話が入っていたことがあるので、念のために書いておきます。現在はODNに移っています。
 

5.17
 連載・中篇・長篇C・短篇B・ゲラを進めたあと、夜は昨日のリベンジとばかりにデジカメと格闘、カードリーダーによる映像の取りこみに成功する。さらに試行錯誤の末、デスクトップピクチャがついにミーコ姫になる。昨日の失敗は思わぬ落とし穴に転落しただけであって、私は決して救いようのないローテクではないのだ。とにかく、これで一つの宿願を達成しました。うれしいにゃ。Macはとにかくフォルダの階層化が楽しいので(だからOSXには転向したくない)、とりあえずぬいぐるみフォルダの中にミーコ姫フォルダを作る。作業に没頭しているうちに食事を忘れ、今日はついに49.0kgまで落ちてしまった。明日からは無理にでも食べなければ。
 

5.18
 長篇Cが大詰めなのだが、小説脳の疲弊が著しく途中で打ち切る。
 森内俊之八段が丸山忠久名人をストレートで破り将棋の名人位を獲得、「獲得した公式タイトルは名人だけ」という地味な名人が二人続くことになった。これがいかに特異かと言うと、名人になるためにはまずプロになり(そもそもこれが難関)、C2・C1・B2・B1・Aと厳しい順位戦を勝ち抜いて昇級していかなければならない。棋聖三期で九段の資格がある屋敷七段はC1から十年以上も抜け出せず、王座と十段を獲ったことがある福崎八段はB1どまりでA級に一度も昇級していない。千勝棋士で二冠王になったこともある内藤九段は惜しいところでチャンスを逃し、ついに挑戦者にはなれなかった。名人になるのは実に大変なのである。それだけの実力があるのに獲得タイトルが名人だけとは。それにしても、Googleのヒット数が某特殊小説家より少ない将棋の名人って地味すぎるよなあ。
 

5.19
 今日は隠居の日曜日ではなく、長篇Cの追いこみ、とにかく最後まで書く。これで来月上旬には渡せそうだ。それにしても、ずいぶん無駄なことを書いたつもりなのにどうして350枚にも達しなかったのだろう。我ながら謎だ。夜の仮眠後は連作幻想ホラー短篇集「夢見の家」の初校ゲラの第一回校正をようやく了える。じっくり見てたらむちゃくちゃ時間がかかってしまった。文章のディテールが気になりだすとキリがないんですけどね。


5.20
 長篇Cを最後までプリントアウト、AI将棋と囲碁の盤面編集機能を使って詰め将棋と碁の問題を印刷。これであとは推敲のみ。というわけで久々の休日にする。
 

5.21
 連載・中篇・短篇A、夜はゲラ。反動で亀のようにしか進まず。長篇Cがひと区切りついたから三日から一週間くらい休みたいところなのだが、そうも言っていられない。それだけの休暇があれば何をするかと考えても、碁会所・将棋道場・寄席・蕎麦屋のたぐいしか思い浮かばないんだけど。
 

5.22
 連載・中篇・短篇B、夜はゲラ。まだパスワードが届かず、メールも読めず。明日あたり届くかしら。
 

5.23
 ついにパスワードが届き、ネット常時接続になりました。確かに速くなったような気がする。メール環境も復活しました。とりあえずひと息です。
 

[読書メモ]
(小説)井上雅彦監修「恐怖症」(光文社文庫)、飯野文彦・小林泰三・田中哲弥・田中啓文・牧野修・森奈津子「蚊-か-コレクション」(電撃文庫)。
 相変わらず長篇に手が伸びず、アンソロジーの短篇ばかり読んでいました。「恐怖症」の牧野さんの紹介のところで「顔を剥ぎ取って物語を脱構築していく倉阪鬼一郎の手法とは対照的」と記されているのは本質を衝いているような気がします。脱構築といえばポストモダンですが、どうも自分は遅れてきた(ことによると早すぎた)ポストモダンなのではないかという自覚症状がなんとなくあります。ただ、アニメやコミックやゲームなどのオタク的教養がすっぽりと抜け落ちているので、動物ならぬ「ぬいぐるみ化するポストモダン」でしょうか。どうもわけがわからんな。
(小説以外)谷川浩司「光速の寄せ1 振り飛車破りの巻」(日本将棋連盟)、中谷和男「拒食症の女たち」(廣済堂出版)、小松和彦編「怪異の民俗学5 天狗と山姥」(河出書房新社)、谷川浩司「光速の寄せ3 矢倉くずし初級編」(日本将棋連盟)、小林覚「石を取る手筋 初段・二段・三段」(成美堂出版)、増川宏一「碁打ち・将棋指しの江戸」(平凡社選書)、青山拓央「タイムトラベルの哲学」(講談社)、石川英輔「大江戸番付づくし」(実業之日本社)。


5.24
 昨夜は寝る前に将棋と碁はやるまいと堅く心に誓って久々に聖書を読みはじめたのだが、わが意志はあまりに弱く、結局退屈になって東大将棋をやってしまう。高田流左玉でマスターに97手で快勝したからいいか。でも、シラフではAI将棋の二段モードに熱戦の末勝てないのに(たいてい130手を超えてます。よほど差をつけておかないと長手数の詰みを十秒で読むコンピュータと五手詰めしか読めないヘボ初段の差が最後に出てしまう)、酔っぱらうと妙に手が見えるのはなぜだろう。一度べろべろに酔って小説を書いてみようかしら。よしたほうが無難か。
 暑くなってきたせいか、今日は二日連続の早朝覚醒で調子悪し。それでも小説脳はどうにか動き、連載・中篇・短篇B・短篇Aを進める。まるで壊れかけたパソコンみたいである。そういえば、パソコンの耐用年数は4年ということですが、専業作家になってちょうど4年が経ちます。パソコンなら買い替えられますけど、頭はそういうわけにいきませんからね。夜は連作短篇集「夢見の家」の初校の二回目がようやく終了。あとは最終チェックのみ。せっかく常時接続になったのだからと毎晩ネット碁につないでるんですが、誰からも挑戦状が来ないので最も格上の対局だけ手を読みながら観戦しています。やはりアマ六段クラスになると、手厚く打って力を溜めてからここぞというときにヨミの入った筋を放ちますね。ケイマツギとか一見筋っぽくてかっこいい手をノータイムで打ち、結局それで墓穴を掘ってしまうヘボ四段には勉強になります。
 

5.25
 今日は昼過ぎまで寝られたのだが、かえって調子が悪い。どうも不定愁訴だな。ちっとも治っていないような気も。仕事は連載・中篇・短篇Bを進め、「夢見の家」の初校ゲラを完成させる。約一カ月もかかってしまった。深夜は宿敵AI将棋と相矢倉から完全に優勢に立ったのだが、ほとんど裸で入玉してきた相手をとらえきれず150手で逆転負け。棋譜はたくさん保存してあるんですけど、笑われそうな将棋がかなりあります。
 さて、「小説推理」7月号が届きました。「The End」連載第9回が掲載されています。今回は珍しく話が動いていますが、次はまた停滞するかも。それにしても、途中に五十ページくらい「小説幻妖」が混じっているような造りですね(笑)。なんだか隔世の感があります。
 

5.26
 例によって隠居の日曜日。ゲラを返送し、連載などを少しずつ進める。夜の仮眠後は長篇Cの推敲に着手。連日続くAI将棋2001二段モードとの悲壮な戦いは、ウソ矢倉から風車に組むと相手にもがっちり組まれるので今日は陽動振り飛車から理想形を作り、珍しくガンガン攻めて勝勢になってからしぶとく受けられているうちに根負けしてヘボ手を連発、またしても入玉されてしまい178手で投了。自分が情けなくなりました。
 

5.27
 横溝賞のパーティの予定があったのだが、テンションが上がらず体調は悪く、結局またキャンセルしてしまう。せっかく初めてご招待いただいたのに申し訳ありませんでした。営業活動もせねばと思い、ひところはパーティやコンベンションに端から出ていたんですけど、本当は人の多いところが苦手なのです。公の場から姿を消して久しいので(大仰だな)、来月の下旬あたりには復活したいところ。小説脳も動かず、長篇Cの推敲に専念。夜は鬱々とブランショを読んでました。駄目だなあ。
 

5.28
 昨日よりかなり回復、連載・中篇・短篇B・短篇Aを進める。夜は長篇Cの第一次推敲を完了。深夜はまたネット将棋を指してみたけど、やはり向いてないですね。しかも、なぜか必ず相手が私の最も苦手な三間飛車の急戦で来るのでひどい内容でした。無理に高田流まがいに行っては潰されてます。悔しいのでAI囲碁をいじめながらまた徹夜してしまった。駄目だなあ。
 さて、「全国俳誌ダイジェスト 俳壇抄18号」(マルホ株式会社、非売品)が届きました。「豈」の項目で拙句「いちおくのかばねのうへの淑気かな」を採っていただいています。二度目だったかな? 医薬品メーカーのメセナのようです。
 

5.29
 連載・中篇・エッセイを進める。中篇はようやく百ページに達する。ここからはスピードアップするはず。こんなアホな小説を思いついても書くのは私だけだろう。その後は長篇Cの第一次推敲のプリントアウトに移る。かなり疲れたので夜は静養。深夜はぼうっとネット碁を観戦していると、こういうときに限って挑戦状が届く。せっかくだから受けたら上辺でやり損なってひどい持ちこみをしてしまい、作り碁にするには差がありすぎるから潔く投了。AI囲碁をいじめる感覚で無理っぽい手を打ったら高段者には通用しませんね。そういえば、まだ併せて数回ですがネット碁も将棋も全部負けてます。勉強すればするほどヘボになっていくような気も。駄目だなあ。
 

5.30
 一時半より虎ノ門の神経科、例によって二十日分の薬をいただく。リビングの照明が寿命でご臨終したようなので(パーツを換えても点灯しない)、その後は秋葉原に回り新しいものを買う。帰宅後に取り付けると首尾よく光が戻りほっとする。鬱状態のときに蛍光灯が切れかけたり点かなくなったりすると、実に厭な感じになるものです。ゆうべは酒と睡眠薬を飲んだ状態で蛍光灯を直そうとして、前に自分で組み立てた不安定な椅子に乗ったら思いきり転倒、危うく大ケガをするところでした(後頭部を強打したら死んでたかも)。皆さんもご注意ください。夜は付箋を貼ったり剥がしたりしながら中篇の前半50ページ分を読み返す。
 

5.31
 三時より日暮里ルノアールで講談社のA元さんと打ち合わせ。長篇の再校ゲラを受け取る。タイトルが未定だったので発表できなかったのですが、やっと決定しました。「青い館の崩壊 -ブルー・ローズ殺人事件」(講談社ノベルス)、7月上旬に発売予定です。二段組で280ページもありますから、私にとっては大作です。ゴーストハンター・シリーズの一冊なのですが(ミーコ姫も大活躍)、もちろん単独で読めます。ちなみに、共訳を除く訳書が3冊あるため、区切りのいい30冊目の著訳書になります。今年の上半期は短篇ばかりで結局一冊も本が出なかったので、下半期に帳尻を合わせたいところですね。なお、今月の執筆枚数は193枚でした。無理に200枚は書かないようにしています。来月は日程がタイトなんですけど・・・。
 話変わって、協調性がないせいか、私は団体スポーツ競技の面白さがさっぱりわかりません(野球はピッチャー対バッターの一対一の要素が大きいからOK)。今日始まったサッカーのワールドカップはうるさいから早く終わってくれないかしら。申し訳ありませんが、ほうぼうのWeb日記でサッカーの話題が出ると必ずそこだけ飛ばして読んでます。これには微妙にトラウマが絡んでいるかもしれません。最近は四日市に押されてとんと駄目ですけど、私が生まれた三重県上野市は昔からサッカーが盛んで(南アフリカのキャンプ地になったので盛り上がっているらしい)、母校の上野高校は全国大会で準優勝の経験があります。そんなわけで、体育の授業ではよくサッカーをやらされました。私はたまにボールが飛んできたら必ずエリアの外へ大きく蹴り出してましたけど。一非国民の率直な感想でした。
 

[読書メモ]
(小説)岬兄吾・大原まり子編「SFバカ本 天然パラダイス篇」(メディアファクトリー)、本格ミステリ作家クラブ編「本格ミステリ02」(講談社ノベルス)。
 相変わらず読むは短篇ばかりなり。俳句になってるな。
(小説以外)谷川浩司「光速の寄せ4 必勝! 矢倉応用編」(日本将棋連盟)、内藤みか「別れても、バカな人」(幻冬舎)、日本棋院編「囲碁鉄人指南 神授の手筋」(日本棋院)、西研「実存からの冒険」(ちくま学芸文庫)、鶴見済「完全自殺マニュアル」(太田出版)、工藤紀夫「二子強くなるヨセ学」(フローラル出版)。
 神授の手筋って、いい響きの言葉ですね。そういう手を打ってみたいものだ。