5.1
 陰々滅々とした三つの小説を進める(進まず)。これでは気分が変わらないではないか。ふと気づくと、もう5月である。今月は20日までに7つのハードルを越え(あ、軽いめまいが)、下旬に取材へ行けるかしら。
 

5.2
 連載と短篇Aをとりあえず最後まで書く。
 うらぶれた免罪符を買うために耳障りな声を張り上げる「口の臭い手合い」(by中井英夫)が世の中には多すぎる、と思ったりする今日この頃。これまたうらぶれた「理由」を探し求めて、自分の手が白いことを証し立てようとする者たち・・・。私は、声の大きい人間が、嫌いだ。
 

5.3
 修羅場中につき、今年もSFセミナーには行けず。ひたすら仕事。では、めそめそしている今週の秘書猫です。
 黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です、こんにちは。こんしゅうは、クラニーせんせいといっしょにおくばさんのおそう式にでました。おともだちがなくなったので、ミーコはとってもかなしいです。メールすればよかったかにゃ、ぬいさんをおくればよかったかにゃ・・・くすん。クトゥルーちゃん、しっかりおともするんだよ。・・・ばいばい。
 

[読書メモ]
(小説)読むは自分のゲラばかりなり。
(小説以外)森澄雄句集「花間」(朝日新聞社)、江國滋句集「癌め」(富士見書房)、大島一雄「人はなぜ日記を書くか」(芳賀書店)。


5.4
 連載に続き、短篇Aを画面上で推敲してプリントアウト。ゲラは「田舎の事件」から「無言劇」へスイッチ。週にゲラ二冊はいかにもつらいな。毎週これだと年百冊に近いペースになってしまうけど。
 

5.5
 短篇Bを最後まで書き、「学校の事件」のリニューアルの第二段階まで終了。夜は「田舎の事件」のゲラの最終チェックと連載の推敲。
 私はハードルをさくっと跳び越えることができない。いったん立ち止まって手をかけ、よいしょとまたいで越えるのである。したがって、なかなか前へ進まない(手から離れてくれない)のであった。
 

5.6
 疲れていてなおかつ飲みすぎたときにたまに見るのだが、内実のはっきりしない罪を犯して死刑になる悪夢を見て厭な感じで目覚める。気を取り直して連載をメール、「田舎の事件」のゲラを返送。さらに「無言劇」のゲラの最終チェックをして返送。これで残るハードルはあと4つ。夜は長篇Bの第一部の推敲にかかる。だいぶ脳細胞が潰れてきたような気が。どうでもいいけど、浅香唯の「セシル」はいい歌ですね。ほんとにどうでもよかった。
 

5.7
 今日は面妖な古代の相撲部屋の夢を見て早朝覚醒。また睡眠障害かしら。連載の最終回と長篇Bの第二部と短篇Cを起稿、短篇Bを画面上で推敲してプリントアウト。
 

5.8
 ふと気づくと、今月で専業作家になってちょうど五年ですね。よくこの作風で五年も持ったものである。狭いところから恐縮ですが、ご愛読いただいている少数の皆様に御礼申し上げます。今後もべつに脚光を浴びるでも消えるでもなく、淡々と自分の仕事ができればなあと思ったりしております。よろしくお願いいたします。
 

5.9
 また早朝に目が覚めてしまい不調。寝たり起きたりしながら各種推敲など。気分転換のため、夕方は秘書猫をつれて近所の公園へツツジ見物に出かける。ツツジ以外の花の名前がさっぱりわからないのはなんだかなあという気がする。ところで、ツツジは躑躅と書くと急に毒々しくなりますね。そこで、唐突に一句。
 あの角に鬱々と咲く躑躅かな
 

5.10
 連載・長篇B・短篇Cを進める。腕時計が同時に止まったので初めて電池交換に出す。時計が止まったり蛍光灯が切れたりするのはどうも神経に悪い。
 

5.11
 相変わらず低空飛行が続く。囲碁将棋番組のピックアップはスーパー早碁の羽根天元vs柳九段。羽根天元はやはり強いな。左下隅のツケコシからの鮮やかなまとめ方は見事でした。では、今週の秘書猫です。
 みなさん、こんにちは。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。こんしゅうは、クラニーせんせいがツツジけんぶつにつれてってくれました。でも、ツツジさんはだいぶしょぼんとしてました。ミーコは白いつぶつぶっとしたお花が気に入りました。おわり。
 なお、今週のミッドナイト・ソング(新機軸)は中島みゆき「誕生」でした。
 

[読書メモ]
(小説)相変わらず読むは自分の小説ばかりなり。
(小説以外)「星月の惨劇 西川徹郎の世界」(茜屋書店)、シオラン「思想の黄昏」(紀伊国屋書店)、中島義道「ぐれる!」(新潮新書)、山本夏彦「百年分を一時間で」「誰か『戦前』を知らないか」(以上、文春新書)、平山夢明「東京伝説」(竹書房文庫)、山本夏彦/久世光彦「昭和恋々」(文春文庫)、石田芳夫「基本詰め碁100題」(日本文芸社)。
「星月の惨劇」は五十篇余の俳人論・エッセイ、自選五百句などを収録した七百ページを超える大冊。私が連想したのはなぜか誰も言及していない大原テルカズなのですが、むろん途方もない多作で鳴る俳人のこと、私のアンテナがそちらの方面にばかり反応していたというだけのことかもしれない。ある種の危機的光景から幸薄さと狂気と引き攣った笑いが伝わる実存俳人の秀句を厳選15句。
 ねむれぬから隣家の馬をなぐりに行く
 食器持って集まれ脳髄の白い木
 祭あと毛がわあわあと山に
 真昼の寺に大きな箒死んでいる
 少しずつピアノが腐爛春の家
 尖塔のなかの死螢を掃いて下さい
 抽斗の中の月山山系へ行きて帰らず
 全植物の戦慄が見え寺が見え
 「絞メテクダサイ」桔梗ガ瓶カラ首ヲ出シ
 地下癌院のエレベーターののっぺらぼうの他人
 キャアキャアト図書館ヲ運ブ秋ノ蟻
 さくら散って火夫らは耳を剃り落とす
 バトミントンニ夜叉モ混ジッテ秋ノクレ
 舌の国では舌が靴屋で靴探す
 「私ハダレ、私ハダレナノ」ト叫ブ白菊
 では、今週のシオランです。
「古い聖堂の大時計が時の音を夜のしじまにひびかせるとき、その音は時間が世界の外に遁走してしまったことを、さらに苦しげに私たちに啓示するのだ。そのとき、時間の不在の巨大さは瞬間の終りなき溜息となり、私たちの精神と肉体はそこに埋もれるのである」


5.12
 「学校の事件」のリニューアル版と短篇Aをメール。残るハードルはあと2つ。その後は連載・長篇B・短篇Cを進める。
 

5.13
 短篇Bをメールし、長篇Bの第一部の修正プリントアウトを完了。やっとトンネルを抜ける。夜は時刻表を繙いて取材旅行の日程を検討。蕎麦屋のガイドブックを見ていた時間のほうが長かったりするのだが。
 

5.14
 というわけでホテルを予約する。来週の21(水)〜23(金)は二泊三日の東北取材旅行につき(最終日は山形蕎麦ツアーだけど)連絡が取れませんのでよろしくお願いします(>関係者各位)。なお、私のPHSはかなり前から壊れていて通じません。仮に直っても持ち歩く習慣がないため役に立たないと思います。あしからずご了承下さい。
 

5.15
 四時より神保町の古瀬戸、角川書店のK田さんと打ち合わせ。長篇Bの第一部を渡す。
しばらくひきこもっていたせいか、道を歩いているときに急に立ちくらみを起こしたのでおとなしく帰宅。


5.16
 連載・長篇B・短篇Cを少しずつ進める。夜はリニューアル長篇の検討に着手。また鬱々としてきたから、デスクトップピクチャを友人が送ってくれたかわいい子猫の写真に変えてみる。見れば見るほど美猫だなあ。喉のあたりをクリックしてじゃらしてるんですが、べつに反応はしませんね。したら怖いけど。


5.17
 昨日と同じく連載・長篇B・短篇C。夜は今年の下半期以降に執筆する予定のミステリー系長篇のプロット作りなど。
 それになんとなく付随してふと思いついたことをひと言。私はジャンル政治や経営論には関心がないので以下はイデア論(めいたもの)なのですが、古くて新しく、やはり古いような気もする「推理派」(1)と「文学派」(2)の対立は「本格ミステリー=本格推理派」(1')と「本格ミステリー⊃本格推理派」(2')のそれにある程度は置換できるような気がします(さらにこの外側にただの「ミステリー」があったりするので面倒。個人的にはミステリー⊃本格ミステリー⊃本格推理で、これはSF⊃本格SF⊃ハードSFとパラレルだと考えているのですが)。一つ補助線を引きますと、ポオは探偵小説の鼻祖(A)であると同時にクロスワード・パズルの創始者(B)であり怪奇幻想作家および詩人(C)でもありました。めちゃめちゃ大雑把にまとめると(ほんとに大雑把ですが)、A+B=1、A+C=2という図式になるのではないかと思ったりします。さて、ここから話はどんどん飛ぶんですけど、ジャンルとしての幻想文学というのも一応なんとなくあるのですが、基本的に幻想文学はハイパージャンルです。で、「ミステリーは幻想文学じゃない」という見解は明らかに視野狭窄であって、ミステリーでありなおかつ幻想文学であるという作例はあるし、まだまだ可能性があると考えています。おぼつかなくまとめると、本格推理(コード型、読者参加型、パズラー)ではないが本格ミステリーである領域のさらに一部が幻想文学とミステリーのクロスする部分と重なっていて、その本質の一つはマニエリスムなのではないかと睨んでいるのですが、うーん、かなりわかりにくいかも・・・。


5.18
 どれもこれも進まず。囲碁将棋番組のピックアップはNHK囲碁トーナメントの清成哲也九段vs石田芳夫九段。石田九段はあの正確無比な解説を聞いているかぎり誰にも負けそうな気がしないのだが(応援していたのは清成九段のほうだけど)。では、今週の秘書猫です。
 黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です、こんにちは。こんしゅうは、いなかのおばあちゃんにおへんじをかきました。んーと、それだけかにゃ。
 最後に、今週のミッドナイト・ソングは鬼束ちひろ「流星群」でした。
 

[読書メモ]
(小説)今邑彩「卍の殺人」(創元推理文庫)。
 腹案とかぶってるんじゃなかろうかとビクビクしながら読んだのですが、幸い大丈夫でした。最近こういう読書が多いなあ・・・。
(小説以外)山本夏彦「一寸さきはヤミがいい」(新潮社)、「最後の波の音」(文藝春秋)、「名局細解 武宮正樹九段VS林海峰名誉天元」(「囲碁」6月号付録)、ナムコ・ナンジャタウン「あなたの隣の怖い話コンテスト」事務局編「私たちが体験した超怖い話」(二見文庫)、若一光司「自殺者の時代 20世紀の144人」(幻冬舎アウトロー文庫)、呉智英「犬儒派だもの」(双葉社)、島朗「島ノート 振り飛車編」(講談社)、谷徹「これが現象学だ」(講談社現代新書)。
 故山本夏彦翁の全著作を完読。山本夏彦とシオランを足すと172年も生きたというのはとてつもない奇跡のように感じられるのだが、べつに足しても意味はないかもしれない。シオランは残り一冊。


5.19
 仕事の合間に取材旅行の準備。イヤーウィスパーと中山式アイマスクとメラトニン(と酒)がないと寝られないという因果な性分なので、そのあたりを忘れないようにする。これで最後にデジカメとミーコ姫を入れれば完璧。
 さて、「全国俳誌ダイジェスト 俳壇抄」第20号(マルホ株式会社)が届きました。「豈」の欄に拙句「春の宵見知らぬ絵襖をあける」が掲載されています。
 

5.20
 連載・長篇B・短篇Cを進めたあと、肩慣らしを兼ねて近所の三河島界隈をデジカメで撮影。夜は短篇Bのゲラをチェック。
 今年はどのジャンルの小説も消化不能につき、いっそ背を向けて洋書読みを再開。うーんしかし、ずいぶんブランクがあったから英語を忘れている。よくこれで翻訳家をやっていたものだ。テキストはアンナ・カヴァンの第一短篇集Asylum Piece、第二短篇集も併録されているお得なヴァージョンなのですが、さていつ読み終わることやら。
 将棋の名人戦は羽生竜王が森内前名人をストレート(一千日手を含む)で降して奪取。私はマイナーな名人の署名入りの免状コレクターなのですが、これで当分次のチャンスはないかも。まあ世間的には羽生名人竜王で申請者が増えるんだろうけど。
 

5.21
 東北取材旅行一日目。常磐線の各停に乗り、3時過ぎに某駅へ。こんな小説のモデルにしやがってと思われかねないから、どこかは秘密ということで(久々にゆっくり海を見たとのみ)。ほうぼうを歩いて撮影してからホテルに戻る。
 

5.22
 東北取材旅行二日目。また各停はつらいので特急に乗って(車内ニュースで本格ミステリ大賞の追加の件が繰り返し報じられていた)常磐線の終点・・・と書くと伏せようがないから次の取材地の仙台へ。1時過ぎにホテルリッチフィールド仙台にチェックインしたあと、秘書猫をつれて台原森林公園へ。ほかに観るところはいくらでもありそうなものだが、半分は取材なのだから仕方がない。周辺を撮影してから公園を散策、面妖な造りの仙台市科学館に入る。人が少なかったため秘書猫とともにゆっくり見物する。続いて、表示板上では近く見える(これが怖い)反対側の仙台文学館に向かう。さすがは森林公園と言うべきか、途中からえらいけもの道、遭難という言葉がしきりに脳裏をかすめる。こんなところで骨折でもしたら誰も助けに来ない。こうして難儀をして裏ルートからたどり着いてみれば、文学館はあいにく臨時休業。まあそんなものである。あの道を引き返す気はしないので車道に出て死ぬほど歩き、地下鉄の北仙台からいったんホテルに戻る。休養後は明日に備えて軽めの蕎麦ツアーと散策。
 

5.23
 東北取材旅行三日目。もっとも、ここからはただの道楽である。9時30分にホテルをチェックアウト、北仙台から仙山線に乗る。愛子で快速待ちがあったので「あやし」という駅名の表示板をむやみに撮影する。12時過ぎに山形に到着。仙台に比べるとぐっとローカル、ここなら津でも勝負になるかもしれない・・・と大津へ行ったときも書いたような気がするな。蕎麦ツアー一軒目は幸町の庄司屋で相もり板(外一とさらしな)、こんなにコシのあるさらしな(真っ白な蕎麦)は初めて食べました。これまでのさらしなのベストは日本橋利久庵だったのですが逆転したかも。二軒目は上町の竹ふく、季節の変わりそば(抹茶切り)を食す。細切りの江戸前でいい感じ。三軒目は東原町の梅そばまでひたすら歩く。細打ち田舎そばは本当に細かった。「蕎麦は細く、蕎麦湯は濃く」はいいですね。さて、「山形は喫茶店より蕎麦屋の数のほうが多い」とガイドブックに記されていたとおりなのですが、喫茶店が少なすぎるような気も。疲労骨折を起こしそうだったから休もうと思ったのに、見つかるのは蕎麦屋ばかり。泣きながら歩いて四軒目の旅篭町の萬盛庵へ。名物の紅花蕎麦(べにきり)を味わう。萬盛庵といえば東京では本郷ですが、店の雰囲気はこちらのほうが本郷らしい(蕎麦も江戸前)。紅花蕎麦は色合いもさることながら盛り付けも美しく、さすがは老舗の貫録でした。杉浦日向子とソ連編著「もっとソバ屋で憩う」(新潮文庫)に載っていた山形市内の蕎麦屋は全部回ったので、観光に切り替えて山形県郷土館文翔館へ。こちらは旧県庁舎、四人は続けて殺されそうな美麗にして広壮なる古い洋館である。中の展示コーナーでミーコを出そうとしたのだが、奥から人が覗いていたのでいったんやめる。私を怪しんでいるのか、その男はなかなか視線を外そうとしない。恐る恐る近づいてみると、くだんの男は蝋人形であった。その後はおとなしく帰るつもりだったのだが、またよさげな蕎麦屋が見つかってしまう。もり一枚くらいなら入るだろうと高をくくって注文してみれば、最も苦手とするわしわしと噛まねばならない太蕎麦でなおかつ量が多い。ギブアップしようかと思ったけど、いままでに一度も蕎麦を残したことがないのはわが人生における誇りの一つだから(なんだかひどくつまらない人生のように感じられてきたが)、執念で完食し、よれよれ状態で山形駅へ。初めてつばさに乗って8時半に帰宅。
 すぐネットをチェックしたら推協賞のニュースが。「ここしかない」という千載一遇のチャンス(目玉おやじではなく人間の男が女を追うというコードなら普通の人でもわかる)をものにするんだから、浅暮さんは強運の持ち主なのかも。おめでとうございました! 
 

5.24
 取材写真の整理をしてから仕事に復帰するも、旅行ボケと体調不良で調子悪し。上半期はこれから長篇を二つ仕上げなければならないのだが・・・。
 

5.25
 少しだけ復調。囲碁将棋番組のピックアップはNHK将棋トーナメントの森九段vs加藤九段。加藤九段が激しい空打ちのあとに指すのをやめたときは思わず爆笑。このじいさん、面白すぎる。碁も二局とも大乱闘で満足。では、今週の秘書猫です。
 みなさん、こんにちは。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。こんしゅうは、クラニーせんせいに旅行につれてってもらいました。オコジョのオコちゃん、ジョーちゃん、ペガサスのぺガちゃんをおともにつれていきました。科学かんにははくせいのシカさんやトリさんがいました。でも、ミーコがいちばんびっくりしたのは大きなゾウさんです。マンモスさんやナウマンゾウさんのひょうほんはとっても大きかったです。公園は近所のとだいぶちがいました。んーと、でんしゃからおそとも見ました。トンネルにびっくりしました。郷土かんでは若い男の人がそろばんをしてました。じみなろう人形だにゃとおもいました。長たびでつかれましたが、いってよかったにゃとおもいます。おしまい。
 最後に、今週のミッドナイト・ソングはCocco「Raining」でした。
 

[読書メモ]
(小説)鮎川哲也「黒い白鳥」「死のある風景」(以上、創元推理文庫)。
「黒い白鳥」の解説は有栖川有栖さんですが、声と言葉の使い方の渋さは推協賞受賞作と一脈通じるものがあるかも。ただ、時刻表トリックの面白さは私にはわからないということを再確認。
(小説以外)東京都江戸東京博物館監修「江戸東京探検六 昭和の暮らしを追ってみる」(中央公論新社)、関口由紀夫「奇跡のデザイン 発想と創造の昭和」(平凡社)、文・森まゆみ/写真・平嶋彰彦「神田を歩く」(毎日新聞社)、村井早苗「キリシタン禁制と民衆の宗教」(山川出版社)、矢貫隆「自殺 生き残りの証言」(文春文庫)、佐藤康光監修「佐藤が選んだ攻めの手筋」(「近代将棋」6月号付録)。


5.26
 連載・長篇B・短篇C改め短篇Aを少しずつ進め、新短篇Bをとりあえず起稿。この短篇も取材が必要なのだが、当分出歩きたくないな。
 さて、「小説推理」7月号が届きました。「The End」連載第21回が掲載されています。次はいよいよ最終回です。目下、鬱々と鋭意執筆中。
 もう一つ、俳句同人誌「豈」36号も届きました。「毬の中」20句が掲載されています。句集のほうが先に出てしまいましたが(笑)。
 

5.27
 連載・長篇B・短篇Aを進める。取材旅行での失敗に鑑み、夕方は黒のウォーキング・シューズを購入。革靴でむやみに歩いたらそりゃ疲れるわ。
 

5.28
 長篇Bがようやく250枚に到達。あと150枚で終わるだろうか。では、久々に今週の十句です。

 吐き気を催すほど晴れてゐて五月
 春驟雨「しかし」が流れ「だが」が消え
 メイストーム死んでいくのは他人だけ
 春陰の赤い橋には赤い溝
 木の芽風片耳のない女かな
 刺すことの快楽すべて春茜
 蘖よ無数のわたし斜線ばかり
 囀りや一羽死んでも囀れり
 余花すでに脳髄にあり在るばかり
 結晶をあしたの空に夏に入る


5.29
 短篇Aを最後まで書く。まだ全然ダメかも。「学校の事件」(幻冬舎7月下旬刊行予定)の初校ゲラが届く。あまり余裕がないので、さっそく夜から着手。
 最近のネットのお気に入りは日本砂丘学会のHPです。砂丘の写真を眺めているとうっとりしますね。いずれ行ってみたいな。「砂の文学誌」を誰か書いてくれないかしら。
 

5.30
 同じところを推敲している時間が長く、前へ進まず。夜はゲラに専念。さらに、全面リニューアル長篇の改稿計画をとりあえず固める。原型は穴だらけだから倍くらい加筆しないとダメだな。
 さて、ネットサイン会のお知らせです。対象は6月12日発売の「無言劇」です。詳細は東京創元社のHPをご覧ください。限定20部につきお早めに。
 

5.31
 連載はもう少しで最後の一行なのだが、終わりそうで終わらず。郵便事故があった短篇のゲラを急いで戻す。幸い事無きを得たのですが、二度とないことを祈りたいものです。なお、今月の執筆枚数は先月と同じ125枚(C標準)でした。低調だなあ・・・。では、今週の秘書猫です。
 黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。こんにちは。こんしゅうは、きゅうようしてました。ねむいにゃ。
 最後に、今週のミッドナイト・ソングは山崎ハコ「飛びます」でした。このコーナーだけ見るとむちゃくちゃ暗い人であるかのようですが・・・まあ明るい人だとは思われてないだろうからいいか。
 

[読書メモ]
(小説)今週は完読なし。
(小説以外)「セレクション俳人06 櫂未知子集」(邑書林)、遠藤周作「切支丹の里」(中公文庫)、「次の一手 一線、二線のヨセ」(「碁ワールド」6月号付録)、川島令三「幻の鉄道路線を追う」(PHP文庫)、宮崎賢太郎「カクレキリシタン」(長崎新聞新書)、苑田勇一「苑田勇一流基本戦略」(NHK出版)。
 中央志向の碁の、こと理論度に関しては苑田>王銘エン>武宮だと思うのですが、苑田理論はとても咀嚼して打てませんね。王銘エン王座の「広いほうから押し込む」が最もシンプルでいいかも。並べて楽しいのは武宮九段だけど、理論と呼ぶにはちとアバウトすぎる。
 シオランはいまだ完読に到らず。代わりに、よしなしごとをひとくさり。
 音楽は時間で、絵画は空間である、とシオランは言った。では、言葉は何なのだろう? 言葉は時間のごときものであり、空間のごときものでもあるが、純粋な時間でも空間でもない。ここで想起するのは、「作品は死ぬ。断片は書かれたことがない以上、死ぬこともありえない」という私にとっては呪いに近いシオランの箴言である。そう、言葉は断片なのだ。では、「作品」に対置されるものは何だろう。世界だろうか? 〈私〉だろうか? 笑止かつ滑稽にも、作品それ自体だろうか? そもそも、書かれたことがない以上、死ぬこともありえない言葉とは?
 ・・・解答篇はありません。