9.1
 長篇A→中編→短篇A→著作リストとプロフィールの改訂→長篇C。
 夜は本格懐メロの王道番組であるテレビ東京「昭和歌謡大全集」をビデオ撮りしたうえで観る。一曲だけ知らない歌(斉藤京子「お花ちゃん」)があった。まだまだ奥が深いな。練習したのは久保浩の名曲「霧の中の少女」。
 テレビといえば世界陸上がいつのまにか終わってしまったが、民放のアナウンサーとキャスターの声がひたすら耳障りでろくに観なかった。女子マラソンは増田明美が実況もやればいいのに。
 

9.2
 気分が芳しくないので、個人輸入したセント・ジョーンズ・ワートを初めて試してみる。効いたような、ただの気休めのような・・・。
 

9.3
 午後四時より神保町の古瀬戸で光文社カッパ・ノベルス編集長のW辺さん、担当のK林さんと打ち合わせ。内容はまだ秘密ということで。あとは箱根駅伝の予選会の話など。本を調達したあと、地下鉄の西日暮里駅を下りたら急に雨が降りだした。コンビニで傘を買い、高をくくって三河島のマンションまで歩いたのだが、これが大失敗で凄まじい雷雨に直撃される。場末ゆえ避難する店がない。雨もさることながら雷が強烈で生きた心地がしなかった。蕎麦屋をもう一軒だったか・・・。
 

9.4
 このところなぜか「作家志望者のための作家アンケート」のたぐいが続いているのだが、どうも返答に窮する部分が多い。あまり参考にならないだろうし、私の小説は人に教えられないし、そもそも真似をしても何もいいことはないのではなかろうかと思ったりする。
 

9.5
 アンケートの下書き→長篇A→中篇→長篇B→長篇C。長篇Cは400枚をクリア。
 

9.6
「本とコンピュータ」9月号が届きました。「31人が語る本の本わたしの一冊」というアンケートに参加しています。
 もう一冊、「ミステリーズ! 02」も届きました。宮脇孝雄さんの「無言劇」評が掲載されています。「この豆腐は阪神タイガースだ」のくだりには思わず爆笑。うーん、そのとおりかも。では、今週の秘書猫です。
 みなさん、こんにちは。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。こんしゅうは、指揮のれんしゅうをしました。黒猫はびじゅあるてきに指揮者にむいてるとおもうにゃ。おしまい。
 

[今週のBGM]ニールセン「交響楽全集」 ブロムシュテット指揮
 幽かに北欧の香りがするデンマークのシンフォニストの全集。5番が突出しているように聴こえます。
 もう一枚追加。ヘルベルト・ケーゲル指揮のベルリオーズ「幻想交響曲」は鬼火がビュンビュン飛んでます。やはり拳銃自殺した指揮者は違うな。
[今週のミッドナイト・ソング]山崎ハコ「白い花」


[読書メモ]
(小説)歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」(文藝春秋)。
 構えて読んだのだが、見事に騙されてしまった(ことに私が騙されるのは悔しかったりするのだが以下略)。ただ、もちろん出来はいいんだけど、作品世界ではなく描かれている世界があまり閉じていない(自閉していない)ので、そのあたりは残念ながら微妙にツボではなかった。どうも男臭いヤクザが出てくるとダメらしい。
(小説以外)高橋昭「CD名曲名盤100協奏曲」(音楽之友社)、香川知晶「パラドックスの面白さがわかる本」(KAWADE夢新書)、原田玲子「マニエリスム芸術と音楽」(音楽之友社)、星野伸之「真っ向勝負のスローカーブ」(新潮新書)、許光俊編「こんな『名盤』はいらない!」(青弓社)、大原利雄「誰も行けない温泉 命からがら」(小学館文庫)、春日武彦「私たちはなぜ狂わずにいるのか」(新潮OH!文庫)。
「マニエリスム芸術と音楽」の第1章には吐胸を衝かれる文章が二カ所あった。まずは引用(カッコ内は引用者の注釈)。
「前者(ディオニュソス的要素、芸術的な情熱のひたすらな奔騰)は後者(ダイダロス的要素、歪みを持った理知的な技術性のとめどのない高まり)を煽りたてながら、同時に後者は前者を冷却してやまない。この両要素が相互的な緊張関係を保っているところにマニエリスムの特質とその躍動とがみられるであろう」
 ひと頃はミステリーとホラー(および幻想小説)のハイブリッドなどと言っていたのだが、何のことはない、それはマニエリスムなのであった(拙作の達成度はともかくとして)。
 また、私のミステリー系の作品にはもう一つ路線があるんだけど、これも見事に言い当てられている。
「マニエリスム芸術においては、技巧のための技巧が優先すると、あたかも無意味であり、無目的にすらみえるような装飾的なかたちのあそびとなって示されてくることにもなるであろう」
 というわけで、自分がマニエリストである(でもある)ことを再確認。


9.8
 早朝覚醒で絶不調。長い夢を見たのだが、巣鴨動物園のくだりしか思い出せない。いやに暗い動物園だった。
 

9.9
 今日は復調。夕方は北千住でCDと黒服を買う。服もぐちゃぐちゃになってきたが、整理する気力がわかず。
 

9.10
 予定より早く短篇Aを最後まで書く。うーん、いくらなんでもこれはバカすぎるような気もするのだが・・・。
 

9.11
 また早朝覚醒で不調。いつまでも暑いな。
 蕎麦屋で食べた蕎麦が年間百食に到達、「ソ連」の会員資格をクリアする。べつに入ってるわけじゃないんだけど。
 

9.12
 CGソフトで描いている抽象画が百枚に達する。ケッヘル番号に倣って作品にkを付しているのだが(ただしkranyの略)、今夜描いた「眼球崩壊」でめでたくk100の大台に乗ったのである。やはりIllustratorの導入は正解だったかも。なお、絵に関してはさる地下プロジェクトが進行していたりするのですが、いずれ発表ということで。
 さて、「文芸ポスト」秋号が届きました。特集「『新・中年』のための早慶OB白書」のアンケート・エッセイに据わりの悪そうな回答を寄せています。答えが浮かばない質問はパスしました。「慶應気質は?」と問われても、数少ない慶應OBの知り合いの杉江松恋に代表させるわけにはいかないだろうし・・・。
 最後に、約一年ぶりにプロフィールと著作リストが更新されています。情報量を微妙に増やしてありますので、ご参考までに。
 

9.13
 ずいぶん久々に一日十枚書く。手帳にその日の執筆枚数を記しているのだが、二桁書いたのは今年まだ二度目なり。去年の鬱病に懲りて一日八枚くらいでセーブしているという事情はあるにせよ、昔はもっとコンスタントに書けていたはずなのだが・・・。いずれにしても、私が速筆と言われているのは何かの間違いでしょう。
 

9.14
 暑い・・・では、今週の秘書猫です。
 黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です、こんにちは。こんしゅうもあつかったのでくたっとしてました。早くすずしくならないかにゃ。おしまい。
 

[今週のBGM]ブルッフ「ヴァイオリン協奏曲&スコットランド幻想曲他」 ハイフェッツ(vn)
 ブルッフはこの二曲が突出して有名らしい。どちらも好み。これは掛け値なしの名演だと思う。
[今週のミッドナイト・ソング]中島みゆき「蕎麦屋」
 

[読書メモ]
(小説)水見稜「マインド・イーター」(ハヤカワ文庫JA)、「夢魔のふる夜」(早川書房)。
 なぜか読んでいなかった。文章は肌に合うし、折にふれて結晶度が高くなるところが魅力。ただ、その結晶部分がもっと濃密になればニューウェーブSFなのに・・・と勝手なことを思ったり。
(小説以外)小中千昭「ホラー映画の魅力 ファンダメンタル・ホラー宣言」(岩波アクティブ新書)、ソロモン・ヴォルコフ編「ショスタコーヴィチの証言」(中公文庫)、宮本英世「読むだけで通になるクラシック面白エピソード」(ヤマハ)、団鬼六「鬼六の将棋十八番勝負」(小学館文庫)、筑波昭「連続殺人鬼大久保清の犯罪」(新潮OH!文庫)、長山靖生「若者はなぜ『決められない』か」(ちくま新書)。
「ショスタコーヴィチの証言」から印象に残ったエピソードを一つ紹介したい。と言っても、ショスタコーヴィチのものではない。チニャコフという詩人のエピソードである。裏切りや涙や薔薇について凝った詩を書いていたチニャコフは、困窮してこう決意するに至る。「食うためなら、どんないまわしい行為でも、わたしはしてみせる」と。かくしてチニャコフはレニングラードの繁華街に立つ。「詩人」と書いたボール箱を首から胸に吊るし、頭に帽子をかぶって。乞い求めるというより要求するような態度だったので少なからぬ通行人が金を恵み、チニャコフは窮地を脱し、高級レストランで食事ができるようになったという。そんなことをするくらいなら首をくくったほうがましだと思うが・・・。
 あとは駆け足で。「ホラー映画の魅力 ファンダメンタル・ホラー宣言」は小説にも援用できる部分があるので、その方面の読者は必読。筑波昭の犯罪ノンフィクションは好みなのだが、「津山三十人殺し」「巣鴨若妻殺し」に比べると少々落ちるかな。最後に、「若者はなぜ『決められない』か」のあとがきに登場する職員のくせに「夏は暑い」という理由で大学を辞めた友人というのは間違いなく私のことでしょうが、「労働は私に向かない」と辞表に記して会社を辞めたもう一人の作家って誰だろう?


9.15
 短篇Aを画面上で推敲してプリントアウト、短篇Bを起稿。
 セリーグは阪神タイガースが優勝(優勝決定の瞬間にマウンド上にいたのが横浜のデニーという展開はなかなか意外性があった)。ファンの皆様、おめでとうございます(なぜかアリアスだけ応援しているのでわりと鷹揚だったりする)。今年はバルデスに続いてクルーズを獲った時点で(いずれも元阪神)すごく嫌な予感がしていたのだが、まさかこんな大差になるとは。まあしかし、四番さえ補強できれば来年は好勝負になるでしょう(落合がFAで阪神に行ってますます差が開くという展開は充分考えられるのだが・・・)。それにしても、大阪ってつくづく暗い変態インテリが住みにくそうなところだな。
 

9.16
 長篇Bが200枚をクリア。
「東京都区現代俳句協会会報」第115号が届きました。諸家近詠のコーナーに三句が掲載されています・・・とここに書いても仕方ないか。
 

9.17
 また早朝覚醒で不調。
「小説すばる」10月号が届きました。連作「十人の戒められた奇妙な人々」第八話「メゾンは崩れる」が掲載されています。・・・ああ、次を書かねば。
 

9.18
 長篇A→中篇→短篇B→長篇C→長篇Bの再検討。特記事項なし。
 

9.19
 秘書猫をつれて夕方より帝国ホテル、江戸川乱歩賞のパーティに出席する。仕事関係はさほど進展なし。二次会は十数名で飲み屋。初対面は姫野カオルコさん、小川びいさんなど。姫野さんはキャラ立ってるなあ。三次会は意外な小人数でカラオケ。サイバーダムはいやに懐メロが増えていた。藤山一郎の「三日月娘」を歌えるとは。終了後は「東京の蕎麦屋のつゆは辛すぎる」という我孫子さんの演説を拝聴しながらタクシーで歌舞伎町のロフトプラスワンへ移動、菊地秀行さんのトークライブに合流する。上高地を経て六時ごろ解散。お疲れさまでした。
 

9.20
 反動で使いものにならず。では、今週の秘書猫です。
 みなさん、こんにちは。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。こんしゅうは、パーティにでました。おつきのフェレットのフェレちゃんがおともでした。ミーコはおともだちにあそんでもらいました。映画もみました。あしかさんがかわいかったです。おわり。
 

[今週のBGM]シベリウス「ピアノ三&五重奏曲 他」シベリウス・アカデミーQ他、「交響詩集」ヴァンスカ指揮、「ヴァイオリン協奏曲、他」ムター(vn)、「交響曲第1番&第5番」バルビローリ指揮、「交響曲第4番・第7番/他」カラヤン指揮。
 今週はまたシベリウス特集です。室内楽も向いてると思うのにどうしてあまり書かなかったのだろう(ピアノ五重奏曲は約百年ぶりの復活らしい)。ムター盤はオール・シベリウス、ヴァイオリン協奏曲の陰に隠れていますが「セレナーデ第2番」も名曲。
[今週のミッドナイト・ソング]King Crimson「Epitaph」
 私にとってはピート・シンフィールドのクリムゾンだったりするのだが、それはともかく思い出の一曲。その昔(約二十年前)、「墓碑銘」というタイトルで歌えるように訳詩をつけたことがあるのです。さらに、幻想文学会の下部組織の幻想音楽会のギグで披露して狂気のヴォーカリストと呼ばれたりしたのですよ。残念ながらステージ経験はなかったのですが(幻想音楽会にはあり)、訳詩を鮮明に思い出せたのでここに記しておきます。物好きな方(何人いるんだ?)は歌ってみてください。
 
 墓碑銘 作詞 ピート・シンフィールド 倉阪鬼一郎訳
 
*予言の壁は罅割[ひびわ]れ
 傷痕[きずあと]を見せている
 もう死ぬ術[すべ]もない
 陽[ひ]は高く照りつける
 離れ離れ みんなバラバラ
 悪夢とともに
 勝利者のいない静寂[しじま]に
 絶叫が溶けていく
 
 混乱こそ我が墓碑銘
 罅割れた小径[こみち]を這[は]うよ
 できるなら笑っていたい
 でも明日[あす]も泣くだろう 私は怖い
*きっと明日も泣くだろう 私は怖い
 泣き続けているだろう 私は怖い!
 
 運命[さだめ]の鉄の門に
 時の種子[たね]は蒔[ま]かれた
 誰が知った 誰が気づいた
 種子はやがて流された
 知識は死んだ友だ
 誰が運命を決められる
 俺は見たぞ 人類[ヒト]の運命は
 道化師の手の中だ!
 
(*-* 繰り返し)
 怖い・・・
 でも明日も泣くだろう 私は怖い
 きっと明日も泣くだろう 私は怖い
 怖い・・・!!!
 
 長々と失礼しました。もう一曲「月ノ子」(Moonchild)もあるんだけど、またいずれ。
 

[読書メモ]
(小説)J・G・バラード「コンクリート・アイランド」(太田出版)。
「コンクリートの島」(NW-SF社)を持っていなかったので復刊はありがたい限り。ただ、ル・クレジオに比べると(比べるのはどうかとも思うが)、話がすらすら進みすぎるので(偏執狂的描写と詩的高まりが希薄)やや不満を覚えた。
(小説以外)鬼界彰夫「ウィトゲンシュタインはこう考えた」(講談社現代新書)、池田
理代子「47歳の音大生日記」(中公文庫)、島田荘司「21世紀本格宣言」(講談社)、柳下毅一郎「殺人マニア宣言」(ちくま文庫)、マルセル・グリオール「水の神 ドゴン族の神話的世界」(せりか書房)、レメディオス・バロ「夢魔のレシピ」(工作舎)、都築響一「珍日本紀行 東日本編」(ちくま文庫)。
「ウィトゲンシュタインはこう考えた」は良質のビルドゥングスロマンを読んだかのような読後感。まあ若いころ「論哲」を読んでもわからず「反哲学的断章」をもっぱら愛読していた人だから、ことにそういった部分に反応するのだと思いますが。引用はキリがないので割愛。どうでもいいけど、著者の名前はエクソシストみたいだな。
 最後に、「殺人マニア宣言」から恐怖小説に関する箴言をやや恣意的に引用。
「よくできた恐怖小説には、かならず読者にしかけられた罠がある。(中略)読者が、ふと、これは自分の話ではないかと思う瞬間が」


9.21
 涼しくなるのは大歓迎なのだが、急に気温が下がったので順応できず鬱々とする。
 大相撲秋場所回顧。幕下は全力士で唯一「い」が四股名につく若い浪が優勝。子供のころ若浪のファンだったのですが、若い浪も渋い色気のある力士です。今場所のこの一番は時天空vs宝智山、あんなに見事な二枚蹴りは初めて見ました。・・・とうとう幕下の話ばかりになってしまった。
 

9.22
 長篇A→中篇→長篇B→長篇C。
 今年中に以上の4作品がすべて仕上がれば、来年はプロットが通っている長篇D・E・Fまで進むはずなのだが・・・。
 

9.23
 このところ小説の読了数が激減しているが、理由はいくつか考えられる。
1. 夕方まで小説を書き、夜は八時か九時くらいまで推敲等にあてる。そのあとすぐに人の小説を読む気にはならない(自分の小説だけで飽和状態)。
2. このところ最低一枚クラシックのCDを聴いているのだが、資料本や軽めのノンフィクションならともかく、小説はBGMの音楽が邪魔になる。
3. さらに、そのあと絵を描くことが多いから小説の読書に移らない。
4. 耳栓をしていざ読書に集中という態勢になっても、小説か硬めのノンフィクションかという岐路がまた現れる。
5. 去年まではミステリーとSFの年間アンケートに参加していたけれど、新刊を追うのがつらくて今年からやめることにしたので外圧がない。
 というわけで、著者および出版社からのご謹呈本をなかなか消化できず、申し訳ない限りです。すみません。


9.24
 短篇Aをメール。ひと息ついたので、昼から懸案の第一京浜マラソンコース下見取材兼蕎麦ツアーに出かける(べつに私がマラソンをやるわけではなく、登場人物が走るんだけど)。まず大森で下車、土地鑑がないのでさんざん迷っているうち、まるで瘴気に招き寄せられたかのように鈴ケ森刑場跡に着いてしまう。まったく予定には入っていなかったのだが、南千住の小塚原刑場跡に続いて制覇したのでとりあえずよしとする。その後は京急の大森海岸駅まで引き返し、また迷ってからようやく布恒更科を探し当て、好物の舞茸天もりを食す。老舗なのにボリュームがあって店もいい感じ。メニューに変わり蕎麦が多かったから、いずれまた。食事後は第一京浜を北上しながら犯人の目でポイントを探しつつ随所を撮影。あからさまに不審者だったかもしれない。青物横丁の喫茶店で休憩したあと、京急の各停に乗って平和島で引き返し新馬場で下車、再び犯人モードでひとしきり取材する。夕食はわかりにくい場所にあるしながわ翁で大もり。翁の本店には行ったことがないのですが、細打ちの筋のいい蕎麦で、黒い湯桶に入った濃いめの蕎麦湯もポイントが高い。本日の蕎麦ツアーは二戦二勝なり。
 それから品川駅まで歩いたのだが、こんなところへ来たことはないはずなのに妙な既視感がある。そのうちハタと思い出した。以前、ブラニーと同じ新幹線で帰京したとき、東京駅で切符がないと弟が騒ぎはじめ(実は内ポケットに入れていたのだが)、座席に戻って一緒に探しているうちに不意にドアが閉まってむざむざと大井操車場まで運ばれてしまったことがあるのです。で、そういう間抜けな客はどうなるのかと言うと、始末書を書いたうえ職員専用のマイクロバスに便乗というかたちで品川駅まで運んでもらうのです。そのときに通った道だったんですね。なるほど、そうだったのか。
 

9.25
 長篇A→長篇B→中篇→長篇C→短篇B改めA。
 夜は久々にカラオケの練習。課題曲はGO!GO!7188の「浮舟」。我孫子さんがカラオケで何度も歌うのを聴いて気に入り、CDを取り寄せたのである。あと十回くらい練習すれば大丈夫だろう(長い間奏のあとの出が難しい)。
 

9.26
 荒川一丁目の家具店へ赴き、CDラックを2台、文庫用の本棚を1台発注する。使える壁の総面積も考慮して現在の部屋に決めたのだが(当初は夢のように広かったものだが)、届いたらついに玄関の壁まで埋まることになる。とりあえずまだ上のほうは空いてるからいいか。
 

9.27
 短篇A→長篇B→中篇→長篇C→長篇Aの再検討。では、今週の秘書猫です。
 みなさん、こんにちは。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。やっとすずしくなったのでうれしいにゃ。わーい。
 
[今週のBGM]ブルックナー「交響曲第8番」 シューリヒト指揮
 ベートーヴェンかブルックナーかと問われたら迷わずブルックナーと答える人なのですが、指揮者によってずいぶん違いますね(まだそれほど聴き比べたわけじゃない初心者ですけど)。むちゃくちゃ主観的にまとめると、天から光の蛇が降ってきて田園地帯を延々とのたくったあげくまた天に還っていくのがブルックナーの音楽、これを平板に演奏されるとただ長いだけでうんざりしてしまう。8番のショルティ盤は退屈だったのだが、シューリヒト盤は別の曲のようだった。
[今週のミッドナイト・ソング]山崎ハコ「織江の唄」
 なんだか音楽の趣味も三人くらいいるような気が・・・。
 

[読書メモ]
(小説)森青花「さよなら」(角川書店)。
 正攻法のジェントル・ゴーストストーリーかと思ったのだが、やはりファンタジー。いくらでもシリアスに書ける素材なのにとぼけた味わいがある不思議な作品です。物語の省略の仕方も俳句的で独特。
(小説以外)小岸昭「隠れユダヤ教徒と隠れキリシタン」(人文書院)、都築響一「珍日本紀行 西日本編」(ちくま文庫)、田中聡「ニッポン秘境館の謎」(晶文社)、小林康夫「創造者たち 現代芸術の現場」(講談社)、池田小百合「子どもたちに伝えたい日本の童謡 東京」(実業之日本社)。
 さすがはパノラマ島のお膝元と言うべきか、「珍日本紀行 西日本編」を読むと三重県にはことのほか変なものが多いような気がする(ちなみに、変な作家が出る確率も高い)。どうせなら「くの一忍者秘宝館」とか造ればいいのに。


9.28
 将棋のアマチュア名人戦を録画してじっくり観る。新アマ名人は頻繁に席を立って妙な体操をしながら指していた。ひどく物珍しいものを観たのだが、対局態度としてはどうでしょうか。
 男子マラソンはついに2時間4分台に突入。私の若いころはクレイトンの8分台の記録が限界と言われていたものだが(古いぞ)、まさか4分も短縮されるとは。うーむ。
 

9.29
 今日は半休。まず三時に上野の東京都美術館へ、藤原ヨウコウ画伯が出品されている東京展を観る。作品の大半は前衛系、ことに抽象画が多くて満足。妙ににこにこしながら全作品をゆっくり鑑賞しました(どうでもいいけど「メソポ田宮文明」というアーティスト名には思わず脱力)。ついでに上野の森美術館でピカソ・クラシックを観る。ずいぶん人の入りが違ったけれど、私には東京展のほうが格段に面白かった(なかにはむっとして帰る客もいるでしょうが)。その後は銀座線で虎ノ門へ、出羽香庵で板そばを食す。ここは山形の庄司屋の支店なのですが、さらしなの板は置いてないんですね。しばらく散歩で時間を潰したあと(どうもハイソな街は息がつまる)、六時半からサントリーホール。オスモ・ヴァンスカ指揮、フィンランド・ラハティ交響楽団のコンサートを聴く。コンサートは初心者だし、オーケストラに近い二階席だったので最初は緊張する。プログラムはオール・シベリウス、ヴァンスカだからマニアックな曲も入るのかなと期待していたのだが、「序曲カレワラ」「ヴァイオリン協奏曲」「交響曲第2番」「フィンランディア」というむちゃくちゃオーソドックスなラインナップだった。しかしながら、大好きなシベ・コンを生で聴けたし(ソリストは若手のデイヴィッド・ギャレット)、アンコールの三曲目、最後の最後にこれも好きな曲の「悲しきワルツ」をやってくれたから大変満足でした。「フィンランディア」も生だとことに迫力がありますね。帰宅後は会場で山のようにもらったパンフ類(昔はこういうものを校正していたのです)をチェックしてチケットを手配。なるほど、こうしてハマっていくわけか。
 

9.30
 反動で不調。
 今月の執筆枚数は192枚(A標準)でした。来月からはS標準(200枚)も設けてピッチを上げる予定。