5.1
 ミーコ姫とぬいぐるみ軍団をつれてSFセミナーに出かける。三年ぶり何回目かは忘れました。十二時前に本会会場の星稜会館ホールに到着、幻想文学系のメンバー数人と昼食。puhipuhiさん、化野燐さんとは初対面。まさかこんなところでお会いするとは。黒澤へ行こうと思ったんだけど道を間違え、赤坂見附のロイヤルホストへ。重いメニューしかなかったのでスパゲティを食べて戻る。二コマ目はハヤカワ文庫FT25周年!(風間健二、石堂藍、司会・三村美衣)、風間氏がクリスプ「魔性の犬」について熱く語りだし、石堂藍が嫌な顔をするあたりがハイライトだったでしょうか。ちなみに、「魔性の犬」は私もFT文庫(たいして読んでませんが)のベストです。だから売れないんだ。その後はうだうだしたり四コマ目を聴いたりして本会は終了、単独蕎麦ツアーに出かける。今度こそ黒澤で二色そば、翁系の洗練された蕎麦で、噂どおりのうまさでした。都内では間違いなくトップクラス。続いて南北線で東大前へ、根津の夢境庵まで歩いて天ざるを食す。こちらも結構でした。根津神社で完全に出遅れたつつじ見物をしたあと、合宿会場のふたき旅館に入る。ロビーで西崎憲さんとしゃべったりしているうちにオープニング。一コマ目は「山田正紀と山田正紀を語る部屋」。とても参考になるけどなかなか真似はできないな。それと、読書の幅広さにも瞠目。ホセ・ドノソを読まねばと思ったり。ロビーで輸入盤問題について語っているうちに三コマ目。「文学賞メッタ斬り! SFセミナー出張版」のあと「凹村戦争を問う!」を覗いたら激論の真っ最中。山田正紀部屋のパネラーでは渋いワキに徹し、著しい進境を見せたかに思われた企画クラッシャー浅暮三文ここで大爆発。上方落語風に短くまとめると「わあわあ言うております」てな感じで延々と続く。大広間で油を売ったあと、六時前にタクシーで帰宅。お疲れさまでした。
 

5.2
 長篇ミステリー「42.195」(光文社カッパ・ノベルス7月刊行予定)の初校ゲラが届く。昨年末は「The End」で極北へ行ってしまい、これ以上先へ行くと凍死しそうなので、今年はとりあえずキャッチーなノベルス(当社比)を続けて出します。売れるといいなあ・・・。具体的な刊行予定は下記のとおりです。7〜8月がラッシュになりそうなのですが、よろしくお願いいたします。
 5月中旬 「大鬼神」(祥伝社ノン・ノベル)
 6月中旬 「ワンダーランドin大青山」(集英社文庫) *文庫化
 7月 「42.195」(光文社カッパ・ノベルス)
 7月下旬 「十人の戒められた奇妙な人々」(集英社) *連作短篇集
 8月上旬 「呪文字」(光文社文庫) *中篇書き下ろし
 

5.3
 長篇A→長篇B→短篇を起稿→ゲラに着手。
 短篇はまだ余裕があるのだが、コンサートのチケットをむやみに買ってあるので早めに起稿。
 

5.4
 虫の化け物に襲われる悪夢を見て悲鳴とともに覚醒。調子悪し。では、今週の秘書猫です。
 みなさん、こんにちは。黒猫のぬいぐるみのミーコ姫です。こんしゅうは、クラニーせんせいにえすえふセミナーにつれてってもらいました。フェレットのフェレちゃん、オコジョのオコちゃん、ジョーちゃんといっしょにいきました。ミーコは石神茉莉さんなどおともだちにいっぱいあそんでもらいました。わーいわーい。それから、つつじを見にいきました。でも、つつじさんはだいぶくたっとしてたにゃ。がっしゅくでもおともだちとあそびました。お写真もとってもらいました。うれしいにゃ。おしまい。
 

[今週のBGM]「Berliner Sinfonie-Orchester KURT SANDERLING(5枚組)」ザンデルリンク指揮/ベルリン交響楽団
 引退コンサートを含むharmonia mundiのボックス。許光俊氏の著作における紹介を読んでぜひ聴きたいと思っていたのだが、音質いまいちのCDでも「奇跡の名演」の消息は伝わってくる。プログラムはブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」、モーツァルト「ピアノ協奏曲第24番」(pf・内田光子)、シューマン「交響曲第4番」。音楽は終始渋く美しく流れ、そこに老マエストロの人生や音楽史などが合流する。落陽に照らされた清冽な水の流れを見るかのようです。シューマンの4番ってこんな名曲だったんですね。バティス盤とはずいぶん違うな。湿っぽくないところがまたいい。思わず引退コンサートだけ繰り返して聴きました。今週のその他のベストCDは「Ginette NEVEU plays BRAHMS」ヌヴー(vn)/シュミット=イッセルシュテット指揮/北ドイツ放送交響楽団でした。ジネット・ヌヴーを3枚聴いたのですが、このCDがベスト。「ヴァイオリン協奏曲」はきわめてテンションが高く、飛行機事故で亡くなる5週間前に録音された「ヴァイオリン・ソナタ第3番」は美しい。どちらも名演です。
 

[読書メモ]
(小説)ジョン・フランクリン・バーディン/今本渉訳「死を呼ぶペルシュロン」(晶文社)
 体操の鉄棒に譬えれば、殺人が起きるまではいやに端正でまともな演技。ホームズ譚みたいだなと思っていたら途中で大きなひねりが入り、徐々に作家性が前面に出て面妖な演技が始まる。ただ、着地が近くなるとやや窮屈になってしまったかなという印象。このあたりを読むと、「悪魔に食われろ青尾蝿」まで突っ走ってしまったのは作家的必然だったのかなという気もする。P128に「遁走曲[フーガ]の終結部[カデンツァ]で、複数の声部が入り乱れつつ切迫部[ストレット]を形成するように」というくだりがありますが、そういう音楽のような小説を書きたかったのじゃないのかな。だからこの作家にはシンパシーを感じるのですが。
(小説以外)藤井誠二「殺人を予告した少年の日記」(ワニブックス)、E・キューブラー・ロス/鈴木晶訳「死ぬ瞬間」(中公文庫)、辻本敬子・ダーリング益代「図説ロマネスクの教会堂」(河出書房新社)、水木しげる「生まれたときから『妖怪』だった」(講談社)、籠目泰栄「怖い!知りたい!死の値段」(山下出版)。