11.1
 長篇書き下ろしホラー「泉」(白泉社、12月20日刊行予定、詳細は同社のHPで)の初校ゲラが届く。日程がタイトだから、本は当分あまり読めないな。ミステリー系を除く長篇ホラーに関しては「ブラッド」の先へ行こうとしていろいろと試行錯誤をしてきたのですが、そんなところへ行っても何もいいことはなさそうなので(重めの苦笑)、今回は作中で百物語をやっている懐かしいテイストで書いてみました。次回作はまたとんでもない方向へ飛ぶのですが。なお、「ミステリークラブ」ではなくただの「文学サークル」ですからよろしく(>関係者の方)。
 先月の執筆枚数は181枚でした。今月はゲラ戻しが三冊、取材旅行もあるから減ってしまうかも。あと二カ月しかないのか。
 

11.2
 連載・長篇A・長篇B・短篇A・短篇のゲラ・短篇集のゲラ・長篇のゲラ。以上。では、今週の秘書猫です。
 みなさん、こんにちは、黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。こんしゅうはJフォーラムにいきました。ミーニャはうるさいので、ライオンのマルちゃんをつれていきました。いっぱいおともだちにかわいがってもらいました。わーい。
 

[読書メモ]
(小説)島田荘司「魔神の遊戯」(文藝春秋)、霞流一「首断ち六地蔵」(カッパ・ノベルス)、光原百合「十八の夏」(双葉社)、有栖川有栖「マレー鉄道の謎」(講談社ノベルス)。
 今週は某アンケートの追いこみ。「魔神の遊戯」巻末の著作リストを見ると、「天に昇った男」までの小説作品は全部読んでるんですが、どうして八年も空いてしまったのかしら。久々に島田節を聴くとすごく懐かしかったりしますね。「首断ち六地蔵」はここまでやりますか。短篇に還元すれば第五話がむちゃくちゃ好み。これを長篇にしなかったのは凄いけど、ちょっともったいないような気も。「十八の夏」のベストは断然「イノセント・デイズ」。誰か似たような感想を書いてるかもしれませんが、いままで不足気味だった塩気がきいていて最も口に合いました。私の好きな松本清張の根の暗い短篇を彷彿させます。ある小道具の使い方も秀逸。「マレー鉄道の謎」は国の中の高原、高原の中の密室という同心円的物語空間が構造と響き合っている作品。個人的には、土星の輪のような周縁部と舞台を異郷に設定した必然性をも保証する渋めの仕掛けが照応しているところに最も反応してました。ぼかして書くと坊主の寝言みたいですが。というわけで、あまり消化できなかったなあ・・・。
(小説以外)高橋靖直編「学校制度と社会」(玉川大学出版部)、山本夏彦「生きている人と死んだ人」(文藝春秋、たぶん三回目)。
 稀代の文章家・山本夏彦翁の真骨頂は追悼文でしょう。私が編集者なら多くの著作に分散している「山本夏彦追悼文集成」を企画するのですが。



11.3
 連載の追いこみモードなるも、どうも言葉が死んでいるので隠居方面へ逃避。NHK将棋トーナメントの解説者が一目瞭然の一手詰めを見逃したので驚く。プロでも魔が差すんですね。その後は気を取り直して仕事。
 

11.4
 連載をどうにか最後まで書く。今回は25枚しか書けなかった。その後はゲラに専念。短篇集はやっと山を越えたかな。
 季刊「幻想文学」の古くからのレビュアーだった歌人の小林孝夫さんの思いがけない訃報に接する(ニュースソースは幻想的掲示板)。お会いしたのは一度きりなのですが、以前より「淡きこと水のごとき交わり」がありました。慎んでご冥福をお祈りいたします。追悼、一句。
 玲瓏と去りゆく者の天路かな


11.5
 連載をプリントアウトして推敲。取材した写真をiMacのモニターに映して書こうとしたのだが、相変わらず執筆はワープロ専用機だし、ほとんど意味がなかった。夜は長篇のゲラに専念。
 

11.6
 連載をメールし、長篇A・短篇Aを進めてからゲラの追いこみ。今週は人の小説を読めない。あまりにも鬱な内容で生きる気力を根こそぎ奪い取られ、かえって元気が出るような作品を読みたいものだが、自分で書けばいいか。
 

11.7
 長篇のゲラを返送し、とりあえずひと息つく。でも、大きなデータの欠落があったからさほど解放感はないな。執筆後は散髪、夜は久々に読書モード。
 

11.8
 言葉の手ごたえがなくなってきたので、執筆を早めに打ち切る。暑くても寒くても鬱になるのかしら。困ったものだ。夜は短篇集の校閲ゲラのチェックとドッキング作業にかかる。こんなに丁寧にやる必要はないんだけど、性分だからやむなし。
 

11.9
 昨日より回復、長篇Aは第三章まで終了。夜はドッキング作業を完了。
 さて、業務連絡です。来週の14日から取材旅行に出ます。京フェスを経て17日に戻ります。その間、メールを読めませんのでご了解ください。また、集英社の三賞パーティには参れません。会場で黒猫を探さないでください。では、今週の秘書猫です。
 みなさん、こんにちは。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。こんしゅうは、りょうよう中のおともだちにぬいさんをおくりました。早くよくなるといいにゃ。らいしゅうはクラニーせんせいが旅行につれてってくれるそうです。たのしみだにゃ。おしまい。
 

[読書メモ]
(小説)今週はお休み。
(小説以外)中島義道「不幸論」(PHP新書)、山田克也「はたして神は左利きか?」(講談社ブルーバックス)、スニーカー・ミステリ倶楽部編「綾辻行人ミステリ作家徹底解剖」(角川書店)、池田晶子「オン! 埴谷雄高との形而上対話」(講談社)、岸田秀「一神教vs多神教」(新書館)、町沢静夫「あなたの隣の狂気」(大和書房)、大平健「拒食の喜び、媚態の憂うつ」(岩波書店)、「サラブレッド101頭の死に方」(アスペクト)、「サラブレッド99頭の死に方」(流星社)、長田勇ほか「『人間教育』物語りのパラドックス 現代学校文化論」(川島書店)。
 中島義道の著作はわりと当たり外れがあるのですが、「不幸論」はテンションが高くて当たりのほう。でも、「幸福教がわが世の春を謳歌している祖国で、きわめて少数ながら私と似かよった感受性の人が虐待され迫害されていることを見るにしのびず、そういう人にわずかにエールを送りたいだけである」って、そんなに力んでもらわなくてもどうにかやってますから。「綾辻行人ミステリ作家徹底解剖」所収の笹川吉晴「記憶の囁き」は力作評論。やはりただの酔っぱらいじゃないな(笑)。「オン!」はとても風通しのいい快著。「無を表現することは可能か否か」という対話などはことにスリリングでした。「思想は詩句の閃きに似る」という箇所もまったく同感。この同い年の美人哲学者の著作はもう少し読もうかな。岸田秀の言説は基本的には首肯できるんですが(イデオロギーにも宗教にもオカルトにも行けない人なので)、哲学的な深みに欠けるのはかなり致命的かも。「唯幻論なんていう説明原理も所詮はまぼろしで一神教だよなあ」と内省的になったりしたら大きな声は出ないんだろうな。世は声の大きな人の天下なり。いや、大文字の一神教よりはずっといいんだけど。最後に、本を読んで泣くことはめったにないのですが、サラブレッドの死に方シリーズは思わず涙腺が緩みました。少年時代にテレビで骨折シーンを見て泣いたハマノパレードから、条件馬のときに初めて馬券を買ったアンバーシャダイ、ずいぶん損したゴーゴーゼット、最後に入れこんだオートマチック(こんな哀しい末路を辿っていたとは)まで、私の競馬人生が凝縮されています。



11.10
 いつもどおり半分隠居の日曜日。内藤國雄・加藤一二三両九段の六十代対決(解説・米長邦雄永世棋聖)はむちゃくちゃ面白いエンターテインメントだった。毎週このメンバーでやってもらえないかしら。
 さて、ずいぶん久々に著訳書リストとプロフィールが更新されています。サボっていてすいません。しかし、更新のたびに体重が減っているような気がするな。
 

11.11
 早起きしたものの、かなり鬱で午前中はぬいぐるみ状態。どうにか短篇Aと長篇Bを進め、やけを起こして短篇Bを起稿。夜は連載のゲラをチェックしたあと、短篇集のゲラの仕上げにかかる。次はいつオリジナル短篇集を出せるかと思うと、なかなか手を放せなかったりしますね。
 

11.12
 連載を再開、今日はオールダウナー系だったので執筆はあまり進まず。iMacのアイちゃんの顔に廃屋を映すと異様な雰囲気である。夜は短篇集の初校ゲラをようやく仕上げる。
 

11.13
 短篇集の著者校を戻し、久々に部屋からゲラがなくなる。その後は取材旅行の準備をしながら細切れに執筆。
 

11.14
 秘書猫をつれて正午に出発、6時過ぎに福知山に到着。山陰本線に乗るのは初めてだったのですが、関西本線と同じで接続の待ち時間が長く、伊賀上野へ帰るよりも時間がかかってしまった。いや、特急に乗ればいいんだけど。ホテルにチェックイン後、しばらく市内を散策。何もなさそうだから早めに引き返して静養。
 

11.15
 7時に起床。北近畿タンゴ鉄道に乗り、まずは鬼伝説で有名な大江へ。駅を出るといきなり正面に広がるのは鬼瓦公園、どこを見ても鬼ばかりで、あからさまに錯覚だがまるで町を挙げて私を出迎えているかのようだった。大江山に登ったらここだけで終わってしまうので、死ぬほど歩いて元伊勢神社外宮へ。伊勢神宮より由緒正しいという触れこみの、三重県人にとっては敵地のような場所である(宮津にも元伊勢と称する神社があり、本家争いをしているらしいのはいずこも同じ光景か)。貸し切り状態で参拝したあと、また死ぬほど歩いて二俣という山あいの無人駅にたどり着く。ここでは夜中に来たら気絶するほど怖いだろう猿田彦神社に詣でる。こう続けて神さびた社を見せられると丹後のほうが古いような気がしてきた。11時前に宮津に到着、しばらく市内を散策。観光地の天橋立は無視して、12時過ぎに経ヶ岬行きのバスに乗り、丹後半島の奥へ向かう。こちら側の海を見るのは修学旅行の能登半島以来かも。延々と揺られること一時間半、とんでもない田舎にある浦島神社に到着、長篇Aが滞りなく完成するように祈願する。続いて、神社に隣接する大田舎のテーマパーク浦島公園へ。ほとんど「ワンダーランドin大青山」の世界である(畑のど真ん中に忽然と現れる面妖な建物)。浦島館内の龍宮庵で筒川そばを食べたあと、うらしまシアターを見物。ここも完全貸し切りだったから秘書猫と一緒にゆっくり観る。解説されたのはすでに調べて知っていることばかりだったけど(ちなみに「丹後国風土記」の浦島伝説は日本最古)。丹後ちりめんの子猫を買ったあと、3時過ぎに帰りのバスに乗る。宮津行きの終バスは3時40分だったから危ないところだった。このテーマパークは5時まで営業してるんですが、いったいどうやって帰ればいいのかしら。もう一つ、コンサートにも使える200人収容の施設があるんですけど、地元の民謡大会以外に用途があるのかしら。次に、バスを途中下車して丹後郷土資料館へ。旧国分寺跡に建っているため、急峻な坂と石段を上らなければならない。案の定、ここも貸し切り。今日回ったところはことごとく私が唯一の客だった。見学後にパンフレットを調達、経塚の資料を入手できたのは収穫。またしても最終一つ手前のバスで岩滝へ。さんざん歩いて喫茶店を見つけて時間を潰したあと、再び北近畿タンゴ鉄道で豊岡へ。山陰本線の時間待ちのあいだに商店街を散歩、9時過ぎに福知山のホテルへ帰還。強行軍で疲れましたが、それなりに収穫はあったかな。
 

11.16
 8時過ぎにホテルをチェックアウト、京都に向かう。30分遅れで京フェス会場の教育文化センターに到着。「日本SF新人賞受賞者鼎談」を途中から見て蕎麦屋で昼食。2コマ目の「アブノーマルSFの世界」はラブドールを廃線に立たせて撮影する話が強く印象に残りました。本題とはあまり関係ありませんが。3時半ごろ本会を抜け出し、浅暮三文・福井健太の蕎麦メンツとともに北白川の藤芳という隠れ家めく蕎麦屋へ。長居をしてから合宿会場のさわや旅館に向かう。今年は作家率が低めだった。1コマ目は「喜多哲士の名盤アワー」。「中年を泣かす」というコンセプトですが、「夕焼けの空」では本当に泣きそうになってしまった。大広間で油を売ってから3コマ目の小林泰三プレゼンツ「玩具修理者&奇跡の詩人」へ。アングラ系演劇版「玩具修理者」は丁寧な造りで、かなり原作に忠実でした。噂に聞いていた「奇跡の詩人」はこれほどまでとは。ミーコを奇跡の詩人猫にしたら私の本より売れるかも。その後は大広間→寝部屋(やはり眠れず)→大広間→麻雀部屋(オーラスで逆転トップ)→大広間という展開で6時過ぎに浅暮さんと早めに抜ける。お疲れさまでした。
 

11.17
 9時過ぎに帰京、将棋を見てから4時まで爆睡。あとは日記を書いただけ。では、秘書猫のレポートです。
 みなさん、こんにちは。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。こんしゅうはクラニーせんせいに旅行につれてってもらいました。ウサギのローリーちゃん、オコジョのオコちゃん、ジョーちゃんといっしょにいきました。ホテルからはローソンが見えてきょねんより夜けいがきれいだったです。ミーコは神社にたくさんおまいりして、家内あんぜんをきがんしました。んーと、うらしまシアターでは小さいお姫さまがおどってました。とってもおもしろかったです。京フェスではおともだちにいっぱいかわいがってもらいました。ちょっとつかれましたが、たのしかったにゃ。おわり。
 さて、「小説すばる」12月号が届いていました。連作「十人の戒められた奇妙な人々」第四話「ライターは消える」が掲載されています(「一言万象」にもちらっと登板)。当初はこんなオチにするつもりはなかったんですけど・・・。なお、本作は区切りのいい長短とりまぜて150番目の作品になります。このペースならブラックウッドは超えられそうだな。


[読書メモ]
(小説)アンナ・カヴァン「愛の渇き」(サンリオSF文庫)、加門七海「大江山幻鬼行」(祥伝社文庫、再読)、アルフレッド・ベスター「コンピュータ・コネクション」(サンリオSF文庫)。
 なんとなく成り行きでサンリオSF文庫未読本消化に向かう。「愛の渇き」はカヴァン名義の初長篇(ずいぶん前に買ったのに読んでなかった)。カヴァンはカフカを意識した筆名のようですけど、「城」より「ずっとお城で暮らしてる」のほうが近い。アンナ・カヴァンとシャーリィ・ジャクスンは共通低音が似てますね。自伝的要素を折りこんだ普通小説なのですが、感触はかなりゴシック・ロマンス。幸薄さの結晶めくディテールには「氷」の萌芽も見えます。「コンピュータ・コネクション」はもうやりたい放題。ベスターはやはり変だな。巻末に詳細な訳注集があったらなおよかったかも。再刊を期待。
(小説以外)川端雅裕「謎の粒子-ニュートリノ」(丸善)、黒崎政男「デジタルを哲学する」(PHP新書)、高橋巖他「シュタイナー教育と子どもの暴力」(イザラ書房)。



11.18
 仕事に復帰。連載・短篇A・長篇B・長篇Aを少しずつ進める。まだ肩慣らし程度。夜は取材旅行のデジカメ写真の整理。秘書猫の写真だけ「ミーコ姫とおともだち」フォルダへ移すのが面倒だった。
 

11.19
 仕事はあまり進まず。「俳句の倉阪鬼一郎先生でしょうか」という電話がかかってきたので原稿依頼かと思いきや、四国の遍路コースの秘仏秘宝を集めた豪華写真集のセールス電話だった。名前の字面だけ見て、そういうものを買いそうな年寄りだと思ったのであろう。夜は東大将棋のマスターに初めて連日の勝利(昨日はミレニアム、今日は得意の右玉風車)。勝率は後手番のほうが良かったりする。桂馬を跳ねるのが好きだから横歩取りも試してるんですが、たいていボコボコにされますね。
 

11.20
 3時より神保町で実業之日本社の担当のS根さんおよび「ジェイ・ノベル」編集長のS木さんと打ち合わせ。来年から同誌で始まる不定期連作(大人のホラー)の件。これは取材が楽な下町を舞台にするつもりです。とりあえず一作目が追いこみモード。終了後は神田まつや経由で秋葉原に寄って帰宅。まつやは客さえ少なければベストなんだけど。
 

11.21
 連載・短篇A・長篇Aを進める。夕方は浅草へ蕎麦を食べに行き(久々に蕎上人で五色そば)、ペガサスのぬいぐるみを買って帰宅。夜は田舎から送ってきたケーブルテレビの録画ビデオ「上野天神祭完全中継」をようやく最後まで観る。言語不明瞭な保存会のおじいさんがスタジオのセンターで二時間出ずっぱりというつらい番組なので、さすがにかなりサーチをかけてしまった。これを観て喪われていた小学生時代の記憶が卒然と甦ったのですが、先頭の車坂町の子ども樽神輿は私もかついだことがあります。もっとも、甦ったのは神輿を回すときに肩を抜き忘れてひどく痛かったという記憶だから、何もいい思い出はないらしい。続いてやってきたのはギャル神輿、田舎ではギャルという言葉がまだ現役なんですね。いやしかし、鬼行列とだんじり行列は高レベルなので、ぜひ上野天神祭へお越しください(この日記は親戚じゅうに読まれているようだから多少は気を遣っていたりする)。
 

11.22
 短篇Aを最後まで書く。まだ完成稿には程遠し。夜は本日届いた「泉」の再校ゲラに着手。またしばらくゲラ地獄が続くかも。
 

11.23
 三種類のアンケートを投函。これでアンケート業(持ち出す一方で商売にはなってないけど)はマジック1。本業はあまりエンジンがかからず。では、今週の秘書猫です。
 黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です、こんにちは。クラニーせんせいがおともだちをかってくれました。ペガサスのペガちゃんです。ペガちゃんは背中に七いろの羽がはえてます。これで850円はえらいにゃとおもいました。おわり。
 

[読書メモ]
(小説)伊島りすと「飛行少女」(角川書店)、小林泰三「海を見る人」(早川書房)、瀬名秀明「あしたのロボット」(文藝春秋)。
 今週は某アンケートの追いこみ。「ジュリエット」がミニマムな本格ホラーなら、「飛行少女」はより大きな物語に挑んだ本格モダンホラー。上巻の「絵」の部分は快調でぞくぞくしたんですけど、下巻の「額縁」はちょっと。個人的には断然「ジュリエット」が好みなのですが、「飛行少女」のほうが一般受けするのかなあ。「海を見る人」は計算機片手に読む作品集という評判だったので難しい数式でも出てくるのかとびくびくしながら繙いたのですが、数字の多い歪んだ「夜の翼」の趣もあってべつだん抵抗なく読めました。ことに「母と子と渦を旋る冒険」は爆笑。「あしたのロボット」のベストは最もダウナー系の「ハル」。ロボットの表はテクノロジーで裏は哲学のロボット問題だと思うんですけど、絶妙の配合でぬいぐるみ愛好者の琴線に触れる部分もあります。
(小説以外)渡辺哲夫「知覚の呪縛」(ちくま学芸文庫)、杉浦日向子とソ連「もっとソバ屋で憩う」(新潮文庫、実質は三回目)、淡路修三「発想を変える淡路語録」(日本棋院)。
 「知覚の呪縛」は「死と狂気」に先立つ著書。世界没落体験はかなりわかるつもりなのですが、Sの症例は琴線に触れそうで触れなかった。随所で引用されている大森荘蔵の絡みについては書きだすと長くなりそうなので割愛。



11.24
 例によって半分隠居の日曜日。大相撲九州場所回顧。今場所は大至の解説デビューをリアルタイムで見られたのが収穫だった。相撲甚句をひとくさり唄ってから解説というのはどうか。この一番は、最年長関取が怒濤の寄り身で最年少関取を一蹴した大善-朝赤龍戦。
 

11.25
 長篇Bの構想を練り直す。この小説は未踏の東北地方へ取材に行かなければならないのですが、2月くらいかしら。その後は短篇Aを画面上で推敲してプリントアウト。夜はゲラの追いこみ。
 

11.26
 再校ゲラを返送し、短篇Cを起稿。連載・長篇B・長篇Aを進めてから、夕方は北千住でスラックスを調達。三河島からたまにこの街へ行くと物凄い大都会のように感じられたりする。
 さて、「小説推理」1月号が届きました。連載「The End」第15回が掲載されています。今回で累計500枚をクリアしました。15で割るとなんだかなあという気もしますが。
 

11.27
 連載・長篇A・長篇Bを進める。このところ毎日1時間は囲碁の勉強をしています。内容はプロの棋譜並べ、定石並べ、棋書読み、一人碁、AI囲碁いじめ、ネット碁観戦の組み合わせ。月刊「碁ワールド」だけでは棋譜が足りないから週刊「碁」にも手を出すようになってしまった。とりあえず来年は大会デビューが目標。
 

11.28
 執筆は昨日と同じ。長篇Aは150枚をクリア。去年のSF大会のころから腹案をしゃべってるのにまだこの枚数ですか。いっこうに資料読みが追いつかないんですけど、つくはずのない理屈を考えるのはだんだん徒労のような気がしてきたな。夕方、今年のラスト本「泉」のカバー見本が届く。ミーコがかわいく写っています(あ、カバーではありません)。夜は短篇Aの推敲。


11.29
 仕事はガス欠気味。長篇Bはやっと第三章が終わる。夜は第三句集の原稿作りの準備を終えてからAppleWorksで年賀状を作る。もちろん秘書猫の写真入り。しばらく休んでいたドローイングも再開。


11.30
 連載の第八章が終了。今月の執筆枚数は154枚でした。その後は意外に面倒な句稿作り。これとなかなか手が回らない連作短篇集の大幅加筆改稿は年内に目鼻をつけておきたいところなのですが。では、今週の秘書猫です。
 みなさん、こんにちは。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。こんしゅうは日なたぼっこしてました。クラニーせんせいのしょさいは、冬になるとお日さまがあたります。とってもぽかぽかして気もちいいです。おしまい。
 

[読書メモ]
(小説)キリル・ボンフィリオリ「深き森は悪魔のにおい」(サンリオSF文庫)、西崎憲編「マンスフィールド短篇集」(ちくま文庫)。
 ボンフィリオリはある意味ではひどくブリティッシュな作家。胡散臭くてわりと好みなのですが、これは売れなかっただろうなあ。「マンスフィールド短篇集」のベストは「風が吹く」。魂が浄化されるような作品です。
(小説以外)池田晶子「残酷人生論」(情報センター出版局)、「風と火と時と-中世丹後の考古資料-」(京都府立丹後歴史資料館)、木村聡「赤線跡を歩く」(ちくま文庫)、依田紀基「囲碁鉄人指南 決め手発見力」(日本棋院)、リー・スモーリン「宇宙は自ら進化した ダーウィンから量子重力理論へ」(NHK出版)、「新訂 名店案内そば店一○○」(柴田書店、実質は再読)、池田晶子編・永沢まこと絵「2001年哲学の旅」(新潮社)。
 池田晶子の言説は気っぷがいいんですけど、個人的にはダウナー系じゃないと元気が出なかったりしますね。