[Weird World 99年6月下旬]


[6月16日]
「田舎の事件」の再校を返送したら、解説のゲラが速攻で届く。私は校正者あがりで(本の校閲は専門外だが)ゲラをまじめに見るクセがついているから辛いかも。いや、原稿を止めれば進むんですがね。
 さて、「中日新聞」からエッセイの依頼が来ました。物心ついてからの中日ファンなので(ちなみに、ミーコは阪神ファン)なんだかうれしいです。ますます大変だけど。
[6月17日]
 シャーリィ・ジャクスン『たたり』(創元推理文庫・540円)を版元から頂戴しました。ありがとうございます。これは「山荘綺談」の新訳で、ロバート・ワイズ監督の映画タイトル「たたり」(ソフトを持っていますが、電気を消して観ると怖いぞ)を踏襲しています。ただ、なぜ新訳されたかというと、今秋また本書を原作とした「ホーンティング」という映画が公開されるからで、ちょっと関係が複雑かも。それにしても、シャーリィ・ジャクスンって遺稿集を含む全著作が13冊しかないんですね。蒐めたくなってきたな。
[6月18日]
 やっと短篇に光明らしきものが見えてくる。あとはもう一本の解説とエッセイに手をつけて、ゲラを見て、書き下ろしを進めればいいんですね。軽い軽い。
 日記のみならず掲示板の書きこみも多いため、ことによるとサボっているように見えるかもしれませんが、これは基本的に筆まめな人だからで、ちゃんとお仕事はしております(>担当者の皆様)。


[6月21日]
 木原浩勝・中山市朗『新耳袋 第四夜』(メディアファクトリー・1200円)を頂戴しました。ありがとうございます。感想は後日。
 相変わらず短篇と解説とエッセイと書き下ろしとゲラを少しずつ進めて、参考資料に目を通すだけのつまらない毎日です。息抜きはミーコと遊んだり、ネットを覗いたりするだけですね。煙草の本数だけがむやみに増えます。愚痴でした。
[6月23日]
 短篇と解説とエッセイの第一稿ができる。ここまでくれば大丈夫だな。早く書き下ろしに戻りたい。
 さて、『田舎の事件』(幻冬舎)は着々と進んでおります。今日は担当さんから有栖川有栖さんの推薦文が届きました。なんと句集まで読んでくださっている由、ひたすら恐縮しております。私は三分の一読んだかどうか怪しいのに。ちなみに、いちばん好きなのは『幻想運河』です。似ているところがあるかも。
[6月24日]
 ジュディス・ラパポート『手を洗うのが止められない 強迫性障害』(晶文社・2900円)は資料用の本ですが、最近ほかに完読していないのでご紹介。実例の部分が面白く付箋をべたべた貼ったけれども、どれくらい使うかはわからない(一冊読んで一カ所しか使わないこともある)。なお、共訳者は中村苑子さんですが、俳人とは同姓同名です。ほかにも江川卓(読み方は違う)、森進一、岡晴夫(中国文学者です)と同姓同名は多いですね。
[6月25日]
 異形コレクション11『トロピカル』(廣済堂文庫・762円)をようやく完読する。例によって気に入った作品を三つ選びますが、これはホラーの批評家モードではなく、あくまでも一読者としての感想です。
 田中哲弥「猿駅」 ニューロティックな文体が喚起するイメージが強烈。「乗越駅の刑罰」にインスパイアされたのだろうか? ことに「フルーツ牛」は実際に食べたような気分になってしまった。
 速瀬れい「不死の人」 文章がお上手で、短篇作家としてのセンスも抜群。毎回書いてください。ただし、全然ホラーではありませんが(笑)。
 田中啓文「オヤジノウミ」 キウイソースのほうがツボだったけれども、この作品もパワフル。拙作「屍船」とちょこっとだけかぶっているが、この方面で勝負したらこちらの旗色が悪いな。
 なお、愛読者カードに「異形コレクション1〜11の中で、面白かったものをお教えください」という項目があります。このデータを参考にして異形コレクションの選集を出す企画が進行しておりますので、シリーズの愛読者の方はご協力ください。
[6月26日]
 神保町でアレクサンドル・グリーン『消えた太陽』(国書刊行会・2400円)、ジム・トンプスン『サヴェッジ・ナイト』(翔泳社・1900円)、伏見健二『ロード・トゥ・セレファイス』(メディアワークス・1900円)などを購入したあと、古典SF研究会へ。ついに完結した「魔法の本棚」最終配本『消えた太陽』を出したところ、長山靖生さんはすぐ書店へ買い足しに行きましたね(笑)。それから、横田順彌さんの新刊『快絶壮遊[天狗倶楽部]明治バンカラ交遊録』(教育出版・1500円)を頂戴しました。あとは例によって喫茶店の中で古本展覧会、北原尚彦さんが大量に買いこんでいた「心霊研究」は目にしたら私も買おう。ゲラもあるので、珍しく一次会で退散。
[6月28日]
 再校ゲラを宅急便で送り、解説の原稿をファックスし、やっとトンネルの出口が見えてきたのだが、ふと気づくと書き下ろしを三冊同時に進めていたのだった。来年は四冊プラス翻訳が一冊……うーん。
 山内照子編『幽霊がいっぱい 古今英米幽霊事情2』(新風舎・1800円)を読了。去年の『化けて出てやる』からこんなに間を置かずに出るとは驚き。全体的には前著のほうがよかったような気もするが、冒頭のペネロビ・ライヴリー「黒犬」は傑作。このラストの不気味さは短篇本格ホラーの醍醐味でしょう。
[6月29日]
『新耳袋 第四夜』を読了。今回はいまひとつかなと思いつつ読んでいたのだが、最後の「山の牧場」がド迫力(なお、『文藝百物語』第二十五話に同じ施設[!]と思われる話があります)。あとは「重なった」「三島由紀夫」あたりかな。なお、読み終わったあと(必ず読み終わってから)カヴァーをめくってみてください。とても面白いよ(笑)。
[6月30日]
 短篇をメールで送り、ゲラをほぼ仕上げる。今月は忙しかったな。
 さて、「別冊シャレード」42号「城平京特集」が昨日届きました。短いエッセイを書いています(橋詰久子と福井健太も登板)。城平京が書きたいと言っている「ニューロティック・パズラー」はぜひ読みたいですね。コリン・デクスターにホラーを配合したようなものになるのだろうか? それなら私も書きたいけど。